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疼
自殺願望があるわけじゃない。これから先の未来には絶望しか感じていないが、死にたい、と思ってもそれを実行する勇気がない。それに、こんなろくでもない世界でも未練はあるのだ。ほんの些細なものだけれど。
ただ、死ぬときは楽して死にたいなあとはぼんやり思っている。
それなのになぜ、手首を切って死ぬ夢なんか見てしまったのだろう。わたしは左利きなのだけど、右の手首をカミソリで確実に切っていた。もし、本当に手首を切るときが来たら、恐らくは右の手首を切るんだろう。夢の中でやったように。そういうところまで律儀に再現しなくていいのに。だから起きた瞬間、右手に激痛が走って、嫌な予感がした。
これは夢だ。
夢だ。
夢なんだ。
けたたましく鳴り響くアラームが耳を犯して、汗ばんだ背中が不快な朝を迎えたことを教えてくれる。
大丈夫。これはただの夢。
子供をあやすように言い聞かせる。それなのに、夢のなかで切った部分が今でもじくじくと疼いてたまらない。
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