見出し画像

ランニング中に考えて欲しいこと~走ることで生まれる脳内の変化から~

「ねぇ、ランニング中って何を考えているの?」
 そう聞かれたことはないでしょうか。
 もちろんタイムを狙った大会やポイント練習中は、ランニングのことばかり考えていたりします。ですが普段一人で、ペース走やジョグしているときに、皆さんは何を考えているでしょうか。

「う~ん、何も考えてないかな?」
「走り終わったら何を食べるかかな?」
そんな方が多いと思います。

 一人ジョグは、せっかく一人になれる「お一人様の時間」です。
 何を考えるのも自由なんですが、適当では少しもったいない気がします。
 理由とアドバイスなどなど、説明してゆきたいと思います。

1.走っているときの、脳の働きの変化

 走っている最中は、頭がすっきりして感じたり、周囲の景色が輝いて見える経験があると思います。これはランニングが、脳の働きやホルモンに影響を与えるからです。
 主だったところをみていきましょう。

 1-1.ランナーズハイ(エンドルフィン<カンナビノイド)

 まずはランニングというと、これを思い浮かべる方が多いと思います。ランナーズハイという言葉は、長くβエンドルフィンという脳内麻薬が原因と考えられていました。
 ですが2015年にラットを使った研究で、エンドルフィンを打ち消す物質を投与してもランナーズハイは現れることが分かりました。そしてカンナビノイドという物資(大麻に近いものです)をブロックすると、ランナーズハイは現れないので、これが原因であろうと推察しています。

 そして今年ドイツから、それを人間で行った研究が発表されました。45分間、中等度の強度のランニングをすると、幸せ感の増加して不安は減少した。エンドルフィンを遮断する薬剤を投与しても多幸感は変化なかったので、やはりカンナビノイドがその原因であるとしています。ちなみに、この変化はウォーキングではみられませんでした。

 程度の差はあるものの、ランニング中は不安が軽減し、多幸感が得られている状態です。ただカンナビノイドは耐性が生じると言われているので、日常的にランニングを行う人は、その恩恵はわずかかもしれません。

 1-2.抗うつホルモン(セロトニン)

 他によく知られた事実として、運動は抗うつ効果があるとされています。実際に日本のガイドラインでは軽症のうつ病に、英国のガイドラインでは軽症~中等症のうつ病に運動療法がすすめられていますが、これは主には神経伝達物質のセロトニンの効果と言われています。

 この抗うつ効果はランニングに限ったことではなく、ウォーキングでも出ると言われています。また今年1月の都立大学からの報告では、ランニングでも、低速のランニングではセロトニンの分泌が認められたものの、高速のランニングでは長時間走らないとセロトニンが分泌されなかったとのことです。また今年の立教大学のラットの研究では、好きに運動させるとセロトニンが分泌されるが、1時間限定で運動させるとセロトニンが出ない。強制的に運動させるとセロトニンが出ないばかりか不安行動が増すとのことです。
 ゆっくりと能動的に時間を気にせずに走るのが、セロトニンを分泌させるためにはよいのかもしれません

 実際にセロトニン自体は分泌されても、長時間体に残りません。ですが大阪大学の研究では、セロトニンが分泌されると、受容体を介して脳の海馬の神経新生がなされて抗うつ効果が出るともされています。なので抗うつ効果は走ったらハイ終了!ではありません。
 運動習慣のある人は、運動していないときも前向きで元気な訳です。

 1-3.前頭葉が活性化する

 これは文献検索でHITする数が少ないのですが、それを補って余りある方が申しております。そう、脳科学者の茂木先生です。

 昨年末発売のこの著書の中で、ウォーキングではなくランニングが脳の前頭葉を活性化するとあります。前頭葉の働きは「考える」「記憶する」「アイデアを出す」「感情をコントロールする」「判断する」「応用する」などの役割を担っています。ランニングにより前頭葉が活性化されると、記憶や思考を整理しやすくなり、精神のメンテナンスが図られる。まさに脳の栄養になると記しています。
 茂木先生は1日10km程度走られるとのことですが、2016年のドイツの報告では、前頭葉の働きは1時間あたりがピークでその後下がっていくとのことです。
 これは自分の考えですが、体が軽くなる走り始めてから20分後(セカンドウィンド)から、この文献にある1時間後くらいまでが考えるベストのタイミングではないでしょうか。

