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日記 工事中なう

2023年8月18日

今日で漸く、できないちゃんの補講が一旦終了した。
しかし、この三連戦はなかなかハードであった。

ちなみに、できないちゃんは仲本工事氏によく似た女学生である。
正に牛乳瓶の底のようなメガネを掛けているせいか、目そのものが顔の面積に対して酷く小さく見える。
この3日、毎日5時間を超えた死闘いや指導の最中、私らしからぬ厳しい指導に小さな眼から水を噴き出していた。
あ、涙というのだろうが、私はそう呼びたくないのである。

なんで、ネットにある志望理由書の書き方がわからないのか。
なんで、「アドミッションポリシー」がわからないのに辞書で調べないのか。
なんで、自分の研究計画書が5行しか書けないのか。
なんで、宇治茶と静岡茶と狭山茶をいい間違えてしまうのか。
なんで…
なんで…
なんで…


できないちゃんのできないことを列挙したら、枚挙に暇がない。
私は学生をなかなかに甘やかす教師なので、あまり質問責めにはしない。
学生が泣くまで追及するなど、まずあり得ない。

しかし、仲本氏風できないちゃんはあまりにできないので、真意が知りたくて質問責めにしてしまう。
その結果、仲本氏風できないちゃんの目から水が噴き出る。

だが、私は意地悪なことはしていない。
わからないからわからないと、繰り返し質問しているだけだ。
したがって、彼女の目から出ているのは涙ではなく水なのだ。

もし涙であれば…
私は最後通牒をするだろう。
もう、何もかも忘れて母国に帰りなさい。
あなたがどうにかできるほど、日本の教育も社会も甘くはない。
あなたの母国のカネの単位で動く、まともな人間はこの日本にはいない…と。

夜、ハイボールを飲みながら思う。
私は私で工事中だ。
夏休みは余裕あるだろうと始めた連載小説も、全然連載していない。
お得意のはずのエッセイも一文字も書いていない。
仲本氏風できないちゃんに構って日銭を稼ぐことは、私のためにも彼女のためにも良くないんではなかろうか。

もう辞めたいんです。
と言えば、主任が飛んで来て、私を説得するだろう。

しかし、これも天命やもしれない。
あと少し、できないちゃんの入試が終わるまで、辛抱して、徒然なるままに日記を書いておこう。

そんなわけで、みなさま、いましばらくご容赦ください。

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