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怪奇と狩猟のサービスデー連休

  人間、無性に『これが見たい!』と思う映画があったりするわけで。それがシネコンでかかってようがミニシアターだろうが、『見たい!』の欲求に抗うことができず、スケジュールを組んでしまうわけでして。今回は、レイトショーでしかも不定期上映の作品だからいけるかな? と思っていたら、うまい具合に時間が空いてしまった。しかもその日はサービスデーじゃないか、と夕飯を済ませてシネマート心斎橋へ。寒が戻ってきたような、いわゆる花冷えのする中、バイクを飛ばし、見たのが『悪魔の植物人間』! 

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1974年公開の映画史にも、ましてやホラー史にも残るかどうか、そんな微妙なバランスの映画が無性に見たくなったのです。21世紀、令和3年にそんな映画を劇場で見れるというミラクルを経験したかったのです。 

 久しぶりのアメ村、久しぶりのシネマート、何よりレイトショーも久しぶりなのでは。アジア映画に強いシネマートさんのロビーにはマ・ドンソクが守り神のように立っていました。

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 『悪魔の植物人間』は動物と植物の融合を試みる科学者の手によって食虫植物の能力を組み込まれた青年が……というマッドサイエンティストものの定番のようなお話。ホラー系の書籍でよく見たガスマスクみたいな顔の植物人間にやっと出会えたのです。しかし、この時期、日本では動植物と人間が合体した異形の者が毎週バッタ人間と戦っていたんですが。

 博士は助手の醜男リンチを使って次々と若者をさらっては、改造手術を行う。そして失敗作品はサーカスの見世物小屋に流すという非道な人物。ここで見世物小屋の団員たちが登場するのですが、小人やひげ女、ワニ女といった彼らは、人から笑われ、驚かれ楽しんでもらっていることに誇りを持っているのですが、博士の助手を務めあげたら醜い顔を元に戻すという約束をしているリンチはそんな彼らを『バケモノ』と蔑んでいる。自分は連中と違う、綺麗な姿に戻れると信じているリンチ。でも、娼婦に金を握らせ『愛してる』と言わせる姿が切ない。



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 海外版ポスターには彼が大きく扱われていることから、ひょっとしたらこの映画の主人公はあのガスマスク顔の植物人間ではなく、リンチなのでは? そして件の植物人間は後半あたりから登場、つくられた異形の宿命で、創造主に復讐を果たすのです。リンチは今まで馬鹿にしてきた団員たちに刺され、そしてヒロインは救出されるも……植物人間の彼女も、彼氏の変わり果てた姿を見て、意識不明になるという、救いようのない、悲しく切ないお話でした。

 高速度撮影による植物の成長映像と、不協和音や囁き声をミックスしたようなBGMが何とも不気味。

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 そして、再びマ・ドンソク。

 その翌日はTOHOシネマズのサービスデー。ならば一狩り行こうか、と『モンスターハンター』へ。

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 人気ゲームの映画化なんて、今では珍しくなくなりましたが、これはゲームの通りに多種多様なモンスターがぞろぞろ出てくるので、見ておかないと。ゲームはやったことないのですが、主人公を米軍の軍人にし、彼らが異世界、モンハンの世界に飛ばされるという映画オリジナルの設定にすることで、ゲーム未経験の観客も彼らと同じように世界観を徐々に理解する、という親切な設計。最新鋭の重火器を持った彼ら軍人も、怪獣の前にはただのやられ役に過ぎず、あっという間に隊長のミラ・ジョボビッチを除いて全滅。地元のハンター、トニージャーと揉めつつも最終的には協力し合って、元の世界に戻る手段を捜すミラジョボ。  

 重火器よりもこの世界の武器、つまりゲームで使用される道具でないと怪獣は倒せない。それもただやっつけるだけではない、これを倒すにはあれの毒が必要であるとか、ミラジョボが軍装からモンハン世界の防具、武器を身に着けて、この世界の住人になっていく、ゲームらしい展開。異世界での怪獣退治はファンタジーものっぽくもありますし、『キングコング』や『アトランティス七つの海底都市』のようなロストワールド的な冒険譚でもあります。クライマックスは現実世界でもバトルありで、米軍の戦車、航空機VS怪獣というサービスも。あって怪獣映画テイストが途端に濃くなっていくます。

 ミラジョボとトニー・ジャーが言葉が通じないという設定が面白い。言葉が通じないなら、肉体で見せるしかないのでひたすらアクション、余計な説明台詞は不必要。アクションと絵の力で分からせるという、これまた非常に分かりやすい構成。

 もう少し大物モンスターがいてもいいかも、と思ったけど、概ね満足な内容でした。ババコンガは出なかったけど。日本語吹き替えで見たけど、異世界語を話すトニージャーの声を松坂桃李が当てていた。俳優の吹き替えは何かと言われるけど、この人は『パディントン』でも本職の声優さんかと思うほどうまかった。でも今回は異世界語のみ。贅沢な吹替でした。

 世の流れと無関係に、平日連休を堪能した次第。しかし、また寒くなってきた。

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