ワイン入門の思い出 ⑥ボルドー赤 そしてグラン・クリュへ

お金のない学生がボルドーのグラン・クリュに手を出すには、ワインに詳しい人の手引きが必要でした。そして、一度この世界を知ってしまうと、もう後戻りはできませんでした。

きっかけは意外なところに

その手引きをした人物は、意外にも大学の同じ学科生でした。講義でグループが一緒になったのが縁で、家で協力してレポートを仕上げることになり、せっかくだからその後そのまま飲み会にしますかとなって、普段飲む酒を聞いたらワインだった、ということです。

親御さんがワインを飲むらしく、良いワインを知っていました。そこで、飲み会の買い出しに付き合ってもらって、一緒にワインを選ぶことにしました。

その時に薦めてもらったのが、ボルドーのグラン・クリュです。ワインにそれほど興味のないメンバーもいるし、あんまり高いのはちょっと…ということで選んだのが、シャトー・カントメルルでした。

シャトー・カントメルル

当時の価格は5千円くらいだったと記憶しています(現在もほとんど変わっていないようです)。ヴィンテージは失念しましたが、飲んだ時期を考えると96年くらいでしょうか。

飲んだ瞬間、これまで飲んできたワインとはスケールが違う、と思いました。コクと奥深さ、そして長い余韻。飲むたびに引き込まれて行き、また自然にグラスに手が伸びます。こんな世界があるのか、と驚いたのを今でも覚えています。

カントメルル、最近も飲む機会がありました。試飲イベントで、メドック第5級から第3級くらいまで多数のアイテムが出ていましたが、その中でも価格と品質のバランスが際立っていました。今でも、ボルドーのグラン・クリュ入門ワインとしておすすめできると思います。

シャトー・フォジェール

カントメルルを飲んだ後、また別のグラン・クリュを飲んでみたいと思って購入したものです。ボルドー赤でエチケットに"Grand Cru"と書かれている、一番安いものを選びました。当時の購入価格は3千円。ヴィンテージは失念しましたが、96年か97年くらいでしょうか?

飲んでみると、カントメルルを飲んだ時のような感動はなく、あれれ?と肩透かしを食らった印象でした。期待値が高すぎたのも一因だと思います。価格が3千円なので、それが正直に品質に反映されているのですが、この時は格付けに目が眩んでいました。

後で調べると、このワインが造られたのは、カントメルルがあるボルドー左岸のメドックではなく、右岸のサンテミリオンで、格付けもまた異なることを知ります。このワインの当時の格付けは、"Saint-Emillion Gran Cru"でした。サンテミリオンの格付けについて調べてみると、この格付けは条件がかなり緩く、玉石混交で品質はあまり期待できないとのこと。この一件で、サンテミリオンのワインの格付けを大雑把に見るときは、"Saint-Emillion Gran Cru Classe"のように"Classe"がついているかどうかがポイントになることを学びました。

このワインについてフォローしておくと、この5〜6年後にも飲む機会がありました。飲み手の経験値も上がり、格付けは参考程度で、価格と品質のバランスの基準ができていたので、その時はとても好印象でした。この間に品質が向上していたということもあるとは思いますが。

ちなみに、2012年に"Saint-Emillion Gran Cru Classe"に昇格しているようです。ミシェル・ロランのプロデュースで、90年代後半に私が飲んだものとは完全に別物でしょう。現在は価格も6千円と、当時の倍になっています。

シャトー・カロン・セギュール

ハートのエチケットがあまりにも有名なワインです。ワイン入門時に、一度飲んでみたいと興味が湧くもののひとつではないでしょうか?

ヴィンテージは98年か99年くらい。当時の購入価格はなんと3,980円!当時よく利用していたお酒のディスカウントストアの目玉商品として売り出されていたところを購入しました。

これが、残念ながら美味しくいただくことができませんでした。このワイン、可愛らしいエチケットの印象とは異なり、なかなか開かない事で有名ですが、その情報を知らなかったのです。

リリースしたての若いカロンセギュールを、デキャンタージュもせずに、固いなあと首を傾げながら飲んでしまいました。私のワイン入門時における、指折りの失敗談です。

セカンドワインで経験値を上げる

この時期は、ボルドー左岸がメインで、たまにグラン・クリュに手を出しながら、セカンドを中心に数をこなしていきました。当時は、2級のセカンドでも2千円くらいで買えるものがあり、経験値を上げるのに重宝しました。

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