23年と9/12の純情な感情
「壊れるほど」と言ってしまうとなんだか重いなと感じてしまいますが、「郷土愛?のようなもの」を感じるようになった自治体職員生活。23年と9/12(じゅうにぶんのきゅう)の純情な感情は空回りだけではなかったように思います。が、齢42歳。本当に自分が「自治体職員を辞める」という判断をするとは思ってもみませんでした。
小さな町
北海道森高等学校を卒業し、1998年に奉職した森町役場。
よく、講演や書き物なんかでは「小さな町」と表現することが多いのですが、当時はまだ人口も2万人を超え、実は今でも、北海道内では179市町村中50位以内に入る、それなりな町に分類される森町。(といっても約1万4千人なのですが)。
そんな町で僕が最初に携わった仕事は「町営住宅」の担当で、住宅には「昭和時代」を創り生きて来た方々が多かったものですから、いろいろな背景を抱えていたり、今以上に多様性に満ちた環境でユニークな方々が多かった印象があります。
外勤でその地区を歩いていると、「いいからご飯食べていきなさい」とか、酔っ払ったおっちゃんに「まず座っていけ」って言われたりとか、電球交換しただけなのに泣きながら手を握ってくるばあちゃんがいたり、「あんた見てると戦争で死んだ父さん(夫)思い出す」って言われたこともあったっけな(坊主刈だったからかw)。
なんか、町営住宅の担当っていうと、家賃を決めてー、整備をしてーという印象を持たれるかもしれませんが、当時はもっと、こう、「役場の中にある小さな役場」みたいな感じで、本当にいろんな出来事が起きました。
実際には5年程度の担当だったのですが、この社会人間もない多感な時期に、そこに住んでいたみなさんの「人生」に直接触れることができたおかげで、今の僕の考え方ができて来ているのかなあと感じます。
長い情報担当
その後、さまざまな要因が重なって(重なったのか?)退職するまで情報担当。一般的な公務員としてはめずらしく、かなり長い間同じ分野の仕事ができたことで、多くの学びがありました。
情報担当になってから半分以上は携わっていた「北海道自治体全体のICTに関する協議会」や、10年前に「はこだて未来大学と行った共同研究」のおかげで、これまで「森町と自治体」に閉ざされていた僕の知識・視野は一気に広がりを見せます。
これら経験で、強く感じたのは、田舎、だけではないかもしれませんが、自治体にある閉塞感です。
小規模な自治体というところは、いわゆる「職員の研鑽やキャリアパス」に関するアプローチがほとんど無く、「人材」かける予算が僅かです。このため、技術などを仕入れるための研修参加や出張も行けず、新しいなにかをやろうにも「試す・チャレンジする」ということがほぼできません。
もちろん「他にかけなければならない予算がある」という事情も十分に理解はしますが、まだこれから数年は人が介入しなければならないこともたくさんありますので、ここをおざなりにしてしまったことで、きっと現在の「ICT人材が不足している」ということも含めた「クリエイティブな人材の不足」という状況に陥ってしまったのかもしれません。
いいえ、本当はそういう人はいるはず。でも、「私それ、出来ます!」と声を出せ無い。それは職場が、新規制のある事の本質的な良し悪しの判断をすることが出来なくなってしまい、心のどこかで「チャレンジは悪」という環境になってしまったというのが正解かもしれません。
これは、「予算」という言葉を振りかざし、数十年かけつくり上げてきた、ある意味、負の遺産なのでは無いかなあと推測しているわけです。
そんな中、本当に運良く、人に恵まれ、さまざまな経験をさせてもらえた僕は、全国の自治体の状況を見たり、話を聞いたり、また「ハウモリ」というシビックテックっぽさのある活動を森町ではじめたことで、函館・札幌、そして日本全国で活動する方々と知り合うことができ、本当の意味での「街」と「ICT」について考えるようになっていきました。
このような経験や活動を通じて、「自分が想い描く世界が、現実生活の中でも実装できるのかもしれない。」と、実現に向けた自分のビジョンの解像度があがりはじめたからなのかもしれません。
町から街へ
もちろん自治体職員ですから、これまでも「町」については考えてはいました。が、どこか田舎町でICTを使うと言うのは非現実的な印象というか、昔図鑑で見た「空を飛ぶ車がある未来」のようなもので、この田舎町には実装できないものだろうというイメージを持っていました。
だって、さっき書いた町の人たちがホイホイとICTを使いこなせる?いやちょっと無理っぽくないですか?
これまでの僕ならばそこで諦めていた、というよりも、「それは森町を含めた田舎じゃ無理だよと」断言していたはずです。
でも、それって本当?