 1-4.気持ちを前向きに、そして脳を活性化するために

 ランナーズハイになるほど追い込む必要はありません。
 特に朝のセロトニンが高くなる頃に、自発的にゆっくりと1~2時間走るのがよいと思います。
 どうせ走るなら・・・とペースを上げてポイント練習にしたり、周囲からやらされては、考える力が半減します。
 体調や天候がよく、思わず走りに行きたい!!っていうときに、ゆっくり走りましょう。きっと気持ちが前向きになって素晴らしいアイデアが思い浮かぶことでしょう。普段とは違うコースや、旅先でのランニングもよいかもしれません。

2.ランニング中に考えて欲しいこと

 ゆっくりとしたランニングにより、セロトニンが分泌され、前頭葉が活性化する訳です。また、たまに走る人はカンナミノイドが多幸感の後押しをしてくれるかもしれません。特に一人で走っている最中は考えることに集中できますし、前向きな普段思いもよらないアイデアが浮かんでくることもあります。例えるならマンガもテレビもスマホもない仕事部屋で、ショパンの「英雄ポロネーズ」を聞きながら物事を考えられる状態なんです。
 そんな環境で、どんなことを考えるのがおすすめなのか、自分の考えで書いてみます。

 2-1.これからのこと

 普段だとどうしても現実とのシガラミが立ちきれず、また後ろ向きに変化の小さい事にまとまりがちです。
 前向きに、多少の変化や面倒は恐れずに物事を成して行きたいなら、ランニング中に考える事をおすすめします。
 自分の場合、本当に今の職場を辞めるのか、ランニングコーチをするのかなど、やりたくても一歩が踏み出せなかった事はランニング中に覚悟を決めた気がします。

 2-2.アイデアが思い浮かばなかったこと

 普段思い浮かばない事は、是非ランニング中に考えて下さい。
 普段とは違う環境で、カンナビノイトやセロトニンでハイになったメンタルだと、思わぬ楽しい発想が出来る事がと思います。

 医師というのはあまりアイデアが要らないのですが、普段使うギャグや、SNSのネタ、Noteの題材はランニング中に考える事が多いです。

 2-3.(変化のない日常を変えたい人は)やってみたいのに、勇気が出ない事

 日常が何も変化のない方、おそらく変化を起こす気持ちの前向きさと活力がなくなっている方が多いです。
 海外旅行に行ったり、婚活パーティーに参加したり、目当ての彼女を誘ったり、そんな計画を頭に浮かべて、ランニングが終わったらすぐにLineやポチりをしてみて下さい。
 日々が少しずつ変わっていくと思います。

3.まとめ

 走っている最中、どうも食べ物の事を考えている人が多い気がします。
ランニング終わりに、多幸感と空腹から、新しいコンビニスイーツや大盛ご飯とともにSNSにアップしている人が多い気がします。
 これではまた、Daigoさんにランニングモラルハザードと叫ばれてしまいます(笑)

走っているときにラーメンのことを考えたら、
頭の中のラーメンがどんどんコッテリして、トッピングが増えていきます。

走っているときにビールのことを考えたら、
頭の中のビールがどんどんと高級クラフトビールになっていきます(自分の場合)。

何も考えずに走り出すと、そんなことを考えてしまいます。
今日は何を考えながら走ろうか・・・
それを前もって決めておいて走るのがよいと思います。

何か新しいことを始めたいなぁ・・・その新しいこと
思い浮かばずに放置している仕事のアイデアのこと。
誘い方が分からずに、声を掛けられずにいる女性のこと。

そんなことを考えながら走ってください。
前向きホルモンのセロトニンと前頭葉が後押しして、
普段ならたどり着かない前向きなアイデアが思い浮かぶと思います。

ただ・・・何故か走り終わると忘れやすいので気を付けて下さい。
自分は走っている最中、立ち止まってメモアプリを立ち上げるのですが、光で眩しくて見にくい!!
誰か、走っている最中に考えたことをメモできるアプリ・・・つくって下さい!!(切実!)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?