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8月 橙 : 黄丹(おうに) / ミカド

 

 8月なのに、お雛様!? 


 その理由は後ほど。

 夏の盛りになると人気が 高くなる色が橙色です。夏の眩しさと暑さをポジティブに楽しもう、という気持ちの表れでしょうか。

 確かに橙色は、光の黄色と炎の赤の両方の要素を持つ色です。

 本来「橙:オレンジ」は柑橘類の果実の名前ですが、赤や青の色相名と同様に赤と黄の中間の色みを指す名称としても用いられています。

 黄丹は紅花と梔子で染色される色で、718年に皇太子の礼服の色として定められて以来、現在も受け継がれています。

大嘗祭、即位の礼、黄丹の袍衣の皇嗣殿下

 東南アジアの仏教僧の衣に見られる橙色はサフランで染められた色です。橙は、アジア以外の国では高貴な色とされることはなかったために、欧米人にとって皇室や宗教の場 で橙が使われるのが東洋の神秘と感じられたのかもしれません。

「ミカド」が色名として色彩辞典に登場する数年前に、イギリスで日本の江戸時代を舞台にしたオペレッタ「ミカド」が初演されたことが、色名の由来に関係していると思われます。その前に鎖国を解いた日本がパリ万博に出展をしていることからジャポニズムのブームに結びついたと考えられています。

時系列にまとめてみます

1853年 ペリーが浦賀に来航

1867年 日本がパリ万博に出展

1885年 ギルバート&サリバンのオペレッタ「Mikado」初演

1892年 英語の色名に日本語がそのまま色名となった「Mikado」が登場

1912年 「Mikado」が「Mikado Brown」と「Mikado Orange」の二種類で表記される

「ミカド」は日本を舞台にした最も有名なオペラ「蝶々夫人」初演の20年前の1885年に初演されており、大変ヒットし現在でも人気の衰えない喜劇です。目立って橙色が演出に使われている印象はありませんが、やはり前述の通り東洋の神秘の象徴だったのかもしれません。
(余談ですが、1791年に初演されたモーツァルトの「魔笛」の主人公タミーノは日本人の王子です)

その後「ミカド」色は、「ミカドオレンジ(黄丹)」と「ミカドブラウン(黄櫨染/こうろぜん)に分けられました。

即位の礼、黄櫨染の袍衣の天皇陛下

欧米向けに日本らしさをアピールする際に、橙色を高貴で神秘 的なイメージにアレンジすると、われわれが想像する以上に効果的かもしれません。ただし、色みそのものは高級感に欠けるので、和紙や上質の織物など素材を厳選することをお勧めします。

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