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ハンドボールで起こる怪我×レフェリング

どうも。アスレティックトレーナーの横川です。
今回は、私も普段から関わっているハンドボール競技での怪我を減らすために、あえてトレーニングなどの観点ではなく、別の視点から書いていこうと思います!

本日の視点は『レフェリング』。
ハンドボールは激しい接触が多い中で、その接触の基準というのは審判の方々の裁量に任されている部分がほとんどです。
レフェリングも傷害発生の要因になることがあります。
そんな着眼点で書かれた論文を紹介します↓↓

こちらの論文は2015年にカタールで行われた『ハンドボール男子世界選手権』にて、試合中に起こった怪我の受傷シーンを映像で確認し、審判のレフェリングを分析した研究になります。

方法としては、同大会で起こった怪我(チームスタッフからの報告:全122件)のうち、受傷シーンと判定がしっかり映っている37件を、ノルウェーハンドボール連盟に所属する国際審判員3名が映像上で再度判定し、実際の判定と照らし合わせるというもの。ちなみに判定のシーンは編集によって切り取られ、再判定時には当該プレーの判定はわからないようになっていました。

結果は、実際の判定では、ファウルなしが14件、フリースローが15件、2分間退場が8件でした。

実際の判定の概要(論文中の表より引用・改変)

また、実際の判定と後日の再判定を比較すると、確認した受傷シーン全37件中、判定が一致したのは14件、約38%となりました。

実際の判定と後日判定の数値(論文中の表より引用・改変)
※塗りつぶし部分は二者間で一致しているという意味

実に60%以上が実際の試合と再度の判定で異なりました。
細かく見ていくと、実際の判定でノーファウルとして扱われた受傷シーン14件においては、再判定の結果、イエローカードが2件・2分間退場が3件・レッドカードが1件と、うち6件が重めの罰則付きという判定をされました。

また軽微な罰則とするフリースローになった受傷シーン15件においては、11件がそれよりも重い罰則であると判定されました。

つまり実際の試合では、傷害が発生したプレーのうち、多くがノーファウルもしくはフリースローとして判定されていましたが、再度判定すると、イエローカード以上の罰則になり得るプレーだったと考えられます。

この背景には、当時のハンドボール競技の世界的なフィジカル向上による身体接触の激化があり、この世界選手権の翌年から、国際ハンドボール連盟は試合中の負傷選手に対しての規則を改変しました(負傷してメディカルスタッフの補助を受けた場合、3回の自チームの攻撃後に出場可能となる)。

現在、日本のハンドボール界もフィジカルの強化というものに力を入れているチームが出てきています。
もうしばらくすれば、日本国内のハンドボール競技での身体接触も激化し、この論文の背景と同じような状況になると私は考えてます。

ハンドボールという競技は、身体接触が醍醐味で、とても面白いスポーツである反面、誤った基準で身体接触を行うと、とても危険なスポーツになりかねません。

私はレフェリングにも様々な基準があって良いと思っています。
それが人が人を判定する面白さでもありますし、その試合ごとに異なる基準に対応するために選手のスキルも上がります。
ただ、危険度の高い接触プレーについては基準を明確にすべきですし、それが選手を守ることにも繋がると思います。
接触については、『ファイトさせること』と『危険なプレー』は紙一重であると同時に、その判断は非常に難しいと思います。

しかし、その難しい基準を作るためには、レフェリングもそうですが、そもそも日本のハンドボール界でもっと身体接触が起こらないと厳しいと思います。
そのためにもっと身体を作り、身体接触が上手にならないといけません。

私も、ハンドボールという競技に魅せられた1人として、『安全な接触方法』や『身体づくり』を今後も模索していきたいと思います!!

最後までお読みいただき、ありがとうございました🙇‍♂️
また次回の投稿もご覧ください!!


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