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20240126 誕生日

 誕生日が同じともだちがいる。同じ電車の車両の中に自分と誕生日が同じ人物が居合わせる確率はそこそこ高いらしい、という話を父から聞かされたことがあるのだがぼくは今まで彼にしか会ったことがない。
 その彼といつものように会い、新しい気分で鹿児島を歩くことにした。生まれてから昨年までずっと過ごしてきた土地なのに、おもしろいことに、鹿児島がとても新しく感じられた。とても澄んだ空気に包まれた、あたたかくユーモラスな街だった。歩道橋の上からは雪を冠った桜島が見え、見下ろすと車や路面電車がせわしなく行き交っていた。その一瞬はすごく心地よかった。そして、新しい装いが自分を新しい気分にさせてくれていた。懐かしい場所や見覚えのあるものにも出会って、自分がこの街をよく知り馴染んでいる人のようにも、初めて訪れた何も知らない観光客のようにも思えた。
 帰るモードに切り替わった頃には日が暮れかけていて、風が冷たくなり、ビルの隙間に光が溜まっていた。最後に立ち寄ったキルトショップでたくさんの生地を見て、その柄が頭から離れなかった。彼に、紙袋に入った誕生日プレゼントを手渡してもらった。仕事を終えた父の運転する車の中で、眠りに落ちた。

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