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期待

期待されていた。全員じゃなかったかもしれないけれど、何人かから。少なくとも一人以上の人には期待されていたと思う。

俺も普通の人間だから、期待されるのは嬉しかった。そして、普通の人間だからその期待に応えたかった。応えたかったから、俺は自分を信じた。俺の持つ才能と今までに重ねた努力を信じた。

結局、信じただけでは何も変わらなかった。皆の期待に応えることができなかった。悲しかった。才能を持たない自分をひどく責めた。期待に応えるほどの才能も持たない自分が嫌いになった。

それでも、俺に期待する人はいた。嬉しかった。でももう信じることはできなかった。才能なんてないし、努力なんてしたくなかった。もう期待に応えることはできないとわかっていた。

「お前ならできるよ。」

できないよ。もうわかってる。

「君にしかできないんだよ。」

別に俺の代わりなんていくらでもいるだろ。

皆の期待は、押し付けがましい逃避行だったのかもしれない。リスクヘッジとかかもしれない。嫌な役回りを押し付けるための『期待』。周りの皆に逃避行を押し付けられて、自分の逃避行を失った俺は潰れていた。悪いのは『期待』に応えることができない俺で、皆はもう落ち込む俺のことなんか見ないで楽しそうにしてるや。やっぱ俺はただの逃げ道だったんだ。それでも悪いのは俺が『期待』に応えることができなかったこと。

悪いのは俺。悪いのは俺。悪いのは俺。悪いのは俺。悪いのは俺。悪いのは俺。悪いのは俺。

あの日から癒えない傷。

「いつまで引きずってんの。」

笑うなよ。あんたが期待したから俺はこんなにも惨めな気持ちで生きている。ずっとわかってる。悪いのは俺なんだ。嫌われ者のあいつでもなく、皆の中心にいるあの子でもなく、影の薄いあいつでもなく、すぐ悪口を言うあいつでもなく、人の気持ちも考えることのできないあんたでもない。

悪いのは俺。『期待』に応えることのできない俺。

『期待』した君たちでもないよ。でも一つだけ、我が儘を言っていいならお願いだから。

もう二度と俺に期待しないで。

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