『殺人鬼から逃げる夜』

 どういうきっかけだったかは覚えてないけど、映画『殺人鬼から逃げる夜』の予告をたまたまYouTubeで見て、予告編だけでここまで引き込まれるのかと驚かされた。
 それから何度も繰り返し予告編を見て、前売り券を購入して、まだかまだかと公開日を待って、ようやく見ることができたのだけど、随分と高まり膨らんでいた期待を、優に超えるほど素晴らしい映画だった。

 まず予告編の素晴らしさから話すと、この予告編には、あらすじを確認せずともどういう映画でどういうストーリーなのかを説明しつつ、見る側に想像を膨らませる要素が詰まっている、と感じた。
 https://youtu.be/fpCLDai3oPw

 予告を見てもらうとわかるけれど、簡単なあらすじとしては、聴覚が不自由な主人公が、情け容赦のないサイコパスである連続殺人犯に追われるという話だ。
 殺人鬼に追われ、足音が聞こえなければ助けを叫ぶこともできない圧倒的不利な状況で、どう主人公が逃げるのか、想像を膨らませながら予告編を繰り返し見た。

 そしてこの映画を見て、映画館で見て良かったなと真っ先に思った。
 映画館で見てこそ楽しめる映画は沢山あって、その中でも大スペクタル映画や壮大な音楽が楽しめる映画を見終えた時に、「映画館で見て正解だったな」と思うことが多いけど、この映画はまた違った理由で映画館で見て正解だったなと感じた。

 この映画は、主人公が聴覚が不自由であるということから、時折無音のシーンが流れる。
 無音の間は、物音も何も感じることが出来なくなり、殺人鬼がいつ襲ってくるかに怯えることになる。
 それは、殺人鬼から逃げる主人公を一時的に追体験するような感覚で、これまでに感じたことのないほどの恐怖を感じる。
 この、無音を感じるためには、自宅に専用のシアタールームがある人等の一部の人を除くと、映画館で見なくてはならない。だからこそ、映画館で見て正解だったなと感じた。

 そして、役者陣の演技も相当なレベルで、日本でこのレベルの演技のできる役者はそうそういないんじゃないかと、個人的には思う。

 とにかく見て良かったと、何度でも見たいと、久しぶりに感じることができた映画だった。
 

P.S.殺人鬼役の俳優さんは、『ロマンスは別冊付録』で主人公に想いを寄せる好青年を演じていたイメージが強かったので、そこからのギャップも含めてとても楽しかった。