お酒の話(ジン)
ジンとは
農作物(穀物・果物)由来のベースピリッツにジュニパーベリー(セイヨウネズの実)をボタニカルとして加えたアルコール度数37.5%以上の蒸留酒
元々はオランダ(旧ネーデルランド)にて薬酒(消炎剤/解熱剤)として作られたイエネーフェル(オランダ語:Jenever)が原型とされています。その後ライデン大学医学教授 シルヴィス博士がジュネヴァ(フランス語:Genievre)のレシピを開発したといわれている。
※ジュネヴァの言葉の出現記録や、酒税への改正など年代が合わない事実もあり、開発者ではないといわれる話もある。
ジンの定義
ジンの定義についてはEU法において大きく3分類に分けられています。
①ジン
・ジンとは、農作物を由来として作られたエタノールを元に、ジュニパ
ーベリーを加えて製造されるジュニパー風味の蒸留酒である。
・ジンのアルコール度数は37.5%以上でなければならない。
・ジンの製造にはジュニパーの風味が主体となるように、香気物質と
食品香料を使用することができる。
・完成後のジンに1Lあたり0.1g以下の(転化糖)砂糖を添加しない
場合に、”ジン”は”ドライ”という言葉で補完される。
②蒸留ジン
・蒸留ジンとは下記のように規定される。
(a)農作物を由来として精製された96%以上のアルコール度数を持つ
エタノールとともにジュニパーベリーと他の自然由来のボタニカルを
加えて蒸留されるジュニパー風味の蒸留酒である。ジュニパーの風味
が主体とされる。
(b)若しくは同等な組成や純度、及びアルコール度数の農作物由来の
エタノールを混合したもの。『ジン』の分類の項目で述べられたよう
な香気物質と食品香料、あるいはその両方を使用して蒸留ジンに
フレーバーを付けることができる。
・ジンのアルコール度数は37.5%以上でなければならない。
・農作物由来のエタノールにエッセンスや香料を加えるだけで製造され
たジンは、蒸留ジンとはみなされない。
・完成後のジンに1Lあたり0.1g以下の(転化糖)砂糖を添加しない
場合に、”蒸留ジン”は”ドライ”という言葉で補完される。
③ロンドン ドライ ジン
・ロンドンジンは下記の条件を満たした蒸留ジンのことを指す。
(a)農作物由来のエタノールのみを使用して製造されており、100%の
アルコール換算で、1hLあたり5g以下のメタノールの含有量である
必要がある。風味付けは、天然植物材料を使い農作物由来のエタノー
ルを蒸留してなされる。
(b)蒸留後の蒸留駅は70%以上のアルコールでなければならい。
(c)「記事5」の内容に沿った農作物由来のエタノールは添加可能であ
るが、100%のアルコール換算で、1hLあたり5g以下のメタノールの
含有量である必要がある。
※「記事5」はスピリッツにおける農作物由来のエタノールの定義
(d)着色はされない。
(e)完成後のジンに1Lあたり0.1g以下の(転化糖)砂糖を添加
しない。
(f)農作物由来のエタノール(ベーススピリッツと天然植物材料:
ボタニカル)
規定量以下の添加エタノール(規定量以下の佐藤、水以外は含ん
ではならい)
・ジンのアルコール度数は37.5%以上である必要がある。
・”ロンドンジン”は”ドライ”という言葉で補完される。
ジンの種類
①コンパウンドジン
別名:バスタブ・ジン。ボタニカルを再蒸留せずに浸漬法のみで風味を
抽出して作られる。
19世紀アメリカ 禁酒法時代に浴槽でボタニカルを漬け込み、密造酒が
作られたことが由来となっている。
②オールドトムジン
ドライ・ジンに対して重量の2%程度の砂糖が添加されたジン。
狂気のジン時代において、粗悪な原材料(大麦など)を味を誤魔化す
ための加糖されたものが主流になっており、高い課税など厳しい規制に
対して密造所が多く作られた。その際にキャプテン・ダドリー・ブラッ
ドストリートの店舗に架けられた木製看板に描かれた黒猫(Old Tom
Cat)に由来される。※Puss&Mewという方法で販売されていた。
※スピークイージーの走りともいわれる。
③フレーバージン
特定のボタニカルが強調されたジン
ジンの蒸留後に素材を漬け込んで風味づけされたジン
ドライ・ジンが主流になる前はフレーバー・ジンが一般的であった。
④ネイビースストレングスジン
アルコール度数57%以上のジン
18世紀イギリス海軍が船に火薬とジンを共に格納しており、船が揺れて
ジンが火薬にこぼれても火薬がしけらない度数が57度だったことが由来
とされている。
