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元研究開発者の日々の情報:COVID-19抗体迅速検査「AbC-19」、陽性判定の2割が偽陽性?(2020年11月27日号)

この雑多情報では新型コロナの話題を中心に様々な話題を提供していきます。

1.COVID-19抗体迅速検査「AbC-19」、陽性判定の2割が偽陽性?

m3.com より引用

英イングランドの重要労働者(医療従事者、消防・救助隊員、警察官など2847例と前の献血者1995例)を対象に、英国迅速検査コンソーシアム(UK-RTC)「AbC-19迅速検査」による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染の検出精度を臨床検査室ベースの正確性試験で評価した。

 その結果、免疫測定バンドは弱いものが多く、測定装置の3.9%に臨床検査員3人の陽性/陰性不一致が認められた。二重読影法を用いた場合、既知の陽性・陰性検体の感度は92.5%、特異度は97.9%だった。免疫測定の標準試料を用いた場合、PCR確定例の感度は94.2%だったが、それ以外の抗体保有者は84.7%だった。PCR確定者は重症化する傾向にある一方、血清陽性者のわずか62%にしか症状がなかったことから、抗体濃度が高いほどAbC-19の感度が高くなることと一貫性。重要労働者100万人にAbC-19検査を実施し10%が過去に感染していたと仮定すると、8万4700人が真陽性、1万8900人が偽陽性と予測され、陽性判定が正しい確率は81.7%だった。AbC-19で陽性と判定された重要労働者の約5人に1人が偽陽性ということになる。


2.コロナ指定感染症、延長へ 入院や外出自粛措置を継続 幅広い対策、恒久化も検討

m3.com より引用

暫定的に「指定感染症」に位置付けられている新型コロナウイルス感染症の法的扱いを来年2月以降も延長する方向で政府が調整していることが26日、分かった。期限は来年1月末だが、ウイルスの特徴や現在の流行状況を踏まえて、引き続き感染者への入院勧告や就業制限、療養先や自宅からの外出自粛などの措置が必要と判断した。

 感染症法では、延長できるのは1年間と定められているため、いずれはウイルスの危険度に応じた正式な分類を決める必要がある。政府関係者によると、将来は実施できる措置が最も多い「新型インフルエンザ等感染症」に新型コロナを含める法改正案が浮上している。実現すれば現状と同等の幅広い対策が恒久的に実施可能になる。

 新型コロナは病気の特徴が分かっていなかったため、分類を正式に決めず、期限付きの指定感染症に位置付けて対応。実施できる対策は、患者に原則として入院してもらうなど危険度の高い2類感染症相当から始まり、無症状感染者にも適用するなどさまざまな措置を追加してきた。

 今夏には「措置が厳しすぎる」として危険度の低い分類に変える意見も政府内に出ていたが、高齢者や持病のある人が重症化、死亡する割合が高く、10月以降、再び感染が拡大していることを踏まえ、当面は警戒レベルを下げずに対応する。

 将来、新型インフルエンザ等感染症に位置付けられれば、感染者への入院勧告や就業制限が引き続き可能で、建物の封鎖のような強力な措置は政令で柔軟に可否を決められる。法改正案では、現在流行しているものとは別のコロナウイルスが新たに発生した場合にも適用できる内容になっているという。

 ただ、新たな治療法やワクチンが登場してウイルスの危険度への評価が変われば、対応が変わる可能性がある。

 ※感染症の法的分類

 感染症法ではウイルスを危険度に応じて分類し、実施できる措置を示している。危険度が高い順に1~5類に分かれている他、全国的にまん延する恐れのある「新型インフルエンザ等感染症」という枠もある。また、新型コロナウイルスのように、既に知られている感染症に似ているが、詳しい特徴が分かっていないウイルスを暫定的に位置付ける「指定感染症」と、既存のウイルスと症状や特徴が全く異なり、かつ危険度の高い感染症を当てはめる「新感染症」がある。


3.COVID-19死亡率の違いは年齢分布の影響が大

Ann Intern Med誌(日経メディカル版)から より引用

COVID-19の致死率は国ごとに大きく異なっている。ドイツHeidelberg大学のNikkil Sudharsanan氏らは、9カ国の年齢別のCOVID-19発症者と死者に関するデータを利用して人口統計学的研究を行い、各国間の致死率の差の3分の2は、COVID-19と診断された患者の年齢分布により説明できると報告した。結果はAnn Intern Med誌2020年11月3日号に掲載された。

