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スマホ等の3D技術を使用して地域の人が地域の情報を自ら発信・PRできる取組の検討

普段、Twitter(X)はあれこれ試行した内容をアウトプットする場として使っているだけで、文字制限もあってあまり自分が思っていることの全体を書くことは無いのだけど、「なぜこういった試行錯誤をしてるのか」「最終的にどういう目的や理想みたいなものがあって取り組んでいるのか」といったことがが伝わりづらいなと思ったので、改めてnoteに書いておこうと思う。
できれば一般の地域の人に伝わったらいいなと思う。


1 地域の3D化を試行する理由

そもそもなぜこういう取組をしているのか、というと、大きく3点ある。
イメージとしては、(1)を発端として(2)を経由しつつ、最終的な目標は(3)、という感じ。

(1)スマホ等でできる地域情報の3D化の情報発信

スマホ(iPhone)を使って一般の人でもLiDARスキャンやフォトグラメトリで一定、地域の情報を3D化できることを情報発信したい、と思って取り組んでいる。そもそも僕が3Dなどが好きで、iPhone12proからLiDARが搭載されたこともあり、3Dスキャンやフォトグラメトリに触れる敷居がこれだけ下がって、一般の人でも触れやすくなってきてるんだなと思って、色々試している。
一方で周りの人に言葉や文章で説明しても分かってもらえないことが多くて、それであれば自分でデモを作ってとにかく「手を動かしてプロトタイプの情報を発信する」ということを地道に繰り返すしかないか、とある種の諦念(?)みたいなものから始めたのが今の活動のスタートでもある。

(2)現実空間から消えていくものを残しておく(アーカイブ)

街並みが変わるのが早くて、古い風景を個人レベルでいいから残しておきたい。特に都市部では顕著だけど、特に近年は街並みが変わるのが早いと思う。神戸の三宮近辺もここ数年で大きく変わったし、まだこれから大きく変わっていく。
それは時代の流れだし、これまで繰り返されてきたことと同じだと思う。ただ、それに伴って古い街並みはどんどん消えていく(例えば三宮近くの居酒屋が並ぶ路地の阪急側、通称ガリバートンネルと呼ばれた三宮のA14出入口、名谷駅の壁画、真珠会館などなど)。
建築を含め、多くのものは現実空間に残しておくためには莫大なコストがかかる。だからせめてデジタルで、3Dで残しておきたいと思う。古い街並みや建造物は、いずれ街のコンテンツにならないかなあと思っている。そして、デジタルで残すためにも相応のコスト(予算)が必要なのだけど、例えばiPhoneやiPadといった端末でLiDARスキャンやフォトグラメトリするといった対応でも、品質は不十分だけど跡形もなく無くなってしまうよりはいいんじゃないかと思う(最近はNeRFや3DGSといった技術もあるし、今後に期待)。

(3)地域の人自らが地域の情報を発信するようにしていきたい

(1)に関連して、「一般の地域の人でも、地域の情報を3D化して発信できるようになってきたので、観光や地域づくりに活用して、地域の人自らが情報発信する」といった取組を増やしていきたいという感じ。
スマホ等を使ってスキャンやフォトグラメトリができることが面白いなと思う一方で、それが地域づくりに生かせないかな、と思うようになって、今の目的になっている。こうやって僕のような一般の人(地域の人)でも地域のコンテンツを3Dにして発信できるようになってきてるので、地域自ら情報発信・PRできる取組や仕組みを整えていきたいな。つまり普段僕がTwitter(X)で発信している内容は、いわば最終的な目的に向けたプロトタイプに近いようにも思う。

2 これまで参加したスキャン会等で感じた事

僕が今まで参加した地域情報の3D化の取組にはいくつかあるので、そこで感じたことなどを書いておこうと思う。

(1)みんなで路地スキャン

神戸の新長田で行った路地スキャン会。こじんまりと4名で地域のあちこちをスキャンさせてもらった。感想はnoteのエントリに書いてるけど、概ね次の通り。

①地域に理解してもらうことが大事
地域でまちづくり活動に取り組んでいる方々と一緒にスキャンしたんだけど、地域に知ってもらっていることがすごく大事だな、と感じた。スキャンしてるといろんな人が声をかけてこられて、その全てが「面白いことやってるやん!」という反応だったのがすごく印象的だった(これは主催いただいたまちづくり関係者の方の信頼によるもの)。高齢の方も結構いらっしゃったのだけど、みんな一様に興味津々だったのが印象的だった。

