ベニズワイガニとSGDs
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ベニズワイガニ漁の主流である、カニ籠を考案した、魚津市の故浜多虎松さんの息子、駿吾さん(昭和20年生まれ)に伺った話です。虎松さん考案のカニカゴ漁は、ここ魚津が発祥で、今や全国に広まっているということは、あまり知られていないかも知れません。
かつて刺し網漁で漁獲していたカニ。冬場に網に絡まったカニを取り外す作業は、手がかじかみとても辛かった。そこで少しでも負担を軽くしようと、籠での漁獲を考案したのです。
地元魚津の山林から孟宗竹を調達し、鉈(なた)で加工しながら編んでいきました。籠編みの技術があったわけではなく、駿吾さんも手伝いながら、最初は見よう見まねで作ったとのこと。手本としたのは、鶏などを飼う唐丸籠(とうまるかご)でした。
カゴの中に、カニの餌になる魚などを入れておびき寄せ、一度入ったら出られなくなるというのがカニカゴの仕掛け。餌は当時、サバやカツオなどを使っていましたが、時にはサス(昆布締めの材料となるカジキマグロ)の頭やひれなど、捨てられる部位を貰い受けて餌にしたりもしました。
ここが最初のSDGsポイント。ロスをなくす、ゼロエミッションの知恵ですね。
籠漁は刺し網に比べて効率も良く、一時カニ漁が盛んになり、乱獲が心配されたのですが、カゴは網目が大きく、小さなカニは引き上げられない。つまり食べられる、商品になるカニだけを捕獲する仕組みだったのです。
ここが二つ目のSDGs。根こそぎとってしまわないというのがポイントでした。
駿吾さんから見た虎松さんは、気のいい親父という印象。だが、漁業に向き合うとき、カゴを作るときなどは、一変して厳しさを感じたといいます。駿吾さんに、これからの漁業に対する思いを伺ったところ、「父の思いと同じで、資源を大切に、いつまでも漁を続けていってほしい」とのことでした。
蛇足ですが、深い海に住み、身に水分が多いベニズワイガニが食用として重宝されるようになったのは、刺し網からカニカゴに変わったからという説もあります。刺し網に絡まった足を外すのに手間取ると鮮度が落ちていきますが、カゴ漁だとすぐに取り出して冷やして保存が可能。昨今富山ではブランド化もされたベニズワイガニですが、足が取れずに揃った形でセリにかけられるには、やはり刺し網よりカゴ漁の方が適しています。
浜多虎松さんが考案したカニカゴのおかげで、私たちはあの甘味の強い、そして絶品ミソのベニを味わえると言ってもいいかも知れませんね。