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20240726 ハイビーム

 きょうは鹿児島の実家に帰る日であった。飛行機の中では音楽が聞こえないので代わりに読む本を買うべく、スーツケースを引きずりながら立川駅まで歩き、北口のブックオフで佐藤究の短編集「爆発物処理班の遭遇したスピン」を手に入れた。南武線で川崎に向かい、そこで京急本線の羽田空港行きの急行列車に乗りかえる。空港は人で賑わっていて、「本日は大変混雑しておりますので、保安検査場は出発時間の40分前までに通過してください」というようなメッセージが貼り出されていた。早めについてよかった、と一時は安堵したけれど、結局やるべき手続きを踏んでいるうちに余裕などないぴったりの時間で搭乗することになってしまった。離陸の直前に、海底のタイタニック号を見に行った潜水艇の事故を思い出し、自分が爆発して吹き飛ばされる様子を想像した。しかし何事もなく飛行機は空中に飛び出して、しばらくすると安定した高度に入った。本を読み始め、最初の話を読み終わったあと20分くらいの昼寝をした。
 鹿児島の地面に降り立つと友人が待ってくれていた。そして友人と僕を、彼の鮮やかな橙色のプジョー208が待ってくれていた。それは我々専用の宇宙船であるかのようなわくわくをもっていた。夏が来る前から、空港から1時間半ほどかかる僕の実家まで、彼がドライヴしてくれるという計画を立てていたのだ。かくして日が沈み始めた鹿児島を南下していくドライヴが始まった。風景はどんどん暗くなっていき、前を走る車のテールランプが眩しくなってきた。進むにつれて街灯を見かけることも少なくなっていった。ハイビームに切り替える手順がわからず、地面だけを照らして208は走る。彼の運転は心地よく、適度にスリリングで、的確だった!経由地としていた駅まで来て、ナビをGoogle mapから僕の記憶に切り替えた。家までの道はまだはっきりと覚えていた。

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