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【ドラマ感想文】 海のはじまり 第5話 こまやかな描写に感動する

今週もえぐかった。開始2分からわーーーっとなった。

filmarksに感想かこうとしたら、感想が全然止まらなくなったからnoteに書くことに。ドラマを見ている時にはいろんなことを感じるし考えるのに、いざ人に伝えようとすると、想いや考えをあんまり言葉にできなくてもどかしい。パッと表現できない良さを自分なりに伝えたくて、小さなシーンや描写から湧き出てくる細かな感想を書き綴ります。

第5話ネタバレあります!!ご注意ください。


冒頭から生前の水季が海ちゃんの髪を結ぶシーン。今回は髪の毛をいろんな場面でいろんな演出で使っていて、一つの道具や言葉にいろんな角度から立場から光を当てて、意味を与えるのほんとに綺麗だなと思った。

髪や髪型は、第一印象に大きく影響を与える部分であり、その人のセルフケアの状況とか忙しさとか疲労具合とか準備にどれだけ時間やお金をかけたかとかを知る手掛かりになる。

今回は、「時間とお金のかけられなさ」として、シングルマザーの抱えるひとつの大変さを象徴したり、7歳でできること・できないことの具体例にしたり、(第4話で朱音さんが夏くんにいった「知らないことは知るしかないのよ。」の流れの延長で。私もちょうど6,7歳から自分で髪を結び始めたのでぴったり。)、弥生ちゃんの親に頼るか自分でやるかのエピソードにしたり、結び方に性格でるってシーンで使ったり。
そして、前回のお風呂入るシーンからの今回は髪を乾かすシーン。
いやもうすごいな。
細かいところにもこんなに凝って意味を与えて作られているのに、ちゃんと大筋は物語としてまとまってるのどういうことだろう。脚本つくるってすごいな〜〜〜〜〜〜〜〜。生方さんには敬意しかありません。

ちょっと関係ないけど、夏くんの部屋にも弥生さんの部屋にも植物があって、水をあげたり枯れた葉っぱを取り除いたり、ケアの要素が部屋の中の小道具からも感じられる。

ケアって時間やお金をかけることなのかもしれんな。

とうもろこし

まず、先週に続くとうもろこしのシーン。
ああやって作業しながら話すって状況を生み出すとか、お母さんの数々の料理の場面などにおける提案いいなあ。
向かい合っていても目を直接見ずに話せるから、緊張も減るし、それが夏の性格にあっているんだと思う。
朱音さん態度はツンツンしてる時もあるけど、愛情いっぱいだし(デレ)こういう人との関わり方うまいと思う。
とうもろこし外しの対比もすごくきいていたと思った。

列ごとに綺麗にとうもろこしを外し、手を止めず話せる朱音さん。

対するは、ひとつひとつぽつぽつと外し、前回のシーンで考えたり話したりしてる時手が止まってた夏くん。

夏くんは、一生懸命なんだけど不器用だし、相手と全然スピード違くてもそれに問題意識とか注意がむかない鈍感さ、というより、それだけの前のことを一つひとつ丁寧にこなす性格がうまく表現されている。笑 

口論になってるときの、とうもろこしのスピードの演出もきいていて、前回の「みかん食べながら話すことじゃないでしょ?」「何ポンカンならいいの?」みたいなノリの場面みたいにとても面白かったです。(セリフ具体的には覚えていない笑)

あとは、夏くんの外した器は透明な丸で朱音さんは白い四角でした。これも性格表してるのかなあ、何か意味がありげ。

前回から注目していたとうもろこしのシーン。
ほほえましい口論の後、外したとうもろこしが翔平さんと海ちゃんに「もろこしごはん」として、つながってハッピーに回収されたのも良くって心が温まりました。

(まだ開始3分のシーン。いちばん好きな花でもそうだったけど、サムネが出る前のシーンってちょっと短編で印象的な展開を添えてくれるから毎回心地がいいです。。。。。)


家族

弥生さんが、自分の家族が嫌いだということを打ち明けた時のシーン。海ちゃんの髪を結ぶ練習と称してやっぱりカップルだなと思う甘い描写でもありつつ、あれもお互いが目を合わせなくてもいいシュチュエーションです。だからかはわからないけど、胸の中のものがポロッとでやすかったりもするのかしら…。でも、見ようと思えば、鏡を通して相手の顔が見えてちょっと表情を覗けるという絶妙な位置関係なので、うますぎ。

家族のことが嫌いと打ち明けられた弥生さんに対して、「嫌いでいいよ」と返す夏くん。こういうところいい人だよなあ。いちばん好きな花で、親子の関係の中の葛藤やままならなさとか、親孝行すべきとか(今回で言えば「家族を大切にするべき」)とかの一般的に共有されている価値観が誰かの心を抑圧しうる可能性の表現があったことを思い出しました。今回の夏くんのあの一言は、弥生さんの心を苦しめうる世間の価値観から解き放ったかもしれない。(?)

