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【3分解説】株価サイクルとその向き合い方

・以下で株価サイクルを決める景気サイクルと企業利益サイクルについてご説明してきました。

・株価自体は、①企業が将来にわたり稼ぐ利益(ファンダメンタルズ)、②ファンダメンタルズに対する投資家のスタンス(投資家心理)によって決まります。
※この仕組みは以下でご説明しております。

・企業利益サイクルに従い、①のファンダメンタルズもまたサイクルを描くことになりますが、一方で、①には利益の将来予測・期待の要素が含まれています。
・将来期待とはまさしく現実に先行したものです。つまり、株価サイクルもまた、企業利益サイクルに先行することになります(およそ半年程度)。
・②の心理については、企業利益サイクル自体に内包された心理に加えて、株価特有の心理(自己強化ループ)が働きます。
・負の自己強化ループで言えば、株価にとって、何か悪い出来事があれば感情は負の方向に傾き、あらゆる出来事が悪く捉えられるようになり、そのことで更に感情が負の方向へ向かう、といった負の自己強化ループが回り続けます。
・株価は過度に下落を続け、結果として、逆に将来に期待できるリターンが高くなり、損失を出すという意味でのリスクが最小になるまで株価が下がります。
・むしろ、このときに投資家にとって最大のチャンスが訪れており、投資に積極的になることで大きな利益が期待できます。
・サイクルが底を打ち、割安になった株に買いを入れる目端が利き、洞察力のある一握りの投資家は、人知れず利益をちゃっかり稼いでいる、ということです。
・これは逆もしかりです。正の自己強化ループでは、株価にとって、何か良い出来事があれば感情は正の方向に傾き、あらゆる出来事が良く捉えられるようになり、そのことで更に感情が正の方向へ向かう、といった正の自己強化ループが回り続けます。
・株価は過度に上昇を続け、結果として、逆に将来に期待できるリターンが低くなり、損失を出すという意味でのリスクが最大になるまで株価が上がります。
・むしろ、このときが投資家にとって最大のピンチなので、投資に慎重になることで大きな損失を避ける必要があります。
・サイクルが頂点を打ち、割高になった株に売りを入れる目端が利き、洞察力のある一握りの投資家は、人知れず利益をちゃっかり稼いでいる、ということです。
・こうしたループが回り続けるので、上下振動のちょうど中間に株価サイクルがとどまることはありません。

・まとめると、株価サイクルは景気サイクル・企業利益サイクルに半年程度先行して変動し、さらに投資家心理に基づき変動する特徴がある、ということです。

・では、こうした株価サイクルに対して、投資家はどのように向き合えば良いのでしょうか。
・まず、そもそも株価サイクルが現在どのような立ち位置にいるのか把握して、株価サイクルが上方に振れているときは投資行動を慎重に行い、下方に振れているときは積極的な投資行動を行う、ということになります。
・どうすれば、株価サイクルの現在の立ち位置を把握できるのか、ということですが、3つのポイントとして、
①全てのサイクルの大元である景気サイクルの現在の立ち位置(ポジショニング)の把握、
②株価が本来あるべき適正な水準と比べてどのような水準にあるか定量的な評価を行う(バリュエーション)、
③投資家の心理が正の感情に振れているのか、負の感情に振れているのか、定性的な評価を行う(投資家心理の評価)、
に分けられます。
・順を追ってご説明します。

景気サイクルのポジショニングの把握
・①景気サイクルのポジショニングの把握については、そもそも、世界経済は冷戦以降、社会主義国の資本主義経済への移行が進み、貿易関係や相互の直接投資(賃金の安い国に工場を設置等)が深まった結果、世界の国々の経済は相互に強く結びついた状況にあります。
・つまり、世界経済の中でも規模が大きく影響力のある国・地域である米国、欧州、中国、日本の景気サイクルを把握する必要があります。とりわけ、米国は世界最大の経済大国であるのみならず世界で生産された製品を消費する消費大国ですので、米国の景気サイクルが世界に波及する構造になっています。
・こうした主要国の景気サイクルを把握するための手法については、以下の「【3分解説】景気サイクルのつかみ方」にてご説明します。

バリュエーション
・②バリュエーションについては、現在の株価を株価のあるべき適正な水準と比較する必要があります。株価自体を理論的に算出する方法もありますが、手間がかかる割には使用する変数自体で大きく変動しますので、むしろ株価指標(PER、PBR)を類似した投資対象や過去の推移等と比較するほうが有意義といえます。具体的な株価指標の味方については、以下の「【3分解説】株式のバリュエーションのつかみ方」にてご説明します。
○③【3分解説】株式のバリュエーションのつかみ方

投資家心理の評価
・③投資家心理の評価については、①の景気サイクルに影響を与える統計や出来事、②のバリュエーションの水準、に対する投資家の捉え方・マーケットの反応が楽観的なのか悲観的なのか、評価する必要があります。
・何よりも、こうした評価を行う自分自身の心理が、楽観・悲観のどちらかに傾かないことが重要です。
・あらゆる出来事に対しては、いい面と悪い面のどちらもバランスをとって意味付ける必要があります。

・まとめると、株価サイクルに投資家が向き合うためには、現在のサイクルの立ち位置を把握して適切な投資行動を選ぶ必要があり、そのためには、①全てのサイクルの大元である景気サイクルの現在の立ち位置(ポジショニング)の把握、②株価が本来あるべき適正な水準と比べてどのような水準にあるか定量的な評価を行う(バリュエーション)、③投資家の心理が正の感情に振れているのか、負の感情に振れているのか、定性的な評価を行う(投資家心理の評価)が必要になる、ということです。

・ただ、株価サイクルを用いるうえで気をつけるべき点が2つ(①運、②忍耐・俊敏さ)あります。
・①運については、以上の分析を通じて、妥当と思われるサイクルのポジショニングが把握できたとしても、次に起こりうる展開が必ずしもすぐに来るとは限りません。景気サイクルや心理など様々な要素が絡み合って決まりますので、最後には、自身が選んだ投資行動が報われるための運が必要になります。ただし、起こりうる可能性が高い投資行動を選ぶこと自体の重要性が失われるものではありません。
・②忍耐・俊敏さについては、こうした株式サイクルの中でも、株式のバリュエーションが大きく乖離する大きな振動の波は、日、月、あるいは年といった単位では現れません。つまり、こうした短いスパンで差分を抜こうとしても、利益を確保することは難しいかもしれません。
・また、過去の株式市場においては、上昇に向かう振動のほうが期間は長く、逆に下方に向かう振動は短期で一気に訪れる傾向にあります。
・すなわち、サイクルが上方に向かい、頂点に近づくタイミングで痺れを切らして買いを入れるor売りを控えてしまうこと、逆にサイクルが一気に下方に向かう中で恐怖に囚われて買いを入れないor売りを出してしまうこと、この2点は避けなければなりません。

・以上から、株価サイクルとその向き合い方についてご説明しました。
・では、実際にどこに投資すればいいのか、ということについては以下でご説明します。

※株価サイクルの現在の立ち位置を把握するために必要になる2つのポイントについては、以下で続きをご説明します。

○【3分解説】株式のバリュエーションのつかみ方


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