見出し画像

【第8回】ロードマップと仮アウトライン

前回の記事はこちら▼

前回は、作ろうとしている本のイメージをつかむための仮タイトルを決めました。仮タイトルは『「アメリカン」に恋して ~食パン1斤サンドを食べる日々』に決まりました。

続いて「本」全体のロードマップを描き、仮アウトラインを組み立てます。

ロードマップを描く

ロードマップの形に決まりはありません。はっきりしたストーリーがあったり、ロジカルに説得したりするタイプの文章なら、全体の話の流れを一段落くらいで書いてみること(サマリー)がロードマップになります。これはわかりやすいですね。

一方、今回のように全体を通したストーリーが必ずしもない場合、無理に全体の流れを書こうとするよりも、書こうとしている本の説明を書いてみるのがいいでしょう。できあがった本をどんなふうに説明したいのか、文章にしてみるのです。

Amazonの概要欄とか本の帯文とか、そういうものをイメージして書いてみるとやりやすいと思います。

やままさんが書いたのは以下。

銀座は歌舞伎座横の名物喫茶「アメリカン」。
1斤もの食パンでつくられたデカ盛りサンドイッチが食べられるらしいと訪問したのが運のツキ。
「デカイ・ウマイ・オモシロイ!!」
そのとき私は恋に落ちたのだ。
おいしすぎるタマゴサンド、情報が多すぎる店内、存在感が強すぎる店主。
……もっと、知りたい!私の「喫茶アメリカン」研究が始まった。
タマゴ以外のサンドイッチはどうなっているの? 毎月変わる店主手書きのポスターに刻まれる言葉とは?通うたびに明かされるお店の謎!
知れば知るほど知りたくなる「喫茶アメリカン」。
お店と私の心の距離が縮まっていく様子を収めた、約5年間の訪問の記録。

やままさんはこういうのがうまい。

仮アウトラインを作る

ロードマップができたところで、はじめて「アウトライン」を作ります。

第6回で、素材となる記事をすべて入れ込んだ「素材となる記事を俯瞰するためのアウトライン」を作りましたが、それはいったん置いておきます。

素材のアウトラインからボトムアップで「本」の構造を作ろうとすると、破綻する可能性が高いです。記事がそれぞれに構造を持っていて、それがノイズになってしまうからです。だから「本」としてのアウトラインはまっさらの状態から作ります。

ロードマップを先に作ったのは、「本」のイメージができていない状態でアウトラインを作ると、それらしく形式を整えただけで「できた」気になってしまいがちだからです。どんな本にしたいのか、その感触が組み込まれたアウトラインとそうでないアウトラインとでは天と地ほども違います。

以下は、やままさんが実際に作ったアウトラインです(掲示版代わりに使っているDynalistの共有アウトラインに直接書き込まれました)。

画像1

「気になる期」「研究期」「親密期」というのが、前回やままさんがアイデアを出した「親密度レベルの変化」に対応しているわけですね。

妥当なアウトラインだと思いますが、重要なのは描いたロードマップが仮アウトラインに反映されているかです。そこで仮アウトラインの検証をしてみます。

ロードマップを仮アウトラインに組み込む

「検証」なんて言っても大したことではありません。

さっき作ったロードマップを要素ごとに分解して、仮アウトラインの該当位置に組み込んでみるというだけです。

これをやると、アウトラインに入れ場所がない要素がロードマップにあることに気づきます。あるいは逆に、ロードマップにはなかった要素がアウトラインに書かれていることに気づきます。

そのギャップを埋めるための修正を行います。ロードマップが足りない場合も、仮アウトラインが足りない場合もありますが、たいていは両者を修正することになります。結果として、アウトラインもロードマップも変化していきます。

ロードマップを組み込んで調整した結果、仮アウトラインは以下のようになりました。

画像2

構成自体に大きな変化はありませんが、ロードマップを組み込むことで流れができた(流れに応じてアウトラインが変わった)ことがわかります。アウトライン全体が一段階リッチというか、力のあるものになったようにも感じます。

ちょっとした違いですが、アウトラインだけを考えていてもこのようなアウトラインにはならないのです。

相互に行き来することによって双方が変化する。これはアウトライン・プロセッシングのキモである「シェイク」そのものです。文章の完成までシェイクは常に行われますが、そのスタートがロードマップと仮アウトラインのシェイクです。

全体のイメージ(ロードマップ)とアウトラインを別々に考えることがポイントです。別々に考え、それによって生じた差分を意識することによって、楽に深く考えることができます。

2回目のリアルミーティングはここまで。窓の外は代々木の夕焼け。

(つづく)

次回の記事はこちら▼

最終的にできあがった本はこちら▼




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?