中共ウイルスという呼び方について思うところ

たしかに原因を突き止めることは大事で、治療の手掛かりにつながるかもしれません。パンデミックの再発を防ぐ可能性もあります。しかし、出所をなすり付けあっている中国国内のもめごと、あるいは米中の争いは、歴史の繰り返しでしかないのではないでしょうか。

『ファクトフルネス』を読んだ人ならわかりますよね。梅毒という皮膚病は、日本ではその見た目から「梅毒」と名づけられ、ヨーロッパ諸国では隣国の名前を付け合うのが流行っていました。

気味の悪い見た目と耐えられないほどの痛みを引き起こすこの病気は、国によって呼び名が違っていた。ロシアではポーランド病と呼ばれ、ポーランドではドイツ病と呼ばれた。ドイツではフランス病。フランスではイタリア病。イタリアはやり返したかったのか、フランス病と呼んでいた。

第9章 犯人捜し本能より

ファクトフルネスは今こそ読まれるべきだし、読んだことがある人も、改めて読み返すべきです。この本は日本国内だけでも50万部が発行されています。仮に、この50万部がすべて読まれているとしたら、15歳以上の人口で考えて220人にひとりは読んでいる計算になり、15〜64歳に絞れば、150人にひとりは読んでいることになります。

もし周りに、パニックに陥っている人や、誰かを悪者扱いしている人がいたら、この本の読者は教えてあげられるでしょう。今や多くの人が、“犯人捜し本能”で盲目になっていることを。

中国やアメリカのなすりつけ合い、一部で言われている中共ウイルスという呼び方には、原因を特定して治療に役立てよう、という意思が感じられません。パニックに乗じて、政治的なパフォーマンスをしているに過ぎないでしょう。

『ファクトフルネス』の150人にひとりの読者なら、隣人に語りかけてあげられるはずです。大事なのは、一人ひとりが感染防止拡大に努めることで、治療法や、再発防止の手立ては政府機関や研究者に任せよう、われわれは、医療従事者の負担を少しでも減らすよう心がけていこう、と。


ありがとうございました。

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