 各国の致死率に大きな差がある理由の1つとして、分母となる全患者数の把握が難しいことが挙げられる。また、国によって、年代ごとに、SARS-CoV-2検査を受ける人の割合が異なることも影響していると考えられる。

 年代ごとの致死率は、どの国においても、年齢上昇と共に急激に上昇する。これまでに、低所得国や中所得国で致死率が低いのは、若い年代の人口比率が高いからで、イタリアで致死率が高いのは、高齢化が進んでおり、年齢が高いCOVID-19患者が多いからではないか、との考えが示されている。しかし、患者の年齢構成の差が、国ごとの致死率の差にどのくらい寄与しているかの検討は行われていなかった。

 著者らは、COVID-19患者の致死率が異なる要因は、ウイルスの毒性や各国の医療システムのCOVID-19対応能力などの違いよりも、診断が確定した患者の年齢分布の差による影響の方が大きいと考えて、世界各国のデータを集めて検討することにした。

 著者らは2020年4月19日までに、中国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、韓国、スペイン、スイス、米国の9カ国で発生したCOVID-19の症例122万3261例と死亡例について、年齢別に再集計したデータを用いた。データは米国CDCと各国政府の公式リポートから入手した。なお、観察された致死率は報告されているが、年代別に再集計されたデータは入手できなかった95カ国のデータも参考までに調査した。

 患者の年代別死亡率は、0~9歳、10~19歳、20~29歳、30~39歳、40~49歳、50~59歳、60~69歳、70~79歳、80歳以上に層別化して、報告された患者数と死亡数から推定した。米国、ドイツ、フランスは公式報告の年齢分類の区切りが異なるため、各群の年齢の中点の致死率を計算した。

 国ごとに、観察された致死率、年齢予測致死率、年齢標準化致死率を算出した。観察された致死率は、単純に各年代の死亡率を合計したものだ。この数値は、検査の対象になりやすい年代の患者数が多くなる現象の影響を受けやすい。

 年齢予測致死率は、各年代の致死率に、人口全体に占めるその年代の人数の割合を掛けて、全年代分を足したものだ。これはどの年代も同じ割合で検査を受けていたと仮定した場合の致死率を推定する。

 年齢標準化致死率は、各年代の致死率に、9カ国の年代別の患者の割合を平均した標準分布を掛けて、全体を足したものだ。各国の致死率に引き続き残っている差は、実際に存在する年齢特異的な致死率の差によると考えられる。

 各国で観察された致死率のばらつきは大きかった。最も高かったのはイタリアの9.3%で、続いてオランダの7.4%だった。最も低かったのはドイツで0.7%、米国は1.2%、続いて韓国の1.6%だった。致死率の標準偏差は3.1%だった。

 年齢予測致死率もイタリアが最も高かったが、4.6%になり、オランダも2.6%と大きく低下した。ドイツは1.5%になる一方で、米国は1.1%、韓国は1.5%とほとんど変化しなかった。標準偏差は1.2%だった。

 年齢標準化致死率は、イタリアが3.9%、オランダが2.7%になり、ドイツは1.3%、米国は1.3%、韓国は1.9%になって、標準偏差は0.9%だった。致死率が最も低くなったのはスイスで、1.2%だった、患者の年齢分布で調整すると、国間のばらつきの66%を説明できた。年齢調整した致死率の中央値は1.9%だった。

 続いて、95カ国を分析対象にしたところ、致死率のばらつきは大きくなり、最高となったスーダンでは28.6%で、最低だったエリトリア(0.0%)とカンボジア(0.0%)との差は28.6ポイントになった。これら95カ国については、年代別の患者数が得られなかったため、上述した9カ国の各年代群の致死率の平均を求めて、それぞれの国の年齢構成と組み合わせて、各国の致死率を予測した。すると、国家間の差は劇的に小さくなり、最高がマルタの2.1%、最低がウガンダの0.24%になり、差はたった1.9ポイントとなった。

 これらの結果から著者らは、各国のCOVID-19の致死率の違いは、母集団のどのグループが検査を受け診断が確定したかに影響を受け、最も大きな要因は患者の年齢分布の違いだった。今後は、COVID-19患者の死亡率を減らすための戦略を考えるにあたって、患者の年齢分布の違いを補正して、偏りのない数値を基に検討することが重要だろうと結論している。この研究は、Alexander von Humboldt Foundationなどの支援を受けている。

 原題は「The Contribution of the Age Distribution of Cases to COVID-19 Case Fatality Across Countries A Nine-Country Demographic Study」

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