②どこをスキャンするかという議論が、地域づくりを「自分事」にする
どこをスキャンするのかな、となると、その地域のどの部分がどうなってるとか、あそこをスキャンすると面白そう、とか、それって地域を改めてよく知る議論ための議論なんじゃないかなと思った。やり方や形は変えても、自分が住んでいる場所を知ることや、その将来こうなっていてほしいとか考えるたり関心を持つことは、すごく公共的に意味があるんじゃないかなと感じた。

③いずれ無くなるものを記録していく
iPhoneのLiDARやスマホフォトグラメトリは決して高品質なものじゃないけど、それを個人だったり地域自らが残しておくことができる環境になりつつある、というのが重要だと思う。
今やらないと完全に無くなってしまう何かを、多くのコストをかけず、地域で保存できる。将来、何かしらのデータ手法によって一定蘇らせることができるかもしれない。それはよく過去の映像をAIでカラーにしたり、最近話題になったOpenAIのSoraのようなものだったりするかもしれないけど、いずれにしろ大切なことは、「今自分にできることをやっておく」ことなんじゃないかな、と思う。

(2)新長田スキャン会

路地スキャン会をされたまちづくり関係者の皆さんが企画されたスキャン会。たくさんの人と一緒に商店街等をスキャンさせていただいた。
ここでも印象的だったのは、めちゃくちゃ街の人たちが協力的で楽しいスキャン会だったということ。イベントの立て方もすごく参考になった。まず概要とスキャンアプリの説明、商店街2か所に分けたスキャンの実施、スキャンを統合したAR写真の撮影、そして後日、スキャンしたデータは統合して下町芸術祭で展示…と、すごくよく考えられてたなあと感じた。(大変な労力をかけられた事務局と、受け入れていただいた新長田の皆様に感謝…)

(3)みんキャプクエスト@松山市三津浜2023

3Dスキャンが好きすぎて国交省PLATEAU関連イベントで愛媛県松山市まで行ってしまった時の話(みんキャプの久田さんからお誘いいただいたのだった)。これもすごく楽しい会だったなあ。印象的だったのは、お子さんや大学生など若い人はもちろん、自治会等の役員?の方などの高齢の方も結構いらっしゃって、しかもスマホとかアプリとか見ながらスキャンしたり、積極的に参加されていたこと。「すごいな…!」と思った。
このイベントのポイントはレポートに全て書いてあるけど、中でも「本当にこれだな」と思ったのは以下の引用箇所。

イベントのエンディングは、みんなでつくった3D地図の鑑賞会だ。自分たちが”街スキャン”した3Dデータが表示されるごとに歓声が上がり、撮影時の状況を説明したり、どうすればもっときれいに撮影できるのか、などと撮影のコツを話し合うなど盛り上がった。

行政の整備した3D都市モデルに自分たちがまちを歩いて撮影したデータを重ねることで、地域の味わいのある地図になる。日常を手軽に3Dスキャンすることで、観光案内や再開発のシミュレーション、ゲームの素材づくり、旅行の記録などに活用できそうだ。

「みんキャプクエスト@松山市三津浜2023」レポート

イベント最後に全員が感想を発表する機会があり、僕も発言させていただいた。記憶が曖昧だけど「街をスキャンするということは自分の街を知ることにつながる。そういう新しい取組に地域の方が参加していること、新しい取組を受け入れる地域側の姿勢が素晴らしいと思った」といったことを言ったように思う。
(その後は飲み会に参加して、デジタルに係る先見的な取組をされている方々からいろいろお話を聞けてとても貴重な機会だった!)

