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714,犬

 朝、といえる時間帯に映画を見て、帰るモノレールに乗ると、いろいろな土地がいつもとはとてもちがうアングルで流れていく。駐車場に並ぶ車、背景にビーチの写真が置いてあるだけのバーチャル・ビーチでバレーをする人々、まだ閑散としているショッピングモール。頭上の安全な通路から工場を見学している気分になる。今日は涼しいみたいだ。
 夜、画面の向こうには5人の人と1匹の犬がいる。それは家族なのだけれど、あまり現実味がない。犬は、ときどきただの黒い塊みたいにさえなってしまう。いや、でもこれは現実より現実味を帯びているといったほうがいいのかもしれないと思う。いつも聞こえていた母と祖母の掛け合い、弟の叫び声が聞こえる。抽象的な画面から聞こえてくる音がより鮮明に、こちら側にも溶け出してくる。

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