死にたいぐらいで生きていたい

 ある時死のうと思った。本当に、ふとそう思った。それ以上の詳細は別に言っても意味がないだろうし話さない。
 その時飲んでいた薬を一気に飲んだのを覚えている。しばらくして眠くなってきて、猛烈に死ぬのが怖くなってきたことも覚えている。そのあとで親に殴られたことも。それ以外はしばらく記憶がないけれど。

 あの時一度猛烈に死というものを身近に感じたので、それ以降の人生は本当に自分の価値観が変わってしまって、ある意味で自分は本当に死んだんだと思う。これはいいこととも悪いこととも言えないけれど、なんとなくずっとそういう考えがまとわりついている。

 人にあまり聞かれたことはないが、たまに一人でいるとぼんやりと死にたいと一人ごちることがある。ほとんど無意識で、人前で間違って言っていないかたまに心配になる。自分は多分周りにそこそこ明るい人間だと思われているので、そういうことを言ったら気味悪がられるのが目に見えているから。いや、そうじゃなくても気持ち悪いと思われるのは「普通」だろうが。

 自分が死にたいと言っているとき、本当に死にたいのかはわからない。私は自殺したときに死ぬほど後悔したし怖かったから。でも、せめてこれぐらいで生きていたいよなとは思う。別に心配されたいわけじゃない。構われたいわけじゃない。口から不意に出てくるだけ。

 せめてそれぐらいで生きていたいだけ。

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