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法人SaaSのUXデザインは「真実の瞬間」に立ち会うことから始まる

こんにちは、久保 拓也(@takuya__kubo)です。
年の瀬、いかがお過ごしですか? 
僕は新たな組織体制にてんやわんやしています笑

「プロダクトマネジメント」という新たな領域へのチャレンジにあたり、日々のインプット量が誇張なしに2倍になり、その代わり睡眠時間が削れるという正(?)のフィードバックループが回っています。
(バランス型ループなのでどこかで収斂すると信じています笑)

さて、今回は弊社が「プロダクトドリブンな組織」を実現していくにあたって重要だと考えている「UX構築」について記事を起こしたいと思います。

UXとはそもそも何か?

こちらはご存知の方も多いと思うので、再確認です。
基本的には、「製品・サービス」を通じ、ユーザーが得る「利用体験」を指します。

定義は様々な場所で試みられていますが、専門書を読んでも(凡そ同一の概念にはなっているが)、「唯一の定義」というのはないように感じます。

ここでは、下記の通りgoodpatchさんの定義を借りたいと思います。

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UX(User Experience)とは、「ユーザーの体験」と訳すことができます。もう少し説明を加えると「主観的・時間的・状況的側面を含むユーザーの体験」と言えます。

引用元:UXデザイナーが理解しておきたい6つのキーワード
https://goodpatch.com/blog/about-ux/


UXデザインのスコープは「経営全体」

前項の通り、定義が大事であるということも踏まえ、まずは「UXデザイン」はどこまでがスコープとなるのかを定義しておきます。

僕自身は、UXは「利用体験」が主であるものの、その体験は「経営全体」から影響を受けているものだと考えています。

「ユーザー体験」が製品・サービスの利便性だけではなく、ブランドが発するメッセージや、購買過程での接客など一連の体験に依拠することは、よくよく語られていますね。

例えば、「自動車の購入を検討しているユーザー」がいたとします。そのユーザーは、ネットで情報収集をしたり、知人に話を聴いたり、実際に販売店に足を運び、試乗する中で購入する自動車を決めます。
(余談ですが、過去は複数回販売店を訪れるユーザーが多かったものの、今では平均1回強程度らしいですね)

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この様に一見「製品やサービスを中心とした一連の体験」がUXのスコープと見えます。

しかし、その裏側には、物を作る前提の経営戦略や組織体制、商品コンセプトや人間設計(UI)とあらゆるものがあり、これら経営に関連するすべての要素・活動が「体験」を生んでおりUXのスコープと言えます。

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実際、僕が前職で担当していた自動車企業でも、企業ごとに特徴が全く異なりました。

研究開発への投資の仕方、購買手法の違い、基幹部品の共通化への考え方、品質管理部署へのリソースの投じ方、デジタルマーケの考え方、販売チャネルと完全に資本関係があるか、その力関係が対等かなど。

機密情報なので詳細は割愛するのですが、特に、最後の販路の持ち方≒ユーザーとの接点のところだけでも、各社で投資方針は全く異なります。

この様に、UXは企業各自の経営戦略や競争優位を成立させる様々な組織から生まれており、合理性を伴って今の形にバランスしています。

そこには「強み≒ゲイン」も「弱み≒ペイン」も存在しており、何か一つの体験を変えるには「経営システム全体」で変えに行く必要があると思っています。

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法人SaaSはユーザーの「ペイン」を解消し、「ゲイン」を伸長させるもの

今回タイトルに置いた、「法人SaaS」の本質的な価値であり、目指すUX(ユーザー体験)は、「ユーザー(利用企業)のペインを解消し、ゲインを強化・促進すること」だと考えています。
(もちろんホリゾンタルSaaS、バーティカルSaaSによって異なりますが、ある業務における「ペイン解消・ゲイン強化」ということに変わりはない)

個人的には、昨今次々に生まれている「バーティカルSaaS」は業界に特化することで「ペインが見えやすい」という本質を突いた形になっていると思います。

弊社はサービスEC領域で事業を行っていますが、「サービス領域全体」でこのSaaSを提供しようとすると、範囲が広すぎてユーザーのペインが見えにくいということがあります。
そこでドメインを「ハウスクリーニング領域」に特化させることで、ユーザーのペインの解像度が上げることが出来ています。

一方、そういった「業界横断のペイン」を解消することだけに意識を集中させると、業界全体の標準化や水準を向上することはできるものの、同質化も生むこととなります。

ペインを解消すると同時に、ユーザー(弊社でいうと職人)が自身の強みや競争性を発揮する「ゲイン」となるポイントを「遊び」として持たせることが大事だと考えています。

ユーザーが現在提供している「ゲイン」と直面している「ペイン」を押さえ、これらを改善する要素・体験を如何にプロダクトに落とし込むか、これがSaaSにおける「UXデザイン」だと捉えています。

バーティカルSaaSに取り組む各社は、バリュープロポジションキャンバスを作るのも一苦労ではないかと。(弊社もです)

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すべては「真実の瞬間」を捉えることから始まる

そのユーザー解像度を高めていく取組みは、「真実の瞬間」を目にするところからスタートすると考えています。

「真実の瞬間」とは?
 顧客が企業の価値判断をする瞬間のことである。赤字体質に陥っていたスカンジナビア航空をわずか1年で再建に導いたヤン・カールソンにより提唱された。

ここでいう「真実の瞬間」は少し意訳的に使っており、ある企業が、「どんな風にモノづくりをしているのか」、「ユーザーにどんな形でものを提供しているのか」の「業務実態」としています。

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ユーザーの実態を捉える「ユーザー観察」は非常に重要なことは改めて言うまでもありませんが、「真実の瞬間」を捉えることは単なる「ペイン発見」にとどまりません。先ほど話した「ゲイン発見」とその背景を捉えることにあります。

【取り組むこと】
 ①各ビジネスプロセスごとにユーザー観察
 ②ユーザーの各レイヤー(現場—ミドル—経営陣)のインタビュー
 ③「商品・サービスの利用ユーザー(顧客の顧客)」のインタビュー
 ④過去の経営の意思決定やエポックな出来事の調査と時系列での整理
 ⑤上記を競合と比較(セグメントごと)


①~⑤を実行する中で、企業の「ゲイン」とその背景となる「経営システム」を捉えていくことが可能となります。

これは僕がリクルートのHR部門で学んだ考え方、手法の一部であり、過去の諸先輩方が築き上げていた技法になります。

顧客実態を得ることの重要性は言わずもがなですが、そのリアリティを得るためにもセールスやカスタマーサクセスの顧客接点部隊は必要であり、弊社も惜しまず投資を続けています。


ここまでのことをまとめると下記になります

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ここまでお読みくださりありがとうございます。

弊社では、上記のような考え方に基づいて法人SaaSのUXデザインを進めていこうと思っております

今後、我々は益々&より一層、「ユーザーの経営システムに影響を与えるような体験を届けるプロダクト」をデザインしていくのですが、まだまだ仲間が足りません。

エンジニア、デザイナー、PdMなどなど多くの仲間を募集しておりますので、興味があられましたら是非DMリクルーティングサイトからご連絡ください。



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