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元研究開発者の日々の情報:抗体カクテル(REGNCOV2)緊急使用許可2020年11月28日号

リジェネロン社の抗体カクテルREGN-COV2が現地時間11月21日(アメリカ現地時間)FDAで緊急使用許可が下りました。

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リジェネロン社抗体カクテルREGN-COV2の治験成績

アメリカ国内のフェーズⅠ/Ⅱ/Ⅲ治験結果。対象は非入院患者(感染初期患者)275人。被験者層は、約56%がヒスパニック、約13%がアフリカ系アメリカ人。参加者の平均年齢は44歳で、49%が男性、51%が女性。REGN-COV2は感染者のウイルス量を減らし、回復期間をほぼ半分に短縮しました。

9月29日のリジェネロン社の発表では、対象にREGN-COV2を8グラム(高用量)、同2.4グラム(低用量)、プラセボ(偽薬)を投与するグループを1対1対1の割合で実施した。プラセボ群では症状緩和までにかかった日数の中央値は13日だったのに対し、投与群では7日でした。

ウイルス量もウイルス量が多い患者では、placebo群に対して約99%のウイルス量の減少が認められ高用量、低用量のいずれも「忍容性」は良好として、一定の有効性・安全性が報告され、
・10の5乗copies/mL以上のウイルス量では約50~60%の減少
・10の6乗copies/mL以上のウイルス量では約95%の減少
・10の7乗copies/mL以上のウイルス量では約99%の減少

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イギリスでもREGN-COV2の第3相試験が9月中旬から始まりました。

トランプ大統領への投与

ホワイトハウスのショーン・P・コンリー医師によると、亜鉛、ビタミンD、メラトニン、アスピリン、ファモチジンを服用しながら、重症化を防ぐためREGN-COV2を使用しました。

この時は承認前ですがトランプ大統領の医療スタッフが「コンパッショネート使用(#1)」を要請し、FDAの承認得て投与しました。トランプ大統領は74歳、190.5センチメートル、110.7キログラムで、BMIは30.4で「肥満」に分類されるハイリスク患者。

(#1)コンパッショネート使用とは
compassionate use, CUとは、生命に関わる疾患を有する患者のため、例外的に未承認薬の人道的使用を認める制度。

訳語の「人道的使用」も用いられる未承認薬とは、その効果や安全性が科学的に確認がされていない薬剤のことであるcompassionateとは「同情する」情状を考慮する」という意味があります。

アメリカ合衆国では「拡大アクセス」(Expanded Access)、「未承認薬の治療・診断へのアクセス」と呼ばれる。日本ではCUは公的制度としてまだ導入されていないが、過去には未承認薬の公的供給が実施された事例があります。

1980年 熱帯病治療
1996年 エイズ治療
1999年 ハンセン病治療
2020年 COVID-19治療(アビガン)

2.新型コロナに対するイベルメクチン(ストロメクトール)の可能性

イベルメクチン

イベルメクチン構造

当初話題になったが最近あまり話題にならなっくなったイベルメクチン。¥

ただ、同薬剤の発明者がいる北里大学では治験が続けられている。

(1)国内での治験状況

以下、日経バイオテクより引用。

北里研究所は2020年9月17日、北里大学病院(神奈川県相模原市)で、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象に、抗寄生虫薬である「ストロメクトール」(イベルメクチン)の医師主導治験(第2相臨床試験相当)を開始すると発表した。2020年5月の段階で、医師主導治験の開始に向けた準備を進めていた。既に治験薬の手配は進んでおり、近く患者への投与が開始される見通しだ。

北里研究所は2020年9月16日、国内の臨床研究などの情報をまとめたデータベースである臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCT)で、同試験の詳細なデザインを公開した。同試験は、軽症および中等症のCOVID-19患者を対象にしたランダム化二重盲検プラセボ対照試験だ(登録番号: jRCT2031200120)。被験者は、(1)適格性検査前3日以内にPCR検査で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が陽性、(2)酸素飽和度(SpO2)が95%以上、(3)適格性検査時の体重が40kg以上──などの条件を満たす成人患者だ。240例の被験者を、イベルメクチン(200μg/kgを初日に単回経口投与)する群と、同スケジュールでプラセボを投与する群に均等に割り付ける。主要評価項目は、PCR検査でSARS-CoV-2が陰性化するまでの期間とした。

 イベルメクチンは、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大の大村智特別栄誉教授と米Merck社の共同研究で創製された抗寄生虫薬だ。寄生虫の神経細胞や筋細胞に存在するグルタミン酸作動性Clチャネルに選択的に結合し、Clに対する細胞膜の透過性を上昇させる。その結果、寄生虫の細胞に過分極が生じ、まひすることで寄生虫が死に至る。家畜動物の寄生虫駆除に用いられる他、ヒトに対しては熱帯地域などで問題となる河川盲目症(オンコセルカ症)の治療などに長年用いられてきた。

 これまでの研究で、イベルメクチンは複数のウイルスに対する抗ウイルス作用を示すことが分かっている。また2020年4月には、海外のin vitroの研究で、同薬のSARS-CoV-2に対する増殖抑制効果が確認された。大村智記念研究所(旧北里生命科学研究所)でも、試験管内の培養細胞を用いてウイルス増殖の阻害率を検証しており、同様の効果を確認しているという。

