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本の紹介68冊目 『感染症と文明』

こんにちは、TAKUです。

今日紹介するのは、
山本太郎さんの著書『感染症と文明』です。

この本は、
人類史における文明の盛衰に感染症が果たしてきた役割を、いくつかのエピソードとともに綴った1冊です。

それでは、紹介していきます。

【著者の山本太郎さんについて】

著者は医師であり、
博士(医学、国際保健学)です。

1990年に長崎大学医学部を卒業後、
京都大学医学研究科助教授、
外務省国際協力局
を経て長崎大学熱帯医学研究所教授を担当しました。

専門は国際保健学と熱帯感染症学であり、
アフリカ、ハイチなどで感染症対策に従事しています。

【島の流行が語ること】

ここでは、
感染症疫学を考察する上での例として、
歴史上で最初の島における麻疹(はしか)の流行について事実を紹介しています。

それは、
1846年にノルウエーとアイスランドに
挟まれたデンマーク領のフェロー諸島での
麻疹流行のことです。

この流行の知らせを受けて、
デンマーク政府は医師を派遣しました。

当時の記録によると、
島に麻疹を持ち込んだのは、
6月4日ベストマンハウン村に立ち寄った
捕鯨船の10名の男
でした。

6月18日には10名全員に麻疹の症状が現れます。

その約2週間後から、
ベストマンハウン村住民に発疹が現れました。

42の村での調査で、

・接触から症状が出るまでの潜伏期間は10-12日
・発疹が出る2日前には患者が感染性を持つこと 
・隔離が流行防止として有効ではないこと
・フェラー諸島で起こった最後の麻疹流行は、
65年前の1781年でその時は多くの死者を出した

など、
このようなことを明らかにしました。

ここで、
麻疹、おたふくかぜ、風疹などは、
「小児感染症」と言われています。

これらが、
少児だけではなく成人を含めた社会全体に
「大きな悲劇」破壊的な影響を与えて、
歴史を繰り返してきました。

本書では、

病原体の根絶はマグマを溜め込んだ地殻が
次に起こる爆発の瞬間を待つように、
将来起こるであろう大きな悲劇を準備するに
すぎない。
根絶は根本的な解決策とはなりえない。
病原体との共生が必要だ。

と著者は語られています。

【最初の感染症について】

本書で感染症は、
文明の成立によってもたらされと言います。

約1000万年前の農耕の開始により、
定住化が起こって、食料に余力が生まれて社会機構は大型化していきました。

今から約5000年前に  
メソポタミアに都市国家が成立し、 
急性感染症が定期的に流行するために必要なだけの人口規模が初めて成立したことで、
麻疹(はしか)が誕生しました。

その後も次々と生まれた大都市が、
感染症のゆりかごとしての機能を果たすことに
なっていきます。

【ウイルスの適応段階について】

ウイルスのように、
宿主の存在なしでは生存できない病原体の場合、病原性は変化していきます。

これがウイルスのヒトへの適応段階であり、
5つの段階に分けて考えられます。

1. 家畜や獣から傷を通して感染するがヒトからヒトへの感染は見られない段階
2.ヒトからヒトへの感染は起こるが感染効率が低いためにやがて流行は終息に向かう段階
3.ヒトへの適応を果たし定期的な流行を引き起こす段階
4.ヒトに適応してヒトの中でしか存在できない段階
5.ヒトに過度に適応したために広を取り巻く環境や生活の変化に適応できずヒト社会から消えていく段階

これらの段階があり、
感染症は新たに出現するものと
社会から消えていくものの動的平衡状態にあり、種類や構成は時代や社会とともに常に変化していくことを学ぶことができました。

【最後に】

本書は、人類史における文明の盛衰に
感染症が果たしてきた役割を
エピソードを交えて綴った1冊です。

ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!

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