たま

小説を書く練習をしたいので、少しずつ書いていこうと思います。

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    旅行に行く想像をして、気分だけ旅行に行っています。

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コロコロコミックをレジに持っていく

 本屋さんに行くのが好きで、本日もお気に入りの本屋さんに行き面白そうな本を何冊か手に取りレジに並んだのだけど、目の前にいる同世代(30歳前後)と思われる男性がコロコロコミックを持ってレジに並んでいることに気づいた。  そこでふと、コロコロコミックと自分で持っていた本(エッセイ、旅行記、純文学の3冊)を見比べて、この男性に比べてなんて自分はつまらない人間なんだろうと感じた。  その時点では理由もわからないまま劣等感を抱えていたが、家に帰り、なぜ自分をつまらない人間だと感じたの

    • 音楽ライブは参加型エンタメ

       幕張メッセで行われていたYUKIのライブを観に行った。選曲も素晴らしかった上に映像等がショーとして完成されており、素晴らしいライブだった。  しかし、観客席を見た時に少し違和感を感じてしまった。(事前に言っておくと苦情や苦言ではありません)  2階席でライブを見ていたのだけれど、開演後、自分の周りの観客のうち立ってライブを見ているのは大体3割程度で、残りの7割の人たちは座ってライブを観ており、自分も座りながら見ていた。個人的に、座りながら見るのが好きなのでいい環境だなと

      • 【小説】諾々

         4月も後半になってきたからか、あんなに寒くて嫌だった夜風が、むしろ気持ち良く感じてくる。 「夜風がなんか気持ち良くなってきたね」  えっと声の出てしまった私に、隣を歩く珠樹が心配そうな表情を向けた。 「どうかした?」 「ちょうど同じこと考えてたんだよね。だからちょっとびっくりしちゃって」  そう照れ臭いながらに伝えると、「えーおそろじゃーん」と珠樹は子供のような笑みを浮かべた。  珠樹と一緒に暮らすようになってから、日中私が仕事で外に出ているせいであまり時間を共有できないか

        • 【小説】2ヶ月前のチケット

           会場に近づくと、『チケット譲ってください』と書かれたプレートを掲げる人たちが増えてきた。  3ヶ月ほど前にバンドの解散を宣言してから、ツアーが開催されることなく、収容人数3,000人程のこの会場で行う解散ライブの他にライブをしないので、抽選の倍率も相当高かったのだろう。  リグレットは、人気アニメの主題歌などのタイアップをしていた頃に比べると人気も落ち込んではいたが、それでもツアーをやればほとんどの箇所でチケットは売り切れていた。そして、ツイッターを見た限り『リグレット解散

        コロコロコミックをレジに持っていく

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          【小説】病室

          「もう別にいいのに、お見舞いなんて」  千歳さんが、ベッドの横に吊るしてあるリモコンを操作し、ゆっくりと大きな音を立てて起き上がる。 「いえいえ。私も好きで来てるので。ご迷惑だったらアレですけど」 「全然迷惑じゃないんだけどね。千佳子ちゃんの負担になってないかなって」 「それは全然」  私は、花瓶に入った干涸びた花たちを取り出し、さっき駅前の花屋さんで買ってきた橙色のガーベラと入れ替えながら、この花達について考える。  花にとって、美しさのピークを迎えたその時——人間で言う

          【小説】病室

          【空想旅行記】宮城県石巻市・登米市

           このご時世のせいで、1月に予定していた2件の旅行が延期となってしまった。  それもあって、旅行熱が過去一で高まってしまっているので、行ったことのない場所に想像だけで行ってみようと思います。 「今月どっか空いてる?」  二ノ瀬から連絡が来るのは、確か2年ぶりくらいだったと思う。それにも関わらず「久しぶり」とか「元気してた?」といった枕詞がないことに二ノ瀬らしいなーとも、瑛人の香水の歌い出しみたいだなとも思う。  ちなみに二ノ瀬の本名は一ノ瀬晃で、高校1年生の頃同じクラスに一

          【空想旅行記】宮城県石巻市・登米市

          【小説】AIスピーカー

          「サミー、おかえり」  リビングに小さな光が灯り、2秒ほどの間が空いてから無機質な声が部屋に響き渡る。 「お帰りなさい、リエさん。電気とエアコンをオンにします」  部屋に電気が灯り、エアコンからピッと音が鳴る。  部屋には私以外誰にもいないのに、何だか落ち着かない気持ちを抱えながらソファーに腰かけ、AIスピーカーにチラッと目をやる。  先月、孤独な男性が人工知能と恋をする映画を見てから、AIスピーカーとの会話にソワソワとするようになってしまった。例えるなら、夢の中に出てきた

          【小説】AIスピーカー

          【小説】ピノキオみたいな

          「ごめん、待った?」  肩上の長さで揃えられた髪を揺らしながら、春香が僕の元へ小走りでやってくる。 「いや、今来たところだよ」  その言葉を発したと同時に、下腹部に急激な痛みを感じる。  痛みに顔をしかめてしまった僕を覗き込んで、「また発作?大丈夫?」と春香が心配そうな表情を向けた。  ああ、またこの発作の本当の理由を彼女に伝えづらくなってしまった——再度顔をしかめてしまいそうになるのを、必死に堪える。  物心がつく頃、いや物心がつく前から、峻厳な父に「人様に嘘をついてはい

