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【273/1096】静かな物語

静かな物語が好きだ
ワクワクドキドキしたり
爆発したり事件が起きたりしない
ただただ
たんたんと過ぎていく時間の中で
ふわっともわっと
かすかな心の動きがある物語
変わらない日常の
微細な変化とその変化による
人の心のあり方や関わり

日常に寄り添う静かな物語
ドラマチックはいらない
静かに過ごさないと
自分の本当の感情がわからない
感じられない

ひとりでいること
何もせずぼーっとすること
やっと心に舞っていた澱がしずみ
上澄みの感情を感じられる
悲しい
涙があふれる
寂しい
顔と口がゆがむ
情けない声がもれる
大きな声でわんわん泣けたら
楽になるのかもしれない
日常の小休止

あの日から
心は止まったまま
体だけ現実を生きている
きみの消えた世界で
きみの事を切り離して
大丈夫なように
平気な顔して生きている

実際悲しみを感じないときもあって
もう堕ちることもないかと
安心してしまうこともあるけれど
悲嘆はそんなに楽なものではなかった
苦しい

きみのそれと比べて
悲しみも苦しみも
感じる価値のない人間だと自負して
感情に区切りをつけ
ポーカーフェイスでいる
それが楽だからだろう

悲しいと疲れるし
孤独になる
誰にも必要とされない自分と
思い込んで追いこんでいく
意味のないやり口
死ねたらどんなに楽だろうと
思い巡らす

切り離すために
集中するしかない
いまここ
残念だけれど今日も生きる

今日もごめんなさい
残された者の日々