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本の紹介19冊目 『ハイ・ライズ』

今回私が紹介するのは、J・G・バラードさんの著書『ハイ・ライズ』です。

本書は、イギリス作家の巨匠であるJ・G・バラードさんが書いた、イギリス・ロンドンの超大型マンションが舞台のSF小説です。

1975年、ロンドン中心部に、知的専門職の人々が暮らすような新築の40階建の巨大住宅が建設されました。

ある夜に起こった停電をきっかけとして、建物内の住民同士で色んな出来事が起こっていく様子を書かれています。


【著者のJ・G・バラードさんについて】

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著者は英国を代表する作家であり、生まれは上海で、16歳の時に英国に帰国しました。

1970年代は、ニューウェーブと呼ばれ、文学的、芸術的な形式と内容において実験的な作品が生み出されました。

著者は、その運動を主導した一人であり、
「SFは外宇宙より内宇宙をめざすべきだ」と主張していました。

つまり、宇宙や星々などの外宇宙ではなく、
人間自身の内部に広がる、未だ解き明かされていない未知の領域をさすのが「内宇宙」です。

これによって、当時SFを縛っていた様々な制約(例えば性的な描写をしないなど)を打破し、沈滞していたSF界に再び自由と活気をもたらしました。

【本書のストーリーについて】

本書は1975年、イギリス・ロンドンに超高層マンションが建設され、そこが舞台です。

超高層マンション、ハイ・ライズを作ったのは、有名な建築家アンソニー・ロイヤルで、ロイヤルは最上階40階に住んでいます。

本書の主人公である、精神科医のロバート・ラングは、新たに環境を変えるために、このマンションの25階に引越しすることを決めました。

このマンションでは、たまに全フロアの住民が自由参加できるパーティーが開かれます。 

そこには、表向きはみな友好的な態度を取っていましたが、歴然とした格差が生じていました。

ラングがロイヤルにパーティーへ誘われたある夜、低層階で数時間の停電が起こります。

その時放置された低層階の住民は、腹を立てました。

そこで、プールは低層階の住民に占拠されて閉鎖し、上層階の女優・ジェーンのが溺愛していた愛犬が溺死させられました。

さらに停電と断水がきっかけとなり、今まで表面に出なかった「上層階と下層階の二極化」は激化していきます。

下層階は、わずかな財産を持ち寄って、炊き出しを行なうエリアに子どもを預けます。

上層階は、40階にあるロイヤル夫妻のペントハウスに集まり、本能的に快楽に溺れていました。

そこで、下層階の元ドキュメンタリーカメラマンのワイルダーが、このマンション内部で起きている惨状をカメラに収め、ドキュメント番組として仕上げようと考えました。

ワイルダーは下層階を撮影し、その後上層階へも潜入して撮影していきます。

上層階のメンバーは、医者のラングに「ワイルダーを手術してロボトミー化しろ(前頭葉を切除して、精神的に落ち着かせること)」と命令します。

ラングは上層部のメンバーに会い、このマンションで最も常識をわきまえているのはワイルダーだと訴えました。

しかし問題を鎮静化したい上層部のメンバーは怒り、ラングを裏切り者呼ばわりして高層マンションのベランダから落とそうとします。

最終的に、ワイルダーはロイヤルに突撃し、銃で撃ちます。

(ワイルダーはその後、上層階の女性連にめった刺しにされて息絶えました)

本書は、人間社会のヒエラルキーを表現しており、かつニューウェーブ(グロや性的な描写)などが多いので、人間の本能的なカオスな部分を表現しています。

『ハイ・ライズ』は映画化もされているので、ぜひこちらもご覧頂ければ、よりイメージ化できるかと思います!

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ぜひ、読んでみてはいかがでしょうか!

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