 また、米Utah大学の研究チームは2020年4月19日に、COVID-19患者に対するイベルメクチンの有効性に関する研究結果を査読前論文(プレプリント)として発表した。同研究は、2020年1月1日から3月31日までにCOVID-19と診断された患者(約1400例)の観察研究のデータを解析したもの。データ解析の結果は、患者全体の死亡率はイベルメクチンの非投与群では8.5%であったのに対し、投与群では1.4%であり、死亡率が有意に低下する(p<0.0001)というものだった。

 ただし、同論文については、解析に用いた米Surgisphere社のデータに関して第三者から信ぴょう性を疑う声が上がったことなど受け、取り下げられた経緯がある。

この件について、大村智記念研究所感染制御研究センターの花木秀明センター長は、、「科学的詳細が分からないためコメントする立場ではない」とした上で、「観察研究ではなく治験によって有効性を検証するべき」と回答。「当初の予定通り医師主導治験を実施する」(花木センター長)という方針の下、準備を進めてきた。

イベルメクチンのSARS-CoV-2に対する作用機序について、花木センター長は、「イベルメクチンは、SARS-CoV-2のメインプロテアーゼに対する結合親和性が報告されている。メインプロテアーゼは、ウイルスのゲノムから翻訳された蛋白質を切断し、機能させる酵素だ。

そのため、イベルメクチンがメインプロテアーゼを阻害することでウイルスの複製を抑制できると考えられる。また、イベルメクチンは、インポーチン(Importin)という宿主細胞内の蛋白質を阻害することも分かっている。インポーチンは、種々の蛋白質を核内に輸送する機能を持つ。そのため、新型コロナウイルスは、インポーチンを介して宿主細胞の核内に侵入して複製される。インポーチンにイベルメクチンが結合し、不活化することで、ウイルスの核内への侵入を阻害するのではないかと考えられている」と説明している。

北里研究所の広報担当者は、「今回の医師主導治験は、2020年7月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業の、『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発』という課題で採択された。

治験を開始する上での大きな後押しになった。試験デザインに関しては、同薬の有効性を厳格に判断するためにプラセボ群を設けた」と説明。加えて、「同薬の製造販売元であるMSDなどの協力の下、治験薬の手配などは完了している。被験者のリクルートが進行中で、近日中に投与が開始される見込み。試験の終了時期は未定だが、その後の研究開発はMSDが担当することになる」と話している。

イベルメクチンvsCOVID19 作用機序

(2)海外での治験状況

最近では、「イラク・バグダッドでCOVID-19患者を治療するためのドキシサイクリンによるイベルメクチンの使用に関する制御された無作為化臨床試験」で発表されている。

治験組入した、COVID-19 患者に対するイベルメクチン-ドキシサイクリン(テトラサイクリン系抗菌剤だが細胞内への亜鉛流入増進効果により、COVID19 による効果も期待される)の結果は、ビタミン D および C、 亜鉛、ステロイドを含む標準的な治療効果から分離できていないようです。従って、亜鉛、ビタミンDおよびC、および疾患のウイルスおよびステロイドと一緒にイベルメクチン-ドキシサイクリンを臨床的効果が一定は効果があるようです。

これは、COVID-19患者の将来の最も適合した併用療法として標準的治療法に加え、悪化を減少させる可能性があるとしている。

もう1つは「イベルメクチンだがイラク・バグダッドでCOVID-19患者を治療するためのドキシサイクリンによるイベルメクチンの使用に関する制御された無作為化臨床試験(*1)」として発表されている。

結論としては、イベルメクチン-ドキシサイクリンがCOVID19 の進行を止め、COVID-19の重症患者における死亡率を低下させる可能性があることを明らかにした。フロリダ州で行われた観察前版の調査では、イベルメクチンは、重症のCOVID-19患者の死亡率を80.7%から38.8%に低下することを示した。興味深いことに、肺の組織におけるイベルメクチン濃度とドキシサイクリン濃度の両方が、血漿中の2倍以上と推定されている。 したがって、肺組織に対する抗ウイルスおよび抗炎症作用が顕著であると推定される。これらの知見は、イベルメクチンが抗ウイルス剤であることに加えて強力な免疫調節性である可能性があるという機序に合致する。しかしながrあ、これらだけ結果から時期尚早ではあり、依然として大規模な無作為化対照研究による確認が必要である。

実際には、 登録された COVID-19 患者に対するイベルメクチン-ドキシサイクリンの観察された利点は、ビタミン D および C、 亜鉛、ステロイドを含む標準的なケアの効果から分離できません。したがって、亜鉛、ビタミンDおよびC、および疾患のウイルスおよび/または過炎症期のステロイドと一緒にイベルメクチン-ドキシサイクリンを与えることは臨床的に利益のようです。これは、COVID-19患者の将来の最も適合した併用療法を可能な限り最小限に抑え、疾患の持続時間および進行を減少させる可能性がある。

(*1)Ivermectin: potential candidate for the treatment of Covid 19
The Brazilian Journal of
INFECTIOUS DISEASESより引用

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