見出し画像

ネズラ1964の音楽 3

音楽を担当した映画「ネズラ1964」、いよいよ一般公開です!
本日1月16日から22日まで池袋HUMAXシネマズで上映されます。

ネズラ展」も秋葉原で同時開催されます。

今回の一般公開にあたり、予告動画が2編公開されています。

いわゆるジャズ風の音楽ですが、ジャズ風は2曲、早いものと遅いものを用意しました。こちらは遅い方です。一応ad libitumと書いて奏者に自由な即興を任せるつもりでしたが、実際はほぼ楽譜通り演奏しています。イングリッシュ・ホルンのソロがある前半部分とホルンのソロがある後半部分に分かれますが、映画本編で採用されたのは後半部分です。

当初は実験的に、ホルンにプランジャーミュートを使ってもらうつもりでいました。プランジャーとはトイレのスッポンの意味で、ジャズではトランペットやトロンボーンがよく用います。特にこのようなスローテンポのクールジャズの風味を出すには欠かせないものです。トランペットやトロンボーンは楽器専用のプランジャーミュートが開発されていて、奏者に言えばそれを持ってきてもらえますが、ホルンという楽器は基本的にはストレートミュートしかないので、実際には百円ショップで本物のトイレのスッポンを買ってきました。そのままの状態だと息が抜けないので、中央部にハサミの片方の刃を刺して穴を開けました。
ところがホルンだと、普段ベルに手を入れて音程の調整をするものが、ミュートの分だけ管長が若干長くなり、また息圧も変わってくるため、音程が非常に取りにくくなります。音程が平均律から外れるのもトランペットのクールジャズでは風味の一つなのですが、音程が外れてやりにくいということだったので、何度か試した挙げ句、最終的にはミュートなしで録音したトラックを採用しました。
別の曲(前半の動物園シーン)では、プランジャーミュートを用いて単音でプアンプアンと合いの手を入れるものがあります。そちらは問題なく収録し、また音色の変化による効果もうまく出ています。

もう一つはこれ

こちらは、実は映画本編では未使用の音源です。今回は先録り方式で、音楽は映像が出来上がるより先に台本を読みながら作曲しました。そこで、使うか使わないかは問わず、多分必要になるのではないかと思われる場面を想定した音楽をいくつか書いています。これは本編では怪獣のテーマとして使われる、ネズラマーチの前奏部分を変奏したものです。最初にピアノがDの低音を連打するところは、録音当日になって付け足しました。その音をカットしてもいいし、ループで伸ばしても良いし、尺の調整が柔軟にできるからです。
このような短い音楽はブリッジと呼ばれ、あるシーンの最後から流し始めて次のシーンへと繋がる、あるいは次のシーンの冒頭まで音楽をつなげるための場面転換に用いられることが多いです。今回はたくさんのブリッジを用意しましたが、ブリッジとして使われる場面がほとんどなかったため、未使用に終わった楽曲も少なからずあります。ブリッジを2つつなげて一つの場面の音楽とした箇所もあります(ナガノがタバコを吸う哀愁的な場面)。

難しかったのは、そのような「哀愁的な」音楽の場合は、どうしても演奏の音量が小さくなるため、逆にミキシングの際に音量を上げてしまうと、やりすぎてうるさくなってしまいます。セリフもなく背景音も静かではあるが若干ガサゴソという音は欲しいし、前のシーンとのつながりも考えて音量を決めるのが大変でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?