(4)とある公共的なメタバースの講習会

とある公的なメタバースの講習会に出席させていただいた。対象は地域の方々で、地域の情報をとある仮想空間プラットフォームを通じて情報発信するための講習会。
ここでも図らずも講師の方からご指名いただいて、自分の考えや自分が行ってる情報発信の取組等について地域の方にお話しする機会があって、「今ここにおられる地域の方ご自身が、地域の情報を3D化したり発信できるようになってきた。ぜひこの機会を捉えて試してほしい」といったことをお話しさせてもらった。
講習会では講師の方から「見慣れたコンテンツでも、発信の仕方によって印象が大きく変わる」という話があって、その通りだなと感じた。

(1)(2)のスキャン会の頃はスキャン会をするには地域とどういった関係性が必要かということを勉強させてもらったと思う。(3)の松山のPLATEAUイベントは地元の方も一体となって地域自らが自分の地域のデジタルマップ・コンテンツを作り上げて、それも受けて僕が(4)の講習会で話した内容は「地域自らが地域の情報を発信することの大切さ」ということだった。
最初はとにかくスキャンできるのが楽しいなあと思っていたのだけど、これって本業に使えないかなと思うようになってきて、そもそも誰でも地域の情報3Dにして発信できるようになってきてるなら、それは地域自らが行うことで情報発信やPRだったり、自分の街の再発見とかになるんじゃないかなと思った。そういった取組が、自分の地域や街に対するエンゲージメントの向上といったものにつながっていくんじゃないかと思う(今は違う業務をしているけど、今後は情報や地域づくりの分野でこういう経験を生かしたいと思っている)。

3 これからの取組

ここ1~2年でスキャン会等に参加させてもらって、時には少し皆さんの前でお話させてもらう機会もあったりして、そこを通じて思ったのはやっぱり試行と情報発信が大事で、それを経て地域の人が主体となった情報発信に結び付けていきたいなということだった。

スキャンしたりフォトグラメトリしようとすると、街のどんなところにどんな風景があるのかとか、どんな建物があるのかとか、その街がどう作られているのかに興味が湧いてくる。それって松山や新長田のスキャン会に参加された方の感想を聞いても、同じように感じられてたんじゃないかなと思う。

地域のコンテンツを地域自身が作っていける時代になりつつあるように思う。もちろん僕も含め一般の人が触れる部分は十分なクオリティではないけど、それをきっかけとしてさらにステップアップして予算をかけた取組にしてもいいし、いずれにしろ「まず知ってもらわないと何も始まらない」のだなと改めて強く感じる。

僕は自分の試行の範囲を決めていて、それは「スマホ等の技術に絞る」ということ。すごく技術的にも制約のある話なのだけど、スマホ等のモバイル端末にこだわっているのは「一般の人が参画することを前提としている」からで、「誰でもユニバーサルにアクセスして使えるもの」である必要がある。だからどうしてもクオリティには限界があるんだけど、それはそもそもの最終的な目的が地域づくりの「仕掛けづくり」にあるということ、そのための試行による情報発信のため、という理由になる。(Nerfや3DGSやSoraといった革新技術によってさらに技術がオープンに普及すれば、モバイル環境でもさらにクオリティの高いものが作れるようになるかもしれない。また、然るべき予算を確保する専門的な取り組みは別の施策として大事だと思うし、それは既にいろんなところで取り組まれているので、僕はこっちのユニバーサルに使える取組の方を試していきたいと思って続けている)

UGC(ユーザージェネレートコンテンツ)としてユーザー側による情報発信が取り上げられたりするけど、地域側から、言わばローカルなコンテンツを発信していく手段として、地域の3D化という手法は、特に若い人に向けてという意味でも、一定効果的なんじゃないかなと思っている(ローカルジェネレートコンテンツとでも言うのかな)。
PLATEAUの八王子や松山の取組では大学生等の若い人の参加も多いし、普段地域とあまり接点のない若い人の視点は貴重だと思うので、情報発信にあたって若い人への訴求は大事だと感じる。

誰に頼むでもなくまず自分でやってみる。やってみて、できるところとできないところを分けて、できるところは自分でやる(できないところは然るべき対応(予算と費用対効果等)を検討する)。
自分の地域でも、よく知らないと他人事のようになってしまう(僕もそうだし、多分誰でもそうだと思う)。だから地域を自分事として捉える取組としてもいいように思う。

そういった取組が例えば人を呼び込む交流人口であったり、移住であったり、また消費などに結び付くことで、地域づくりに一定寄与するきっかけ、仕掛けにならないかなと思っている(観光庁では一定の交流人口増により定住人口の消費をカバーする試算もある)。

何にせよ、個人的に好きだからやっているというところが大きいんだけど、これがいずれ地域づくりや地域の人のQOL向上とかにつながっていったらいいなと思っている。
そういう日が実現するように、引き続き試行錯誤を続けていきたいと思う。


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