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古くて新しい印紙税、400年の歴史


税金はいつも財政確保のため

 印紙税は1624年にオランダで始まった税制です。スペインとの独立戦争で窮乏する財政の確保、戦費調達のため創設されました。(八十年戦争)

 日本では、明治6年(1873年)に政府の財政確保を目的として採用され、抜本的な改正は行われないまま「文書税」として現在に至っています。
 印紙税法が定める20種類の「課税文書」に対して課税されます。
「文書税」なので、文書を作成しなければ課税されません。
 契約書等を電磁的方法(メール)やFAXで完結すれば課税なし! です。


電子取引には課税なし

 最近は、紙の手形取引も減少し、契約書や定款、預金通帳も電子化されています。契約書等を電子化できる1対1の取引ならば印紙税の悩みなし。 
 しかし、仕入先との関係等で支払手形の振り出しによる支払いが継続中、土地売却に関する地権者が大勢いて、かつ、電子契約書の締結ができない、領収書を手書きで交付しなければならない・・・。
 このようなケースでは、印紙税は、まだ古くて新しい税金ともいえます。


小さな節約のはなし 

 印紙税は、課税文書に記載された金額に関係なく一定金額で課税される「定額税率」と、記載された金額に応じて税額が異なる「階級定額税率」の2つの税率があります。
(例)継続的取引の基本となる契約書 ・・・ 1通につき、4,000円
 金銭消費貸借契約書 ・・・ 200円~60万円(1万円未満は非課税)
 領収書 ・・・ 200円~20万円(5万円未満は非課税)

 そこで、階級定額税率が適用される手形や契約書は、金額を分割して発行することで印紙税を節約できます。

 たとえば、1億円の金銭消費貸借契約書を1通作成するなら印紙税額は6万円ですが、5,000万円の金銭消費貸借契約書2通に分割すれば、印紙税額は各2万円(合計4万円)となります。印紙税を2万円節約できます。
 小さい話で恐縮です。
 でも、枚数が多いと馬鹿になりませんね。


印紙税は貼付と消印が必要!

 印紙は契約書等に貼り付けるだけでなく、消印もしなければなりません。
 具体的には、「課税文書の作成者は、原則として、課されるべき税額の収入印紙の貼付により、印紙税を納付する。この場合に、自己または代理人、使用人その他の従業者の印章または署名で、その課税文書と印紙の彩紋とにかけて、判明に印紙を消印しなければならない。」とされています。

 「使い回しはできませんよ」ということですね。「印章または署名」での消印を求めているので、二重線でちゃちゃっと消すのではダメなんです。

 ちなみに、偽造防止等を目的として2018年7月より印紙の様式が変更されています。


過怠税は約4倍の負担! 

 税務調査で印紙の貼付洩れが見つかった場合には、納付しなかった印紙税とその2倍に相当する金額の合計額(すなわち不納付税額の3倍)に相当する過怠税を徴収されます。
 また、貼り付けた収入印紙に、所定の方法で消印をしなかった場合には、消印されてない印紙の額面金額と同額の過怠税が徴収されます。

 さらに、過怠税は法人税等の計算において損金に算入されません。
 法人税等の実効税率を30%とすると、印紙を貼付した場合の約4倍の負担となってしまいます。

 たとえば、収入印紙100,000円の貼付洩れを調査で指摘された場合は、
 ① 過怠税 100,000円×3倍=300,000円
 ② 法人税等の損金不算入額 300,000円×30%= 90,000円
 ③ 税負担の合計額 ①+②=390,000円       となります。 

 なお、収入印紙の貼付洩れがあっても、当然ながら、契約書等の効力には影響を与えません。

ほとんど嫌がらせでしょうか・・

 税務調査で指摘される事案は、印紙を貼付すべき文書の枚数も多いので、過怠税も多額になります。過去の事例を見てみますと・・・、

1.Uグループホールディングス(愛知県稲沢市)    
 テナント業者にその日の売上を回収機に入金させる際に発行した「入金票」が課税文書に該当すると国税局に指摘され、過怠税約2億9千万円

2.T銀行(東京都港区)
 住宅ローンの申込者に返信した「審査結果のお知らせ」が課税文書の「消費貸借契約書」に該当すると国税局に指摘され、過怠税約2億3,500万円

3.小売業D社(東京都江東区)
 各店舗で直営する自転車修理コーナーで発行した「修理承り票」が課税文書の「請負契約書」に該当すると指摘され、過怠税約3,300万円

4.W社(京都市南区)
 セミオーダー下着の注文を受けた際に発行した「お客さま控え」が課税文書の「請負契約書」に該当すると指摘され、過怠税約3,200万円

5.B社(大阪府池田市)
 葬儀後に遺族に送付した「あいさつ状」に葬儀代金の領収日、金額が記されており課税文書の「領収書」に該当すると指摘され、過怠税約3,000万円


 課税文書の枚数が多くなると、過怠税もびっくりする金額になります 💦
 疑問を感じる税制ですが、「生兵法はケガの元」かもです。

 文書を作成する際には、印紙税の課税文書に該当しないかどうかについてご確認ください。


<参考>印紙税の課税文書

 ~ 税額誤り、不納付事例が多いのは、第2号、第7号、第17号①文書 ~
1.①不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書、②地上権または土地の賃貸借の設定または譲渡に関する契約書、③消費貸借に関する契約書、④運送に関する契約書
2.請負に関する契約書 (例)注文請書、受注票
3.約束手形、為替手形
4.株券、出資証券もしくは社債券または投資信託、貸付信託、特定目的信託もしくは受益証券発行信託の受益証券
5.合併契約書または吸収分割契約書もしくは新設分割計画書
6.定款
7.継続的取引の基本となる契約書 (例)取引基本契約書
8.預金証書、貯金証書
9.貨物引換証、倉庫証券、船荷証券
10.保険証券
11.信用状
12.信託行為に関する契約書
13.信託の保証に関する契約書
14.金銭または有価証券の寄託に関する契約書 (例)金銭の預かり証
15.債権譲渡または債務引受けに関する契約書
16.配当金領収証、配当金振込通知書
17.①売上代金に係る金銭または有価証券の受取書 (例)商品代金の領収書
②売上代金以外の金銭または有価証券の受取書 (例)敷金、保険料の受取書
18.預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳
19.消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取り通帳などの通帳
20.判取帳

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