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【260/1096】日常をはなれて

旅に出たい
日常をはなれて
どこかへ

久しぶりに遠くへ
学生の多い街で
川沿いをあるいたり
まぎれてランチを食べ
いつもと違うことをした

家から遠いところでは
自分のひととなりなんて
知る人もおらず
匿名性が保たれ
何者でもない自分になれる
それが心地よくまるで
なんの罪もないような
軽やかな泡沫

戻ればそれは倍になって
自分へと返ってくるのに
淡い夢の現実を息して
このままでいられたらと
叶わない逃げられない現実から
しばし逃避する

みな自分を酷使して
目指すべき場所へ進んでいる
自分から外れないよう
違わないようにして
日々を生きているのに
わたしは違うことばかり
してきたのではないか
違うことに囚われすぎて
大事な そうきみの事を
見られなくなっていた
いや
見たくなかったのかもしれない

歯が擦り切れるほどの
悔しさや苦しみ 悲しみ
きみのそれを
知らぬふりして
自分だけ健康に生きてきたのなら
本業をおろそかにしてきた
わたしにこれから何が
できるというのだろう

きみの事を思う自分と
日常を送る自分が
完全に分離されていく
毎日がすぎるたび
その距離が開いていく
繋がりを持たず分かれた片割れの
人生というべきか
乖離

懐かしくあの頃を思うとか
そういうものでない
ただ分離したふたつの現実
これは不思議な感覚
川の向こうとこちらのような
瞬間的にあちらからこちらへ
川の流れに隔たれた両者が
両立することはない
そこに橋はない
今のところは

また眠れない朝がきて
早くに目が覚める
皆寝ている静かな時間から
どうでもいい毎日が始まる
この先の不安とこれまでの後悔
自罰していても許されないこと
誰のものでもない人生が
どうなっているのか
渦中にいすぎてわからず
ただ悲しみは感じられるようになり
辛く苦しいことが
当たり前なのにわからない
波が激しく感情がゆらぐ
真ん中のないそれに
やはり繋がりがなく乖離している

深いところで死んだ芯は
枯れ果て戻ることもない
暗く静かなところで
動くこともない
ときおり様子を見に下る
変わりなく横たえた自分の半身

残った半身をまた
半分にして
現実と悲嘆を別々にこなす

ばらばらになったのは
自分も同じなのだ
自覚しているだけましか

もしももっと
細かく分離されてしまったら
自分というものが何なのか
統合する術を持たず
わからなくなるだろうね

分離することで消えたい気持ちは
体と心で繋がりが持てず
実行されることは難しいだろう
倫理的なものでなく
気力でもなく
統合されてないから
成されないだけだった
悲しみや苦しみに慣れて
前向きになったからと
勘違いしていた

死なないために
分離しているのかもね
切り離して延命している
愚かしい生き方
呪うこともできず
情けない1日がまた始まる

今日もありがとう
残された者の日々