見出し画像

【335/1096】「もういないんだ」

きみのことを聞かれる
いろんな人にいろんな場面で
きっと
これまでも話してきたし
相談にものってもらってきたのだろう
かならずきみのこと
「いまどうしてる?」って
聞かれるの
だから わたしは
「もういないんだよ」って
伝えたの
もういないって言って
涙が出て
押さえている気持ちが溢れそうになって
慌ててわらってごまかして
困らせてごめんねって
何度も繰り返した

「わたしが聞いたから」って
あの人も泣いていた
ごめんね悲しませて
そして心配かけてごめん

詳しく話したようで話してなくて
とにかく
思っているよりも元気だし
現実味がないことなんだと
専門家にも通っているし
孤独じゃないから
へんに心配しないでねって
安心させたくて
こんな暗く重い話を共有させた
その罪悪感をぬぐいたくて
言葉をかさねる
かさねるほどに虚しく
自分が大丈夫でない状態が
あらわになる

なんとか冷静になるよう
淡々と話した
けど ど真ん中の気持ちは
言えなかった
自分でもわからないから

あれから時がすぎ
自分の放った
「もういないんだ」って
そのセリフがブーメランのように
返ってきてまた苦しめる
いや 悲しさをます
そうか もういないんだね
いないって事実を口にして
それでまた本当になっていく

現実が重なる
夢でなくなる
悲しみが悲しい現実で
塗り重なる
つらい

こんな同じような日々を
くり返しくり返し生きるのか
長い

「生きるから心配しないでね」って
その人には伝えたのだが
同時に自分の奥深くにも
呪いをかけたかもしれない
死ぬなよって
死ぬのはなしだよって

死ぬために生まれてきてない
いつか死ぬのだけど
自ら選びとる人生にしたくはない
どうしようもなくなったら
仕方のないことなんだけれど
いまはまだ
どうにかこうにか生きている
生きてるから
いろいろあるし感じられる
つらい

どうか幸せでありますように
幸せを生きてほしい
自分にそれは望めないけれど
まわりの人達には
幸せであってほしい
わがままだとしても
せめてもの願い

今日もごめんなさい
残された者の日々