          【小説】ピノキオみたいな

          【小説】よしゆき村

           そう遠くない昔、三陸のとある山麓に、よしゆき村と呼ばれる村があった。  正式な村名は他にあるのだが、その名で呼ぶ者は殆どおらず、葉書に『よしゆき村』と書けばその村に届くほどに、広く知られた別称であった。  なぜその名で呼ばれることになったのか。村の権力者の名であるかと問われれば、それも正しいのだが、それだけではない。村に暮らす男性は、全員よしゆきという名前なのだ。  それは、男児が生まれたらよしゆきと名付けるという風習が理由であった。その風習がいつから始まったのかを知る者

          【小説】よしゆき村

          【小説】28歳

           目が覚めると、見知らぬ部屋の見知らぬ布団に包まっていた。  起きあがろうとすると、「起きたよ」「まじ?」「なんか言ってる?」「てか一気に老けたよね」といった複数の声が聞こえる。  あたりを見渡すと、若い女性が20人ほど、私に好奇の目を向けていた。その女性達は年齢はバラバラで、一番小さい子はハイハイをしている幼児だった。  その奇妙な状況に一気に目が覚め、立ち上がり布団を剥ごうと少し捲ると、布団の中で自分が服を着ていないことに気付き、慌てて布団に包まる。  「え、裸?」「マ

          【小説】28歳

          【小説】黒い桜

           春になると僕のベッドからは、病院の入り口のところに咲いている桜を見ることができる。この時期は花見ついでにやってくる見舞客も多く、桜を見上げたり写真を撮ったりしている。  そして、舞い散る花びらを見て恍惚の表情を浮かべながら、落ちた花びらを平気で踏みつけて、帰っていく。  夜になると僕は、部屋を出て真っ暗な廊下を歩く。これは、入院生活が始まってからの習慣となっていた。  誰もいない廊下は足音がよく響くけれど、さっとどこかに逃げてしまったように、すぐに消える。  階段を上ろう

          【小説】黒い桜

          【小説】明晰夢

           傘に当たる雨音が、どんどん大きくなってくる。  耳を塞ぎたくなるほどに煩いけれど、傘と鞄で両手は埋まっている。  傘が飛ばされそうなほどに強い風により、袖はもうびしょびしょに濡れてしまった。  家路を急ぐため小走りをしようするも、一向に進む気配がない。  おかしいなと思い足元を見ると、地面に足がついていなかった。ああ——僕は今、宙に浮いているのだ—— ——————————————————————————————  目が覚めると、そこは電車の車内で、電光掲示板には僕の家の

          【小説】明晰夢

          【小説】直子

           学校へ向かう電車に乗りながら、スマートフォンを操作しLINEの友達リストを一通り確認する。これは、直子が高校に上がってからの習慣となっている。  今日は、名前を変えた同級生はいなそうだな——そう一息ついてから、電車内の電光掲示板に目をやると、人気俳優の改名が『役作りのため』という一文と共に報じられていた。しかし、周囲を見回してみても、その掲示板に目を向けているのは直子の他にいないようだ。  5年ほど前から、プライバシー保護のため、病院や学校等の公共機関にて、本名ではなく仮

          【小説】直子

          【小説】ポリメリアン

          「あ、ポリメリアンだ。かわいー」  見慣れた道を歩きながら、ちぎれんばかりに尻尾を振るポリメリアンを見て、私は自然と笑みが溢れた。 「ポリメリアン?」私の隣を歩く吉岡さんが不思議そうな顔をしてから、「あっ」と何かに気づいたような表情になり、「きっと、ポメラニアンだね」 「ポメ……リニアン?」 「違う違う、ポメラニアン」  吉岡さんは一文字ずつしっかりと発音し、私が「ポメラニアン?」と聞き返すと、「そう、ポメラニアン」とにっこりと微笑んだ。  まだあったか——そう考えながら、ス

          【小説】ポリメリアン

          【小説】役作り

           ギュシューッと大袈裟な音を立てながら、電車が止まる。  こんなご時世もあってか、この駅に停まる最終列車であるにも関わらず、電車から降りる人は殆どいなかった。  僕はホームから改札までを繋ぐ階段を降りながら、意識もせずにICカードをコートのポケットから取り出していたことに気づき、ハッとする。ホームから改札までを最短距離で歩き、その間にICカードを取り出すという行為を、完全に無意識で行なっていたのだ。  昨日も同じような速度で歩き、同じ動作をしていたのだろう。とすると、今日と

          【小説】役作り

          『殺人鬼から逃げる夜』

           どういうきっかけだったかは覚えてないけど、映画『殺人鬼から逃げる夜』の予告をたまたまYouTubeで見て、予告編だけでここまで引き込まれるのかと驚かされた。  それから何度も繰り返し予告編を見て、前売り券を購入して、まだかまだかと公開日を待って、ようやく見ることができたのだけど、随分と高まり膨らんでいた期待を、優に超えるほど素晴らしい映画だった。  まず予告編の素晴らしさから話すと、この予告編には、あらすじを確認せずともどういう映画でどういうストーリーなのかを説明しつ

          『殺人鬼から逃げる夜』