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【第10回】仮アウトラインの再考

前回の記事はこちら▼

やままさんによるアウトライン再検討

前回、やままさんが記事を組み込んだ状態のアウトラインを見て、そのまま原稿として読むと「階層が深すぎる」と感じた話を書きました。そして、階層を一段浅くするだけで読み物として素直に流れるようになるという話をしました。

やままさんもやはり読んでみて納得いかなかったらしく、その後もアウトラインを再検討していました。というよりも、仮アウトラインとはまったく別の新たなアウトラインを作っていました。

以下は共有Dynalistに残されていたやままさんによる試行錯誤の記録です(引用部分もDynalistに書き込まれていたのですが、ここではわかりにくいので心の声的な部分は引用に、検討したアウトラインはDynalistのスクリーンショットとします)。

ブログを読めば訪問記を時系列で追うことはできる。「書籍の醍醐味」が感じられる構成のほうがよいのではないか。初見の人は訪問記が綴られるだけだと面白くないはず。もっと「アメリカン本」ぽい構成のほうがよいのでは。

アウトラインを見直す中で、内容的には以下のグループに分類できることが見えてきた。

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構成をまるっと変えてみることに。新たに見えてきた分類を踏まえて、新しい仮アウトラインを作る。

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前回決めた仮アウトラインは、基本的にはブログの記事の時系列の並びを活かしながら、やままさんと「喫茶アメリカン」との出会いから関係の変化を「気になる期」、「研究期」、「親密期」という「期」に分けることで構造化するというものでした。

一方、やままさんが新しく作ったアウトラインは、記事を内容別に分類するというまったく異なる構造になっています。

前回二人してあれだけ考えた仮アウトラインのちゃぶ台返しなわけですね(注・誉めてる)。

分類と整理、流れと階層

2019年6月4日。双方で再検討した仮アウトラインを持ち寄って、横浜西口の星乃珈琲店にてリアル打ち合わせ。やままさんはDynalistの中で考えた新しいアウトラインに記事を組み込んだWordファイルを持参。

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繰り返しになりますが、「アウトライン」と言いつつアウトラインだけを検討しているわけではありません。アウトラインだけを検討するならDynalistなどの専用アウトライナーで完結できますが、今回はすでにブログ記事という形で本文が書かれているために、本文も扱えるWordのアウトラインモードを最初の段階から使っているのです。

Tak. またずいぶんと派手な構成変更を……(笑)。

やまま でも行き詰まりました……。内容別にグループを作って記事を整理し直してみたんですけど、この5年間で「喫茶アメリカン」のメニューも価格もすごい変ってるので、たとえばメニューの話をまとめてもすごく矛盾が生じるんですよね。

Tak. たしかに今はないメニューの話が多いなあ……。

やまま そうなんですよね。その悩みもあって行き詰まりました。

Tak. やままさんの新しいアウトラインは、前回の打ち合わせ以前に考えていたやり方(記事を素材として使って組み替える)に近いんだけど、前回決めた時系列の研究報告の形がすごく良かったので、率直に言ってちょっともったいない気がする。
 たしかに時系列だと話が毎回あっちに行ったりこっちに行ったりする感じがあるので、一回並べた上で読みにくい部分を外していく必要はあるかもしれないけど、元の記事の良さは間違いなく時系列の方が生きると思う。

やまま 構成としてはそれがいちばん理想的ですね。

Tak. 時系列案は、やままさんが言ってた「気になる期」「研究期」「親密期」の分け方がすごくよかったんだよね。ひとつひとつの記事には雑多にいろんな内容が入っていて、その意味ではバラバラなんだけど、「期」でくくったことで関係の変化が見えやすくなった。バラバラでもちゃんと流れを感じる。逆に今日の新しいアウトラインだと、内容別に整理されてるけど流れは途切れてしまうように感じる。

やまま なるほど。

Tak. やままさんがDynalistに書いていた「ブログを読めば訪問期を時系列に追うことはできるから、もっと書籍の醍醐味が感じられる構成の方がいいのでは」という話があるでしょう。