多くの学びを得て「普段の生活の中で少なくても自分の周りはこうあってほしい」という、自己中心な思いが発端ではありましたが、様々な活動を進めていくと
広範囲でアプローチすれば意外と現実的かも
と、視点を「町」から「街」へと変えていけば、実はICT実装であったとしても、意外とやれることが多いことに気がつき始めました。そう、何から何まで、僕は局所的にしか物事を見ることができていなかったと言うことです。
「街」は、その住んでいるいわゆる行政区域ではなく、自分の生活の範囲を僕は指しています。なので、僕にとっての街は、少なくとも「森町を中心とし、函館までの道のり」
「森町」という、毎朝の風景が素晴らしいこの町で、僕と家族がなんかいい感じで便利に暮らしていくには、この「街」に対して、なんらかのアプローチが必要になる。
うん、これは町役場だけでは無理だな
単独の町でできることの限界に気がつくと、より広い範囲で活動ができないかと考えるようになりますが、例えば僕が他の町役場に行って、突然「ここのポイント一緒に変えさせてもらえませんか?」なんていうのは不可能ですし、それ相応な時間と会話を重ねなければなりません。
そして、そんなことを考えていると、ずっと北海道の全体の自治体に関する取り組みに携わっていたこともあってか、おせっかいながら「だったら北海道全体がコッチの方向に向いていた方が、幸せになれる人が増えるんじゃないのかな?」などと思うようになって来ました。
ジレンマ
いろんな地域に行き、いろんな話をし、いろんなことをやるためには、「地方自治体職員という枠組み」がだんだんと窮屈に思えてきます。
でもそんな窮屈といっても、自分自身本当に行動してる?「言うほどいろんな活動を広域でしていた?」と改めて自分に問いかけてみても、実際は思うだけ・考えてるだけ・想像してるだけでそんなに行動していない。行動にうつせてない。
それで、地方自治体職員を辞めちゃうの!?
そう、本当は地方自治体職員は辞めずに広い活動ができるのが望みでした
もっと本音を言えば、僕は高校卒業して、社会人としては公務員しか経験していない。しかも森町のような田舎町ですから、「いいところに勤めたね」と言われるような安定した職業です。それなのに、「40代になり、これから」って時に辞めるって判断なかなかできないw
きっと「辞めて、もっと違う視点で街を見てみたい」という憧れはずっとあり、心の準備だけはずっと続けていたけど、そんな勇気、自分にあるなんて思ってもいなかったんですよね。
さらには、自治体職員だからこそ、自治体職員じゃないとできないことも多くあることに気がついていきます。
なので、さまざまな方法、例えば、月の半分役場職員やりながら、半分は無給でいいので自由に動かせてもらえないのか、とか、いろいろな道を模索はしたのですが、現行制度ではどうやらできないっぽい。
もう、やるならいましかねえ
人生は見切り発車でうまくいく
「え、本当に辞めんの?」
「うん、まあ、でも、あなたなら大丈夫よ」
妻に「仕事やめるわ」と言った時、あまりにもそっけない反応だったことを覚えています。内心はわかりませんが、そのおかげで勇気をもらったのも事実です。
(後日、妻からのメッセージをもらった時には、なんか、ほんと、頑張ろって思いましたが、それは別な機会にでもw)
昔から思い込みの激しい、でも、できれば石橋を叩いて、なんなら壊してから再構築して渡りたい人間なのです。が、ある一定まで悩むと悩むことがどうでも良くなってきて、「エイヤっ」で行動することがよくありました。でも、まさか、職業をそれで変えるとは思いもしませんでした。
ずっと役場の環境の中だけにいたらこうはならなかったかもしれません
「とりあえずやってみなよ」
いろんな人に出会い、いろんな考え方ができるようになり、自分の人生ってのは誰かにひかれたレールの上を走るもんなんかじゃなく、自分で道を創っていくもんだよな、今更ながら実感しております。
でも、やりたいことを考えれば公務員のままの方がよかったかもしれない
こんなこともきっと出てくるでしょう。でも、こう言う活動をしていると、誰かがどこかでみてくれていて、また地方自治体で働くチャンスは来るかもしれないし。違うアプローチの仕方も出てくるかもしれない。
正直いうと、本当に知らない環境に踏み込むのは不安しかありませんが、それと同時に同じ量の楽しみが湧いています。思っているだけで僕に何ができるのか、どんなことができるのかは未知数ですが、まずは一歩。とりあえず進めてみるのがいいのかもしれません。
踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。迷わず行けよ、行けばわかるさ。
そして今
ということで、現在の僕は、一般社団法人コード・フォー・ジャパンに所属しながら、自治体の後方支援や、また、別枠で道内の自治体の研究(?)なんかもスタートさせています。もう少し落ち着いたらその辺も詳しくお知らせできたらなと考えています。
なんか、ポエム書きすぎだなって急に思ってきて、最後はギュッとまとめた感じになりましたが、これからも皆様どうぞよろしくお願いします。
いろんなお話待ってます