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“日本における貧血の実態:医療、生活の質、そして経済への影響”

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37849298/


 貧血、これは多くの日本人が抱える問題でありながら、その影響はしばしば見過ごされがちです。最近の研究により、日本国内で約15.1%の成人が貧血に悩まされており、その多くが(約50%)適切な治療を受けていないことが明らかになりました。これが、ただの健康問題ではなく、医療経済にも大きな影響を与えているのです。

 この研究は、50万人以上のデータを基にして貧血の有病率、治療状況、医療費、生活の質(QOL)、生産性損失を詳細に分析しています。貧血患者の医療費は、非貧血患者と比較して著しく高く、年間で3.32兆円もの過剰医療費が発生していると推定されています。これは、貧血による症状や合併症の管理に多くのリソースが必要であることを示しています。医療費が高くなるのは基本的に男性患者の貧血であることが多いです。理由としては男性は貧血になりにくい反面、貧血になった場合は消化管の海洋・癌や腎臓病等の医療費がかかる病気が原因となるからです。

 貧血の治療が不十分である理由の一つとして、貧血の症状が徐々に進行し、発見が遅れがちであることがあります。さらに、医師による貧血の重要性の認識不足や、貧血治療に対する一般的なガイドラインの欠如も問題とされています。これにより、貧血は適切に診断されず、必要な治療を受けられない患者が後を絶ちません。貧血に関しては採血検査にて比較的簡単に評価が出来ます。ほとんどが生殖可能年齢の女性における鉄欠乏性貧血が原因です。最近の処方箋で処方できる鉄剤も進化してきており以前は腹部不快感や便秘等の症状がありましたが最近はそういった症状もかなり軽減出来ていると思います。鉄材サプリは種類も多く何が良いのかは私には良くわかりません。

 貧血患者の生活の質もまた大きな影響を受けています。研究では、貧血患者のQOLが明らかに低下しており、これが仕事や日常生活の質に悪影響を及ぼしていることが示されました。具体的には、EQ-5Dスコアを用いた分析で、貧血患者は非貧血患者と比べて低いQOLを示しています。さらに、貧血による生産性損失は年間約1.13兆円にも上ると報告されており、これが企業や国家の経済に与える影響は計り知れません。だるい(倦怠感)ややる気が出ない等の何とも言えない症状は鉄欠乏状態(貧血にはなっていなくても)で生じることがあるので一度クリニックで採血検査を受けることをおすすめします。もちろん他の原因(甲状腺疾患やビタミンD不足等)でも生じることもあります。

 このような状況を改善するためには、貧血に対する一般の認識を高め、早期発見と治療の普及が急務です。健康診断の機会を増やし、特に生殖年齢の女性や高齢者に対して、定期的なヘモグロビンチェック・鉄の貯蔵量のチェックをすることが効果的です。また、医療提供者に対する貧血治療の教育を強化し、治療ガイドラインを明確にすることも、この問題に対処するために重要です。

 日本における貧血の問題は、ただの健康問題ではなく、社会全体に及ぼす影響が深刻であることを認識する必要があります。適切な対策を講じることで、医療費の削減はもちろんのこと、患者の生活の質の向上、そして国全体の生産性向上につながる可能性があります。このためには、国や医療機関、そして私たち一人一人が貧血に対する意識を高め、予防と治療に努めることが求められています。

 貧血を解決することは、単に健康を回復させる以上の意味を持ちます。それは社会全体の福祉を向上させ、経済的な負担を軽減するステップとなり得るのです。私たちが今、行動を起こすことで、未来の健康な社会の実現が見えてくるでしょう。貧血に対する正しい理解と適切な対応が、それを可能にします。

 この研究は、貧血に関連する課題を明らかにし、解決策を模索するための重要な一歩となりました。今後も継続的な研究と公衆衛生の取り組みが必要ですが、私たち一人一人が健康に対する意識を高めることが、その鍵となるでしょう。


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