やまま ありました。

Tak. その話にも関係してくると思うんだけど、前回考えた仮アウトラインにもとづいて、やままさんがWordのアウトラインモードで記事を振り分けたアウトラインを、試しにちょっとだけ修正してみたのね(その様子は前回参照)。何を変えたかというと、内容は触らずに階層を一段浅くして、各記事のタイトルが第2階層に来るようにしただけ。やままさんの元のアウトラインはこれ。

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で、内容を変えずに階層を一段階浅くしてみたのがこれ。

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やまま ほんとだ。

Tak. 以前は2階層目だった「気になる期」とか「研究期」とかの見出しが、いちばん上の階層になっている。文章がカジュアルなのに階層が深いから形式的な構造感が出過ぎて、それで読みづらくなってる面があったんだけど、階層を一段浅くすると内容が同じなのに読み物感が出る。こうするとやままさんの「気になる期」、「研究期」、「親密期」の下に記事が順番に入っている流れが、よりしっくりくるんじゃないだろうか。

やまま なるほど、本はあまり階層を深くしない方がいいのか。

Tak. 仮アウトラインで全体の構造を考えるときは、構造自体をカタチにした方が考えやすいんだけど、実際の文章にするときはあまり階層を深くしすぎると読みにくくなる。特に読み物系の場合には、前へ前へと読者を運んでいくことが重要になるから、各階層の見出しで何度も分断されると流れを感じにくくなる。このあたりが、やままさんが気にしていた「書籍の醍醐味」という部分とも関わってくるんじゃないかと思う。
 もう少し理屈っぽい言い方をすると、構造を考えているときは、階層ごとの粒度は必ずしも揃わない。でも「文章」になると、階層に応じて役割(章とか節とか項とか)が決まってくる。つまり階層ごとの粒度が固定される。浅くした方のアウトラインは、粒度を固定していると言ってもいい。

やまま 整理したときに取捨選択が難しくなるなら、やっぱり流れを生かしておく方が気持ちは楽ですね。時系列版をイチから読んでいって、つまずくところを直していくのがいいかもしれない。コラム用に抜いた部分があるんですけど、これも一回完全に時系列に戻してみて、その上で齟齬が生じたら外に出す方がいいかもしれないですね。その方がやりやすい。

Tak. そう、時系列の流れを生かした中で、過剰すぎると感じるところを抜いていった方がいいと思う。

やまま シンプルに考えた方がすっきりしますね。完全に迷走してましたもん。どうやって分解・整理するかばっかり考えてました。

Tak. 無理に分解・整理しなきゃいけないわけじゃないから。ただし分解しようとすることで確認できる部分もある。たとえば今回なら、最初に時系列分類の方がいいと感じたのでそのまま進んじゃったけど、もしかしたら内容別分類の方がいいものになるんじゃないかという可能性が拭えなかった。でもやってみたら、あのブログ記事を素材として内容別分類を試みても行き詰まることがわかった。そういう試行錯誤は無駄じゃないと思う。

やまま 自分の中で労力をかけすぎようとしていたけれどもっとシンプルにやります。

Tak. 労力をかけたからいいものができるとはかぎらないけど、でも労力をかけて、いろいろ考えてるときに思いついたことが意外に生きてきたりもするし。やままさんの今回の整理は、コラムとか実用系情報に使うと生きるんじゃないかな。

やまま それをすごく負担に思ったり、やらなきゃ良かったみたいに思っちゃうからダメなんですね。

今後の方針

やまま それじゃあ、まずは浅くした時系列案で記事を振り分けて、そこに新しくコラムを入れて、できれば最後に店主インタビューを入れられたらいいかなと思っています。

Tak. 今回の場合はこれだけの文章がすでにあるから、少なくとも時系列の研究記録部分は文章を仕上げるフェイズに入っちゃってもいいと思う。読みながら明らかにいらないところを消していって、その消してるうちにこれはこっちにいった方がいいというところが出てきたらそれも反映して……みたいな感じで。コラムとか追加分は後からでもいいし。

やまま ここからのフェイズはもうアウトラインでというよりWordの通常モードで直していくということですよね。

(つづく)

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