"Open your textbook to page..."の前に
こんにちは,かわむらです。
5月上旬,今の勤務校に来てから初めて教科書の長めのReadingに入ったのでその時の導入について書いてみます。
ただの思いつきでやってみただけですが,個人的に楽しかったので。
やったことは,教科書の本文についているタイトルから「どんなことが書いてある本文だと思う?」と問いかける。ただそれだけです。
"We are going to read a passage, but close your textbook."
本文を読み始める前に教科書を閉じてもらいます。
幸か不幸か「家で先に読んじゃお♪」みたいな生徒は多分居ませんでした。
上の画像にある"Mansfield - Yesterday and Today"が本文のタイトルです。
このブログを読んでくださっている方には簡単かもしれません。
イングランド中部のMansfieldという町の「過去」と「現在」についての文章です。
ただ,"Past and Present"とかではなく,"Yesterday and Today"となっています。
"Yesterday" =「昨日」,"Today" =「今日」と覚えていると,そう簡単に解釈できるものではありません。
上のスライドを見せて,「どういう話をこれから読むと思う?」と尋ねたところ,やはり「Mansfieldの昨日と今日」という答えが複数。でもそう答える生徒も「う〜ん…」と悩みながらの回答であり,「昨日と今日っていつ読むかによって変わっちゃうよね」と言ってみると「うんうん」と。自分の答えに対して違和感を抱ける,それだけでも言葉について考えるきっかけとして十分だと思います。
次に出たのは「Mansfieldの日常」という答え。なんでそう思ったのか聞いてみると,「昨日とか今日って,要するに最近ってことかなと」とのこと。
なるほど。
そう言われて数秒考えて以下のことに気付いたのでアドリブで板書して喋りました。
日本語で「昨日」と「今日」の頭文字を取った「昨今」という言葉は,「近頃」「最近」みたいな意味で使われているのです。
彼の発想は全くもって間違ったものではなかったです。それに咄嗟に気付けた時点で,「お,今日いけるかも」と自分の調子の良さに謎の自信を持ちました。
「"Yesterday"で『昨日』だけじゃなくて『過去』って言えるんだ,へぇ〜」って面白がってほしかっただけでしたが,その数十秒のやりとりから自分が新しいことを学んでいました。
語義の拡張性
僕は学部時代,卒論で「メタファー」について少し勉強したので,そこで「語義の拡張」的なことにも触れましたが,これは別に大学の学問の領域に留まらず,普通に中高の英語授業の中で当たり前に取り上げられるべきことだと思います。
もちろん「メタファー」とか「比喩」として扱わなくていいし,「語義の拡張」なんて言葉も当然不要でしょう。
ただ,「単語の意味って1個だけじゃなくて,文脈次第で色々変わるよね〜」みたいな単純なことからでいいと思います。
そういうことを当たり前のように毎回の授業の中で積み重ねることが,言葉について深く考えられる学習者を育て,そして英語を自然な日本語に訳せたり,表現を工夫することができたりする学習者を育てることにも繋がるだろうと思います。
おもしろき こともなき教科書を おもしろく
教科書自体はそんなに面白い本文でもないのかもしれないですが,長文のトピック自体でも文法でも,全然関係ないところでも,自分の心持ちによって面白く見えてくるのかもしれません。
長州藩士・高杉晋作の名言として知られる一句。
「おもしろき こともなき世を おもしろく」
これには,続き,つまり下の句があると言われています。
おもしろき こともなき世を おもしろく すみなすものは 心なりけり
下の句は高杉自身ではなく,彼を匿っていた野村望東尼という歌人が詠んだものとされていますが,「面白いこともないような世の中を面白くするのは,自分の心だ」的な解釈でいいかと思います。
「つまらないこの世の中を自分が面白くしてやろう!」みたいなYouTuber精神を掲げたものではなく,「自分の捉え方次第でつまらなく見えていたものも面白く見えるぞ」っていう感じですかね。
教科書が本当に面白くなるまでは,自分もこのマインドで頑張ろうかなと最近思います。
「なんか教科書も面白く見えてきたなぁ」って思えたら,その面白さを生徒と共有できる授業なんて絶対面白いだろうなぁ,と。
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