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【第15回】劇的なことはなく、ただ終わっていくリアルライフ

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劇的な出来事はもうない

年が明けて2020年1月10日、再び茅場町のコワーキングスペースCo-Edoに集合。

みなみさんが表紙イラストのデータを数パターン作ってきてくれたので、みんなで見ながら検討する。雰囲気は前回のミーティングでほぼ決まっていたし、この間やままさんとみなみさんとの間でオンラインでの調整も行われていたので、今回は主にタイトルの細かい配置とかフォントとかを選ぶだけで無事表紙が決定します。

発売日を2020年2月頭に決めます。KDPのロイヤリティが月末締めなので計算がしやすいし、気分的にも区切りがいいからです。

表紙も決まり、発売日も決まり、ここからの約20日が仕上げに向かうラストスパートなわけですが、実はこの先に見るべきことはあまりありません。正確に言うと、取り立てて語るべき出来事はもうあまりありません。基本的にやることは校正だけです(いや、値段決めという大事が残っていますが、そのあたりの話は別途)。

原稿自体の誤字はもともと少ないし、すでに何度も校正を重ねてもいます。問題はTak.担当のEPUB作成の方です。

以前書いたように、EPUB作成には「でんでんコンバーター」を使います。でんでんコンバーターに通すために、原稿は「でんでんマークダウン」記法で記述します。でんでんマークダウンはMarkdown記法を拡張したものです。

ギリギリまでWordのアウトライン機能を使うために、でんでんマークダウンをWordの原稿に直接書き込むということをしているのですが、その部分の記述ミスはプリントアウトした原稿をいくら見ても発見できません。

そんなわけで最終的な校正は、実際にでんでんコンバーターを通して作ったEPUBファイルをEPUBリーダー(Macに付属の「ブック」アプリを使います)で読みつつ、原稿と突き合わせて確認することになります。これは主にTak.側の作業になります。

そしてもちろん大量のミスが発見されるのです。でんでんマークダウン自体に難しいことは何もないのですが(CSSをカスタマイズするようなことも特にしていません)、画像の貼り間違いが多いのです。

でんでんマークダウンでは、テキスト中の該当位置にひとつひとつの画像ファイルのファイル名を書き込んでいきます。ファイル名は章+続き番号(第2章の3枚目なら「2-3」)にしているのですが、なにしろ画像(写真)の数が多い。

「喫茶アメリカン」の巨大サンドイッチや過剰な店内の写真は、今回欠かせない要素です。その数100枚弱。やままさんがかなり厳選してはくれたのですが、それでも100枚弱。実はこれはでんでんコンバーターの制限ギリギリの数です(アップロードできるファイル数は原稿ファイルと合わせて最大100ファイル)。

それだけ数があればどこかで間違っている。その上、読み返し・文字校正を並行して進めているやままさん側で写真の差し替えや位置の変更が発生する。それを反映する中でファイル名の続き番号と実際の順番が合わなくなり、結果的に貼り間違える。

原稿に「締め切り」を設け、EPUB作成に入った後は修正を受け付けないということにすればもっと楽なのでしょうが、最終段階での細かい修正にギリギリまで対応できるのがセルフパブリッシングのメリットでもあります。そして(特に専門の編集者や校正担当がいない中で)最終段階での気づきが大きな意味を持つということを、これまで何度も経験しています。

だから、EPUBをブックアプリで読み、ミスを発見してマークし、原稿の該当位置を修正し、でんでんコンバーターに通してEPUBファイルを作り、ブックアプリで読み、差し替えが発生したので原稿の該当位置に反映し、でんでんコンバーターに通してEPUBファイルを作り、ブックアプリで読み、ミスを発見してマークし、原稿の該当位置を修正し……ということを時間切れになるまで繰り返すしかない、という原始的な結論になります。きっともっといいやり方もあるのでしょうが、今回はそうなりました。

最終的なEPUBファイルのタイムスタンプは1月30日11時59分。このファイルを持ってTak.側の作業は完了し、EPUBファイルをやままさんに送ります。

後はやままさん側でKDPへの登録作業を行います。

KDPの登録作業ははじめてやるとけっこうややこしいので(難しいところは何もないけれど、そこかしこに変な罠がある)、やままさんとZoomで画面を共有しながらいっしょに登録作業をします。あとはKDP側でのレビューを経て、問題がなければ72時間以内にダウンロード可能になるはずです。

もちろん告知・宣伝活動、公開後に発見されるミス(絶対にある)の修正など関連の作業は続くわけですが、企画し、作り、完成させるというプロセスはここでいったん終わります。

いつもそうなのですが、劇的なことはなく、ただ終わっていくところがリアルライフです。

(つづく)

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