夏くん、鈍かったり天然だったりもするから、おい!笑 って心配になるときもあるけど、ちゃんと相手の心の傷がどこにあるかとか、欲しい言葉を勘づくことはできる。(妊娠が分かった時に1週間しんどかったねってまず言えるところとか、弥生ちゃんが自分の言いたいこと言えてない時に聞けるところとか。)

でも、生方さんの作品は影になる部分も光の部分も平等に描く作品を作られている方だと思っているから、後半の月岡家のシーンなんかは特にその対比が効いてまた胸がじわじわした。

第一声

「藤井さんって、、お子さんできた時にご両親に言いましたか?」

「その….子どもがいる。」

海のはじまり 第5話

これらの第一声があまりに下手すぎて、私の心の中で最近で一番大きな全力ツッコミが入りました!笑笑

多分伝えたいこと、聞きたいこと、じっくり一生懸命考えてきて、頭がいっぱいいっぱいになって、咄嗟に出た言葉がもはや空回り、という、夏くんの不器用さにくすっとします。(いちばん好きな花の椿さんも一生懸命が裏目にでる天然タイプだった。笑)考えすぎて自分のことでいっぱいいっぱいで相手がどこまで何を知っているから、どこから説明すべきかという点がごっそり抜け落ちているように見えます。

でも、だからこそ、偽りない態度とか誠実さが胸を打つんですね。

男性

スタートから伝えるものの順番が最適解ではないようなスタートを切った夏くん。結婚の報告かと思って待っていた家族は、弥生さんとデキ婚するのだと判断して、コロコロ間違った理解で会話が盛り上がっています。
さて、夏選手、これからどうやって挽回していくのでしょうか。

「弥生さんの、子じゃない。」

いやもうゴムパッチンするよ?!?!笑
いや、でも本人はいたって真剣なんですね。
誤解に誤解を重ねるような発言に私は、ああああって思っていました。

「あんた浮気したの?!」
お母さんが怒り気味で発言する理由も無理もありません。

その後、やっと夏くんは夏くんの言葉で状況を伝えることができます。

「なにそれ、何も聞いてないんだけど」
お母さんは怒りの気持ちを抑えようとしながらも、そのような言葉が出てきます。
「隠したの。学生の分際で。」

分際…。
強い言葉に胸がぐさっと痛みます。
お母さん、気持ちもわかるけど、夏くんのこといじめないで、、。
最初はそう思って、夏くん側の気持ちに立ってみていました。

でも、その後のお母さんの発言に電撃が走り、
涙が止まらなくなり、自分自身をも省みることになるのです。

その言葉はぜひ本編をみていただきたい。手帳にしっかり書き残しました。(ちなみに前回の話は8割くらい手帳に写経されています…笑)

男に生まれたこと、女に生まれたこと。
それ自体は神様が決めるもので、その事実は変えられられない。その変えられない生まれ持った事実が、生物学的に男性と女性が引き受けなければいけない、引き受けることができない運命をも決める。
それを見て見ぬふりをしてはいけないと思う。自覚しなくても済むような、被らなくてもいいような傷を、痛みを、想像しないといけない。でも、自分がそれを背負わなくていいという事実;それは言い換えれば自分は背負うことができない事実 だからこそ、自分が生まれ持っている特権性に無自覚であることができる、あるいは想像しても想像しかできないという不条理がある。

どんなに周りのサポートがあろうとも、産むのも堕すのもそれを引き受けるのはお母さんただ一人。その痛みに耐えるのも一人が背負うこと。ひとりで子どもを育てた経験があるお母さんだからこそ女性が、お母さんが、ひとり親が、背負うものの重みが言葉に表情に声の震えに…滲み出ていました。

それに対して、特権性がある側、今回で言えば男性は、いや、夏くんは、どう向き合えば良かったのでしょうか。水季は結果的に産むという選択をしたものの、相手が一度決めた中絶という選択にその場で同意したあのシーンは、相手の意思を尊重したというレベルの話とかではなく、「させた」(強要)と言い表してもおかしくはないほどの意味をもつこと。まずは、その重みを自覚することからはじまるのではないでしょうか。確かに、自分が肩代わりすることができないという痛みも伴うかもしれない。ただ相手が決めたことにうんというのではなくて、じっくりひとりで悩んで二人で悩んで選択すること、最後まで見届けること、その時そばにいて話を聴くこと、別れ話を電話で終わらせないこと、もっとできることはあったはずです。でも答えはわかりません。これらも、外野からの声でしかないし。

でも、夏くんの対応の仕方も間違っていたともいえません。誠実であったようにも思います。その良し悪しを下すこと自体、私の立場からしたら傲慢だとも思う。誰かが悪いという話でもない。水季さんは意志が強い方だから、夏くんがどう行動してもあがいても水季さんはきっとこう選択したのかなとも思える…。


夏くんが相手に強要させようとしたわけではないということも、ずっと息子のことを育ててきたお母さんはちゃんと一番わかっていて、それだけの信頼関係があるからこそ選んだ言葉だったと思うし、発言だったと思う。
本当にこのシーンは素晴らしいと感じた。



とまあこんなところまで書いていたら4000字を超えていたので、後半はもう一個の記事にまとめようと思います。


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