見出し画像

穏やかな微笑みにたぎるエネルギー♬もっと自然と遊ぼう!【後藤めぐみさん】


| 至極の一言 |
「カヤックではよく見ること、視界の広さが大切。それは日常生活も同じ。先を見越せていれば軌道修正ができる」


カヌーの魅力、多摩川上流の魅力を広い目線で伝える

リバーカヤック歴30年以上、競技者として世界で活躍した経験もある後藤めぐみさん。23年前、「カヌースクール グラビティ」を立ち上げたのを機に東京・青梅に移住。多摩川上流御岳で活動しています。カヌーから学んだことは、広い視界をもつことの大切さ。ひとりでがんばるのではなく、それぞれが得意なことをして支え合えばいいということにも気づいたといいます。川の環境と関係の深い、山の自然や林業に関心を持つことの必要性も伝えていきたいと考えています。

後藤めぐみさん


「カヌースクールグラビティ」で第三の場づくりを

崎谷:「カヌースクール グラビティ」を事業として展開されて23年。家でも職場でもない場づくりを続けられていますね。

後藤:立ち上げの頃から来てくださっている方々のお子さんが大きくなって、親子2世代で来てくれると、時間の流れを感じます。大変だと思ったことはほとんどなくて。事業としても在庫や仕入れが必要なく、技術さえあればコストがかからないので、そういう意味では気楽です。

崎谷:初心者クラスも充実していますが、みなさんカヌーをどのように楽しまれていますか? 後藤さんがやっていたような、競技とは違うのでしょうか。

後藤:参加者によって目的はそれぞれ違いますが、リバーカヤックの最終目的は、自分の判断で川下りをすること。難しい川を下りたければたくさん練習が必要ですが、緩い川ならそれほど練習は必要なく楽しめます。

画像2

常連の方たちは、家でも職場でもない、第三の場での息抜きとして楽しみに来ている方が多いですね。カヤックはマイナースポーツなところが良くて、競技人口が少ないので仲間意識が芽生え、お互いに絆が深まります。ボートがひっくり返って流される危険もある。そんな状況でお互い助け合いながら活動することも、絆の強さにつながっている気がします。


カヌーから学んだことは、日常生活・生き方とリンクしている

崎谷:アウトドアスポーツは厳しさもあり、続けるのが大変ですが、生き方とリンクするときがあるなと思うんです。後藤さんご自身がカヌーから学んだことはありますか?

後藤:ままならなさ、自然の力のすごさですね。初心者が急に流れに出ても、川の流れの力は、人間の力では太刀打ちできません。

カヤックではよく見ること、視界の広さが大切。一点を凝視するのではなく、行き先を見ながらそのまわりを広い視界で見ることが重要です。思わぬ方向にボートが動いてしまって、岩が点在している方向に行ったとしても、見ていて状況がわかっていれば慌てずにすみます。

それは日常生活でも同じ。まわりが見えていないと、対応に遅れ、あわてて余裕がなくなることがありますが、先を見越せていれば軌道修正ができる。カヤックでの川下りと生き方はリンクしていますね。

画像3


多摩川上流・青梅の水質を守るために、山の環境も守っていきたい

崎谷:後藤さんは「カヌースクール グラビティ」を始めるタイミングで青梅に引っ越されたんですよね。それまでは荒川上流の長瀞で教えられていたとか。なぜ青梅を選んだのですか?

後藤:交通のアクセスがよいこと、そして川のきれいさです。カヌーをやっているとわかるのですが、荒川の上流とは水質がまるで違う。川の環境は、山の環境によって変わります。

画像4

4年前に青梅で林業をされている方に声をかけていただいたのをきっかけに、川を通じて山のことを考えるようになりました。山と川は一体。カヤックを通じて「水量が多いな」「濁っているな」となんとなく肌で感じていたことが、林業の人と関わることで確信に変わったのですが、興味をもっていないと、山がひどいことになる。

そこで昨年は山歩きを企画しました。もっと山のこと、林業のことを知ってもらうために、できれば全国のいろいろな山を案内していきたいです。

画像5

崎谷:多摩川川下り事業者組合の会長もされ、リーダーシップを発揮されていますね。女性であることを意識する場面はありますか?

後藤:女性でよかった、と思うことが多いんです。

ひとつはスクールを立ち上げたとき、女性が主宰していることが他とは違う特徴になりました。女性がカヌーを続けやすいよう、何をサポートすればいいのかはわかります。ボートは重いし、できないことはできないので、女性だと助けてもらいやすい(笑)。

年を重ねてから気づきましたが、できないことは「できない」と言って手伝ってもらうほうがいい。ひとりでなんでもがんばろうとせず、コミュニケーションをとりながら、それぞれが得意なことをやればいいんです。


青梅・奥多摩の人にもカヌーをしてもらうために

崎谷:最近は朝カヤックもされていますね。気持ちよさそう。参加してみたいです!

後藤青梅・奥多摩の地元の人にもカヤックを体験してほしいと思って始めました。近くに住んでいても、多摩川上流でカヤックができることを知らずに遠くまで出かけている方がいることを知ったのがきっかけです。

スタートは6時半か10時。通常よりもお手頃の価格で、朝食付き。奥多摩で畑をやっている友人が朝食をデリバリーしてくれます。最高ですよ!

画像6


<インタビュー後記>

女性としても、アウトドアの先輩としても尊敬する後藤めぐみさん。後藤さんの魅力は、まるで川上から川下へ水が流れるように、生き方や人柄が自然で豊かなところ。芯がぶれない強さも、やさしさと矛盾しない。「カヌースクール グラビティ」が特別な場所なのは、カヌーと多摩川のおかげだけでなく、後藤さんの人柄もあるんだろうなぁ。後藤さん、素敵なお話をありがとうございました!


後藤めぐみさんProfile/


1986年にリバーカヤックを始めて体験。1990年、本格的にリバーカヤックにはまり、フリースタイルカヤック競技にも参戦。アメリカ・オコイ川ワールドカップ出場、1994年ドイツ・アウグスブルク人工コースで開催されたプレワールドカップ女子7位。文具メーカーの企画部デザイン部門でグラフィックデザイナーとして勤務するかたわら、長瀞のカヌースクールを手伝う。1997年に独立し、東京・青梅の多摩川上流御岳で「カヌースクール グラビティ」を創業。現在は、多摩川川下り事業者組合の会長も務める。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?