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第16回 『喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです』を振り返る①

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最後に『喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです』はやままさんにとってどんな本だったか、そして「5年分のブログ記事の蓄積を自分で電子書籍化する」というのはどんな作業だったのかについて振り返ります。

以下は、出版後にやままさんのポッドキャスト「しゃべりたいことやまやまです」におじゃまして対談したときの会話です。

ブログを書くこと、本を書くこと

Tak. 今回はじめてセルフパブリッシングで出版してみてどうでしたか。

やまま まずブログと本だと、書くときの自分の気持ちとしてもぜんぜん違っています。ブログだと垂れ流しというか、その場かぎりのものというイメージだったのが、本当に「記録」になるんだなあという感覚を今持っています。

Tak. やままさんのブログで最近の「喫茶アメリカン」の記事を読んで面白いなあと思った人がいたとしたら、その人は過去の「アメリカン」記事も読めば面白いはずだと思うんですけど、ブログを5年分さかのぼって読む人ってそうそういないですよね。結果的にそこに記事があるにもかかわらず埋もれちゃって、もったいないことになっている。本にすることによってそれが生きる。

やまま そうですよね。

Tak. 自分の感想でいうと、最初に「アメリカン」関連の全記事をWordにコピーしたものをもらったんですよね。それを最初から読んでいったんですよ。やっぱり文章が変わっていくし、上手くなっていくのがありありとわかりました。
 これだけ書いていれば上手くなるよなというのもあるし、一方で昔のものには今にはない良さがあったりする。昔のものの良さというのは実は書いてる本人よりも他人の方がわかるんですよね。書いてる本人はたぶん昔のものを読むと恥ずかしくなる。

やまま そうです!

Tak. だからその辺は他人が入った方がいいかもしれないと思ったりしました。

やまま ブログも5年も書いてりゃ改行のタイミングとか絵の入れ方とかもこなれてくるんだなと思いました。

Tak. ひとつの対象を5年書き続ける人ってそんなにはいないと思うんだけど、同じ対象について書いているからこそ違いがわかるということもありますよね。

年月を重ねたものをコンテンツ化する

やまま 今回は単純に記事をコピペして並べるだけじゃないものにしようということで、タマゴサンドのことはタマゴサンドの項目にまとめてとか、いろんな書き方を考えたんですけど(笑)、結果的には時系列に並べることにしたんですよね。時系列に並べるならベースは記事のコピペでいいじゃんと最初は思ったんですけど、やっぱりブログの書き方と本の書き方は違うなと思いました。

Tak. 当初はもうちょっと編集するというか、ブログの記事を素材に新しく書き直すぐらいのイメージでいましたよね。でも素材チェックのつもりで時系列に記事を並べて読んでたら、この並びのままの方がおもしろいなと思ったんですよね。最終的にそのときに作った時系列を「期」で分けるという形になった。文章的にはやままさんが相当直したので、記事をそのまま並べたというのとはずいぶん違います。

やまま やっぱり定点観測だったんだなと思いましたね。

Tak. そうそう。ひとつのお店の定点観測というのがおもしろいなと思ったんです。観測対象である「アメリカン」の変化も、観測するやままさん自身の変化も。

やまま ブログだと昔の記事って役に立たないじゃないですか。今はないメニューが載ってたりして。だからブログの上では無用の長物なのに、書籍になったとたん「こんなときもあったんだね」というヒストリーになるのが面白いなと思いました。

Tak. 「アメリカン」の変わり方が面白いんですよね(笑)。続けて読まないとあんなに変わっているとは気がつかない。ブログで昔の記事を読んでも「ああ、昔は違うんだな」と思うだけだけなんだけど、「こうだったものがこう変わった」というのが次々に出てくると、変わっていくこと自体がネタになる。
 単に時系列に並べるだけでなく、ヒストリー性を強調するためにぜんぶ日付を入れるとか「期」に分けるとかいろいろ工夫しましたよね。「期」は、やままさんが「アメリカン」との関係を恋愛になぞらえて、最初遠くから見ているところから知り合いになってだんだん親密になっていくという「関係の変化」を見せたいというアイデアを出してきて、じゃあそれをそのまま章立てに使おうということになったんでしたね。

やまま そうです。明らかに関係が違うんですよ。

Tak. 最後はほとんど身内になってるという(笑)。

やまま そうなんですよ。この間も出版の報告に行ったら「15時まで営業」って書いてあるのに14時くらいにすでに閉まってたんですけど……。

Tak. ラーメン屋みたい(笑)。

やまま 「スープなくなりました」状態で(笑)。でもぜんぜん中にいれてくれて、せっかく来たんだからコーヒーのひとつでも飲んでけみたいな感じで。

Tak. すごいな。

やまま 温かい。

Tak. そういうお店の雰囲気もちゃんと本から伝わってきますね。

やまま ひとつのお店に通い続けた記録とかじゃなくても、年月重ねたものをコンテンツ化するというのは自分の中でも意味ありますよね。売れる売れないは別ですけど。

Tak. いろんな形が考えられるなと思いました。ブログの電子書籍化については自分でもやったし、そこではぐちゃぐちゃにシャッフルして組み替えるみたいな作り方をしたんですけど、ブログって当然時系列で記事が並んでいるので、その時系列性を生かす面白さみたいなものをあらためて認識しました。特にひとつのテーマについて長く書いているような人はそういうやり方も考えられるなと今回は思いましたね。決して単純に安易に並べるわけじゃないんだけど。

やまま 意外とダイエット日誌とか付けてる人はいいんじゃないでしょうか。売れないと思うんですけど(笑)、ダイエット中の人の励みになったりとかそういうことはありますよね。こういうふうにすれば痩せるという教本みたいなものよりは、こんなにがんばってますという日記的なものの方が意外と読んでてがんばれちゃうことも。

Tak. 単に時系列と言ってもいろんなやり方が考えられますね。

(つづく)

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