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【読書感想】”愛すべき”バカな店長が再び戻ってきた!:早見和真「新! 店長がバカすぎて」

⭐︎本レビューが「谷原効果」を産まないことを祈る。

待望の続編

2020年本屋大賞にノミネートをされた同作(シリーズ?)の1冊目、「店長がバカすぎて」。私が当時読んでから2年半ほど経ちます。書店で購入するときにあらすじをざっくり見て「大賞取れるんじゃないか?」と思って購入して、まぁその時は惜しくも大賞は別の著者の作品だったわけですが、面白かったので何度か読み返し、文庫化されたときにもそれを購入しました。「谷原効果」という言葉は、すっかり自分の中に定着して、仲間内でもたまに使います。(「谷原効果」がいかなるものであるかについては、前作を御覧ください。)
その文庫の巻末に書かれていた続編発売の文言

★この続きとなる『新! 店長がバカすぎて』は(中略)二二年夏に発売予定です。
早見和真「店長がバカすぎて」文庫版巻末より

を頼りに、この夏が来るのを心待ちにしていましたが、ようやく告知通りに続編である今作 早見和真「新! 店長がバカすぎて」が発売となりました!

こんな本!

あらすじ

前作を読まれていない方には半ばネタバレになりかねませんのでざっくりとですが、
・薄給、多忙な書店員の谷口京子が、バカな店長に振り回される物語
です。

ジャンル

作品ジャンルは
・文芸作品
・> お仕事モノ
・> コメディ
です。
また装丁からもわかることで、前作を私が購入するきかっけにもなっている「書店モノ」というものも確実に存在すると思っているので、一応示しておきます。

ボリューム

単行本300ページ+α程度で全6章(話)構成なので、1日1章読んで6日、1日2章読んで3日で完読できます。文体も地の文が一人称視点で比較的軽量なので、スラスラ読めるかと思います。

感想!

続編なので、内容やキャラクター同士の関係を把握するためにも、前作は必読です。
前作は「こんな上司いるよな」とか「こんなお客さんいるよな」とか、書店という場所に限らず、あるいは職種によらず、仕事上で出会う様々な「バカ」に触れられていました。今作もそんな「バカ」たちが何人か登場しますが、前作に比べるとその登場は少し少ない?ような印象です。また、コメディ要素があったり、アナグラムによる小さなミステリ要素はまだ健在です。
なぜ私がこの本が好きなのかというと、たまに

基本的には代わり映えのしない毎日を嘆いている人生だ。麻起きて、出社して、魂をすり減らして、退社する。——(以下略)
早見和真「新! 店長がバカすぎて」第四話より

といったように、働く自分に突き刺さる言葉がちょこちょこ登場するからです。私たちそれぞれが置かれている状況・バックグラウンドは様々でしょうが、働いた経験があればどこかに突き刺さる、そんな文言が時々思い出したように寄り添ってくれる。その言葉を書いた人がこの世界のどこかに確かにいて、その言葉に共感する人がまたどこかにいる。自分と同じように職場という戦場で戦っている人たちがいることがわかる。そのことに、また明日から忙しい仕事を乗り切るためのパワーをもらえるからこそ、私はこの本が好きです。
また、改めて書店が自分の住む街にあるということ、そこで「魂をすり減らして」働いている人がいるということに感謝です。

こんな人にオススメ!

主人公の谷原京子は前作では契約社員でしたが、今作では正社員になっています。そんな自分のレベルアップを経験したことのある人にも、そうでない人にも、アルバイトでもいいから働いた経験がある人には、ぜひ読んでもらいたい一冊です。
また、田中海帆氏による装画がかわいいのも、ポイントが高いです。


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