第17回 『喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです』を振り返る②
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セルフパブリッシングにおける共同作業
Tak. やままさんの方から見て、もうちょっとこういうふうにできたらと思ったところってありますか。
やまま とにかく校正が辛くて。
Tak. 再三その話が出てきますね(笑)。
やまま これはもうやるしかないんですけど、序盤はもうちょっとシステマティックにできたのかなとは思いますね。
Tak. システマティックというのは?
やまま たとえば毎日1ブロックみたいに小刻みにルーチン化するとか、よく使っている特定のキーワードを検索して表現を変えるとか……。とにかく「上から愚直に読み直して修正していく」以外のやり方を見つければよかったなと。
Tak. そこは繰り返しで自分のやりやすいやり方ができていくところもあるんでしょうけど。
やまま 今回はTak.さんにすぐに相談できる環境にあったので、1冊目にくらべたらその点ではとても気が楽だったんですよね。
Tak. まあ一応「編集」とクレジットしていただいてますけど編集者ではないので、気楽にいろいろ話ができる面はありましたね。まあ「編集協力」ですよね。
やまま その体制ってむちゃくちゃ大事だと思うんです。今回は企画段階から二人でやったので、それもよかったかなと思いますよね。
Tak. やままさんは「並走する」という言葉をどこかでちらっと使ってましたけど、いっしょに何かをやっている感覚は大事だと思います。書く作業は孤独なもので、それは変えられないんですが、純粋に書く以外のところで並走する人がいるといいなとはよく感じます。
やまま 今後電子書籍をやりたい人がいたらブロガー同士でお互いがお互いのバディになったりするといいかなと思いました。『凡人の星になる』を出したときだって、自分で自分のお尻を叩くのはけっこう辛かったですもん。
Tak. そういうやり方ってあると思うんですよ。チームでやるというのもありますが、そうするとどうしてもお金の配分みたいな話が出てきちゃうわけで。もちろん出てきてもいいんですけど、「お互いがお互いをサポートする」ことで相殺するみたいな考え方もありますよね。それによって双方の生産性が上がることで、分配しなくても間接的に利益になるみたいな。
やまま そうですね。
Tak. もちろんそれには向き不向きがあって、逆にもっと仕事感を出していくという方法も人によってはあるかもしれません。びしっと役割分担を決めてやる方が性に合うという人もいるでしょう。あるいはしんどくても最初から最後までひとりでやる方がいいという人だっているはずです。セルフパブリッシングというのは個人がやることなので、いろんな方法が考えられると思うんですよ。ぼくも去年からいろんな方法を試してるんですが、みんながもっといろいろ試していくといいと思います。
やまま 二人の方が楽しいは楽しいですね。でも今回ちょっと感覚をつかんだので、短い3万字くらいのものはひとりでできるかもしれないです。
孤独な作業と読んでくれる人
Tak. やままさんは電子書籍とはいえ、先に商業出版(『凡人の星になる』)の経験があるわけじゃないですか。『凡人の星になる』はけっこう編集者さんとやり取りしながら作った感じですか。
やまま ひとりでやりつつ、要所要所で編集者に読んでもらっていました。それがなかったら無理でしたね。
Tak. まあ編集者の大きな役割のひとつは著者を励ましてお尻を叩くことですから……。
やまま 文章を書く人にもいろんなモチベーションを持った人がいて、日記を黙々と書けるような人はひとりでコツコツもできると思うんですけど、私は自分の引き出しの中にそっとしまって書くようなタイプの日記は昔から進まないんですよ。でも学校に提出して先生が赤ペンでお返事くれるような日記は続いたんです。
Tak. 読んでくれる人がいる、反応してくれる人がいるとできると。
やまま 人の反応がモチベーションになってるから。だから商業出版の方はすごいなと思って。編集者とやり取りするとは言え。
Tak. まあ、書くというのはそもそも孤独な作業ですからね。
やまま 特にセルフパブリッシングだと……。今回はTak.さんがちょいちょいというかモリモリ見てくれて、私が心折れそうなときに「この本は面白いと思うから」と励まし続けてくれて。
Tak. そうでしたっけ(笑)。
やまま 要所要所で。
Tak. 実際面白かったんですよ。本人が気づいてないといけないなと思って言うわけです。実はこれ面白いよというのは。
やまま それすごい大事と思いました。
Tak. ぼくが個人的に思うのは、セルフパブリッシングのいちばんしんどいのって「ちょっと相談」する相手がいないことなんです。「これどう思う?」って脇にいる人にちょっと聞いてみること。がっつりアドバイスをもらうというよりも「あ、いいんじゃない?」とか「これはないでしょ」とかいう、コメントでさえない、単に話しかけたことに返事がくるということですね。それさえないのはしんどいなと思うことが多い。自分がやっていることを認識してくれている誰かがいて、なおかつそのことについて会話ができるというだけでもけっこう違うなと思うんですよね。
打ち合わせの効用と「誰も怒らない」こと
やまま 意見といえば、今回は茅場町のコワーキングスペースCo-Edoでいっしょにスタッフをやっていたイラストレーターの松永みなみさんに表紙をお願いしたんですけど、打ち合わせもCo-EdoにTak.さんが来てくれて、そこにみなみちゃんもいるからじゃあ表紙のことを3人で話そうかみたいな流れでタイトルも考えたりとか……。
Tak. タイトルは3人でブレストして、けっこう重要な意見がみなみさんから出されたんですよね。
やまま どっぷりつかればつかるほど灯台下暗しなことが起こるから、第三者を入れるのもいいなと思いました。
Tak. それは本当にそうですね。
やまま セルフパブリッシング、みなさん表紙は苦労されていて。自分でできる方はもちろんそれでいいんですが、たとえば外注するときにはせっかく第三者的な立ち位置のその人がいるんだから、その機会をもう少し活用できるといいですよね。
Tak. 今回はみなみさんと会話して意見をもらえたというのはすごく大きかったし、表紙はもちろん、タイトルにも実はみなみさんの意見がかなり反映されている。表紙はCo-Edoのホワイトボードに絵を描きながら決めたんですよね。「タイトルを上でアーチにして」とか「著者名は縦書きで」とか。だからでき上がってきたときに開けてびっくりみたいなことはぜんぜんなかった。
やまま それ以前にもいろいろ話をして根本のところが分かってるので、枝葉末節のこだわり的なところだけの調整に注力できたのがよかったですよね。
Tak. それが今回はうまくいったなと思います。
やまま だからリモートワークとかいろいろありますけど、なんだかんだチームで顔会わせてやるというのもとてもいいなと思いました。
Tak. そうですね。Co-Edoの環境はそういうことができるのがちょっとうらやましいなと思いました。
やまま 打ち合わせって必然的にお尻を叩く道具にもなるんですよね。
Tak. 「来週打ち合わせあるからやっとかないと」というのはありますね。でも締め切り感みたいなものはあんまりなくて……。
やまま やっとかないとめちゃくちゃ怒られるというのではないですよね。結局打ち合わせに向けて自分ががんばりたくてがんばっているといういい状態なんですよね。がんばらなきゃいけないからがんばるというのは無理が生じるんだなと。
Tak. それぞれの視点での意見は必要だけど「誰も怒らない」というのは大事かもしれないですね。
(つづく)
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