※54.5%以上でネイビースストレングスと呼ぶことも
※オーバープルーフ、ガンパウダージンと名付けられた銘柄もある。
⑤熟成ジン
蒸留後、樽などで熟成をさせたジン。
1861年「The Single Bottle Act」というイギリスの法改正によりボトルに
よる、輸送、販売が認められるまでは樽での輸送、保管、小売販売と
なり、結果として熟成ジンが主流となっていた。
・主な呼び方
エイジド・ジン
カスク・ジン
カスク・ストレングス・ジン
バレル・エイジド・ジン
レステッド・ジン
バレル・リザーブ・ジン
レゼルヴ(レゼルバ)
など
☆ジンのスタイル
・プレミアムジン
品質を重視し、上質なボタニカルや原料、特別な製法などを用いたジン
洗礼された味わいや複雑な香りなどが特徴。
1987年のボンベイサファイアの誕生や、2000年のタンカレーN.10 など
が先駆けとなる。
・クラフトジン
明確な定義はないが、一般的に小さな醸造所でこだわり、特徴
(ボタニカルや製法など)が強いジンを指す場合が多い。
2009年のシップスミス、2011年のMONKEY47などが先駆けとなる。
ジンの製法(特徴)
・スティーピング(浸漬)
ボタニカルをベーススピリッツに漬込み、風味付けをする工程
ベーススピリッツとボタニカルを再蒸留する前に浸漬をするのが一般的でその一連の工程は「スティーピング方式」と呼ばれる。
一方で再蒸留後の浸漬は一般的に「インフュージョン」や「マセレーション」と呼ばれる。特定のボタニカルの色や香りを強調される特徴があります。
※スロージンは完成したジンにスローベリーを漬け込んで作られるリキュールになります。
・ヴェイパーインヒュージョン
蒸留中に熱せられた蒸気の軌道に「ボタニカル・バスケット」を置き、蒸気がボタニカル・バスケットを通る際に風味付けを行う工程。
ボタニカルを熱しすぎないことで、苦みやえぐみを抑えた繊細で華やかな香り、風味がつけられる。
蒸留器も特殊なタイプものが用いられている
・カーターヘッド・スチル
・カーターヘッド・スチル型スチル
・ハイブリッド・スチル
・ベリー・チェンバー
など
・ノンチルフィルタード
冷却濾過工程(チルフィルタリング)を行っていない製品(ジン)を指す。ジンにおいてはチルフィルータド(冷却濾過を行っているもの)が多い。
濾過をされていない分、スピリッツ本来の風味が味わえる。
※日本酒でいう無濾過のものに近い。
ジン以外のお酒
ジュニパーベリーを用いた蒸留酒ではあるが、原産統制呼称(AOC)によってジンではないとされるお酒がいくつかあります。
①ジュネヴァ(Genever)
ジンの元祖 オランダ、ベルギー、フランス、ドイツの一部で作られる。
穀物(大麦麦芽など)を単式蒸留器(ポットスチル)で蒸留した
「モルトワイン」をベースにジュニパーベリーやボタニカルを加えて
作られる。
②シュタインヘイガー(Steinhager)
ドイツのシュタインハーゲンという村で作られる蒸留酒。
生のジュニパーベリーを発酵、蒸留しジュニパースピリッツをつくり、
グレーンスピリッツとブレンドして再蒸留して作られる。
ジュニパーベリーの風味が強く、トロっとした甘みがある。
昔ながらの陶器ボトルが用いられている。
③ジュニパーブランデー
欧州では多くのフルーツブランデーが作られるなかで、スロバキア、
チェコやセルビアなどではジュニパーを素材とするジュニパーブランデ
ーが作られています。
ジュニパースピリッツ100%や別のスピリッツとブレンドしたもの、
フルーツブランデーにジュニパーを漬け込んだものなど多岐にわたる。
・ボロビチカ(Borovicka)
中欧スロバキアの伝統蒸留酒。
ジュニパーベリーから抽出されたジュニパーオイルを水蒸気蒸留法で
蒸留してつくられる。
・クレコバック(Klekovaca)
セルビアの伝統酒ラキア(プラムやブドウを主原料としている)に
ジュニパーえお漬け込んで作られる。再蒸留しないため「コンパウン
ド・ジン」的な要素もある。
・ブリンジェベック(Brinjevec)
スロベキアのカルスト地方でつくられるスピリッツ(原産地呼称制度
でも制定されている)
製法自体は様々でジュニパーベリーの要素も様々になっている。
④ジュニパー・スピリッツ
ほぼジンのボタニカルと製造方法ではあるが、アルコール度数が基準に満たないスピリッツ。
MINUS33やビーフィーター・ライトなどが有名
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?