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竹内謙礼(2021)深夜残業

年末年始にまとまった時間ができるので、図書館で駆け込み予約&貸出した中の一冊。

とある水産会社の社員が、最近買収した米菓会社に出向して業務改善をはかる話。
上層部は残業を減らしたいのに、それに抵抗する社員という、ありがちっぽい構図を
「あるよね〜〜!!」って感じに書いていてそれなりに面白かったです。

残業を禁止しているのに、こっそり隠れて残業することに情熱を燃やす社員だったり
早く上がれるように、業務時間外に謎のトレーニングをしてて、それサビ残じゃん、みたいな流れだったり
「責任感があるから残業している自分=徳が高い」みたいな思考だったり

作中で、度々日本と欧米が比較されて、
その度に、主人公がその比較は妥当ではない点を指摘しているのはもっともだなあとできたし
業務量を減らさずに労働時間だけ減らそうとするのは無理筋だ!という主張もとても納得だった
のだけれど、結局解決策が業務の仕方の工夫であって、業務量を減らそうという流れにならないのはちょっとだけ残念だなあ・・・などと

あと、働きたい人は好きなだけ働けばいい!的な流れには違和感。
登場人物の中で、幼い子供がいるのに家庭に仕事を持ち込んで妻から糾弾される場面があったのだけれど、
結局その人は最後まで前のめりに残業し続ける人物として描かれていて
2021年初版であることを考えれば、
もうちょっとその悲哀というか、家族<仕事になっている精神構造の寂しさ的なものについても言及があったら良いのになあなどと思いました。

若者向けというより、おじさん向け小説かなあという印象

ポイント:★☆☆

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