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枠(フレーム)を考える 1話目

僕は今、映像や写真を作る人として、広告やエンターティメントの仕事をしています。その仕事の入り口になったのは、コンピューターグラフィックス(以下CG)を覚えたのがきっかけでした。

最初に僕が学生の時に買って勉強したCGソフトはShadeと言う国産ソフト。当時のShadeはタイムライン、時間軸、を持てなかったので、映像を作るソフトではなく、静止画を作れるソフト。感覚としては、まさにPC画面の中で彫刻をするような感じで、でも最終結果は写真になるという変換がコンピューターによって行われるものでした。

制作してる時、PC画面の中に無限の空間が広がっていて、3DCGのオブジェクトは画面の中には立体として存在してる。それを最終的にレンダリングと言われる、コンピューターでの演算作業をすると、1枚の画像が生成されます。

レンダリングをすることにより画像エフェクト、例えばカメラ的なボケやリフレクション、ライティングが計算されるので、情報量がリッチになり写真が完成したように見えるわけです。

現実世界に置き換えると、彫刻という立体物(3D)を写真(2D)に撮るようなもので、無限に広がった地平が、ある決まった枠(フレーム)に閉じ込められる。コンピューターがある意味で写真機だと考えれば、この変換は違和感ないものなのですが、せっかくのコンピューターなのに、空間情報としては劣化してることに勿体なさ、物足りなさを感じていました。

当時は、大学などのCG研究者の方々と仲良くしてもらってたので、遊びに行くたびにこの感覚の話をしていたのを覚えています。この世にスターウォーズのフォログラム的なものが登場しない限り、物足りなさを解消するのは難しいのではという話が毎度の結論。未来はパソコンの外に出てくることを目指してるとの話も聞きました。

その後CGを習いに行き、CGをつくるプロになり、海外産の高価なソフトを使うようになります。

これらのソフトは、ハリウッド映画の最新VFXやSFXを作るために開発されてるもので、タイムラインを持つことができるので映像を作れます。映像であっても、空間表現的には2次元になることは、静止画と変わらないけど、動きがあるので物語性のような違うベクトルを持つことができます。これはスタティクな彫刻的な考え方と違い、アニメに近い、物を動かすという”モーション”に目がいくので、空間に収まってる感じは感覚的にはマシになります。動きによってフレームの外を意識させることもできるし、上手く演出するとフレームが消えたように見せることができる。これが映像のマジック。割とこの効果は熱心に研究してました。

段々と枠と戦う話というか、枠自体が文章の中に立ち上がってきたので、映像と写真の持つ枠(フレーム)自体の話もしておかないと。

枠(フレーム)自身には、もっとも重要な要素の1つに比率の話があります。

起源は諸説ありますが、映像のフレームサイズは4:3から始まったと言っても大きな間違いはないです。これにはあのエジソンさんが深く関わってるんですが、撮影フィルムのサイズで決まった縦横比なので、映像も写真そんなに違いがないし、映像の中でもテレビと映画は同じ縦横比でした。

家庭にテレビが普及するにつれて、映画の興行収入が減っていったため、映画はテレビ相手の競争力を高めるため、より映像の幅を大きくして臨場感を高めるためにワイドスクリーンの画面比率を採用していきます。

ご自身の視野を客観的に観察してみてください。

上下に見える幅より、左右に見える幅の方が大きいと思います。目玉の稼働幅も左右の方が大きいはずです。目は横長なので当然です。映画はこの幅の違いを有効に利用することにしたわけです。ここから映画界は、様々なワイドスクリーンをどのように高画質にできるかという、カメラ機材開発も含めたイノベーションと密接に関係を持って、色んなフォーマットが乱立していくことになります。興味のある方は調べてみてください。これだけで面白い話が色々ありますので。

そして、この枠の縦横比は実際人間の心理に与える影響は大きく、映像業界がワイドスクリーンを発見したのは革新的なことだっただろうなと想像できます。残念ながら僕はまだ産まれてなかったので、当時の衝撃度はわからないけど。

しかし、この法則は現代、最新の物の中でも使われてたり、ビジュアルマジックとしては十分に通用します。

例えばインスタグラムとかで、#映画のような写真、#映画のようなシーンを、などのハッシュタグで、ワイドスクリーンサイズに写真を切り取ってたりするのが1部で流行ってたりします。ご自身の撮った写真で試してみたらきっと楽しいと思いますが、映画の縦横比率に写真を切り抜くだけで、何やらいきなり映画のワンシーンに見えてきたりしません?

そもそも、インスタグラムは、この縦横比のフォーマットを確信犯的に利用して流行ったサービスでしょう。正方形、1:1という、過去のアート写真文脈にあった象徴的なフォーマットを使い、ただの日常の記録に特別感を恣意的に与えることに成功しました。あなたの日常だって特別なのよ、的なことです。

長々と書きましたけど、このように画像にとって枠(フレーム)というのは、必要不可欠であり、かつ決して逃れられないものでもありました。

なので、CGという、パソコンの中に無限の空間があって、その中に何でも自由に作れるものなのに、最終結果は決まったフレームの上にしか出現できないのは、残念で違和感があることです。この拡張性をそのまま再現しようとすると、現在実用化されてる中で言うと、VRもしくは、それに類似する表現形態はもしかしたら一つの最適解方向なのかもしれませんが。

そんなとき、正確には忘れましたが15年以上前、フランスで、今で言うプロジェクションマッピングの原型みたいなのが登場するのです。

プロジェクションマッピングっていうのは、プロジェクターをスクリーンではなく、スクリーンの替わりに現実にあるオブジェクトに照射するというテクニックです。これは何やらフレームから解放されそうな予感がしました。

そしてこの表現を初めて見てから、数年に渡りプロジェクターというものに魅了されていく旅が始まりました。

長くなりましたので、その旅の内容はまた次回!

さあフレームを超え、自身の理想に近づいていけるのでしょうか。

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