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プロポーズ大作戦的な話。

プロポーズ大作戦。

この言葉を聞いて、頭に浮かぶのはおそらく山Pと長澤まさみだと思う。

桑田佳祐の『明日晴れるかな』が主題歌の大ヒットドラマ『プロポーズ大作戦』。幼馴染が故に、ずっと想いを伝えることができなかった主人公山Pが、過去に戻り人生をやり直すという話だ。
結果的に、過去に戻るのではなく、”今”をどう生きるのか、どう想いを伝えるのかが大事なのだと、実に考えさせてくれる素晴らしいドラマだった。

「急にこんな昔のドラマの話をしてどうしたんだ」と思う方も非常に多いと思う。理由は一つ。僕も以前、想いを寄せる人にアタックしたことがあるからだ。

ほとんどの友人に話していないこの話を、僕はnoteに書いてみようと思う。



■あっ、俺まだ好きなんだ。

高校生の頃、僕には彼女がいた。中学生の頃から付き合っている彼女、3年ぐらい付き合っていた。

だけど、別れた。

喧嘩もなく、嫌いでもなく、むしろ好きだった。

だけど、別れた。

自分のサッカーを優先したからだ。

当時、僕は本気でサッカーと向き合っていた。毎日毎日死にそうな思いをしながらサッカーと向き合っていた。その経験は今でも一生の財産になったことは間違いない。
ただ、サッカーと恋愛をどうしても両立することができなかった僕は、彼女ではなくサッカーを取った。今思えば、もう少し考えてから決断すれば良かったと思うところもあります。

それから高校サッカーを引退し、大学に進学。特に何かやりたいことがあったわけでもなく、何となく怠惰な日々を送っていた僕は、当然恋愛などはしていない。

ある日、高校の同期(以下:S)と飲みに行くことになった。その時に、「バイト先の子も来ていいか」と言われたので、二つ返事で「いいよ」と言った。3人で呑んで、いろんな話をしていたら、信じがたいことが起きた。それは、そのバイト先の子(以下:Kさん)はなんと元カノと同じ高校だったのだ。しかも登下校も一緒にしていたぐらい仲が良かったのだとか…….信じ難い。
「え、M(元カノ)の元カレなの!?」と驚かれた。話を聞くとその高校でも結構人気者だったのだとか(なんか嬉しい)。
「だけど。Mにはもう新しい彼氏がいるよ」と言われた。言われる前から知っていた。新しい彼氏がいることを。だから別に何とも思っていなかった。だけど、こんなことが起きてから、意外と頭から離れないことが多かった。別れてから別に連絡を取ることもなかったし、会うことももちろんなかった。それでも頭の中に浮かんでくるのは何故なのか、非常に困った。

そんな偶然にも元カノが話題に出てきた数日後、元カノの誕生日がやってきた。連絡をする気も全くなかったけど、「まぁ誕生日ぐらいは良いか」と思い、Kさんに「Mに誕生日おめでとうって伝えておいて」と言った。LINEは持ってないけど、Instagramは交換していた元カノM。だけど、自分で連絡する勇気はなかったので、Kさんにお願いをした。それから数日後、Instagramに1通のメッセージが届いた。Mからだ。正直、驚いた。「Kから聞いたよ!直接言ってくれれば良いのに!」と。この時、連絡がきたことが心底嬉しかったのを今でも覚えている。そこから何通か連絡し、LINEも交換することに。この事実をSとKさんに話た。3人の飲み会を開くことになった。

3人で飲みに行き、「ぶっちゃけ今どう思っているの」と二人に聞かれた。「正直なところ、結構気になっている」と答えた。そしたら話は早いと思われたのか、スマホを二人に取り上げられ、僕の代わりにMとLINEを始めた。二人なら変なこと言わないと思うし、僕もだいぶ飲んでいたので、代わりに連絡していることに何とも思わなかったけど、なんか電話かけたりしてて、取り返した。

翌日、起きるとMからLINEが届いていた。そういえばどんな連絡してたのかと振り返ると、結構踏み込んだ話しててちょっと焦った。そして、「昨日大丈夫だった?」とLINEも来てた。心配してくれるMからのLINEに、どこからからか温もりを感じた。

その時、僕は「あっ、俺まだMのこと好きなんだ」と思った。

だけど、Mには彼氏がいる。普通に考えたら今更無理な話だ。そんな時にふと思い出したのが、プロポーズ大作戦だ。山Pが想いを寄せる長澤まさみは、藤木直人と結婚するところまで行った。だけど、取り戻した。まぁドラマだからそうなるよねと思うのはとても自然なこと。だけど、それを現実にしたらめちゃカッコ良くね?と当時の僕は思った。

そんなこんなで、僕とSとKさんの3人で、『Mを取り戻そう、プロポーズ大作戦』が結成された。

たくや、動く。


■いつぶりの再会だろうか。

MとのLINEは続いていた。本当にたわいもない話をしていた。僕の誕生日の日には「おめでとう!」の連絡もくれた。普通に嬉しかった。そういえば、別れてから連絡なんか全くとっていなかったから、Mのこと何も知らないなと思っていたところもあり、お互いの近況報告もしていた。「たくは今でもサッカーやってるの?」と言われ、「やっていないよ」みたいな、何も意味を持たない連絡だったにも関わらず、Mからやってくる連絡が心待ちだった。

そんな連絡をとっている中、当然今カレ(当時)の話も出てきた。上記でも述べた通り、僕は新しい彼氏がいることを知っていたし、写真も見たことある。ドッペルゲンガー並みに僕に似ていて衝撃を受けたのは忘れる訳がない。しかも、話を聞くと趣味も似ている。この子のタイプはホント男ではなく漢なんだなっと思った。

当時付き合っていた彼氏(以下:T氏)は、高校の同級生なんだとか。Kさんにも聞いたが、めちゃくちゃ良い子らしい。勉強できて優しくて運動もできるみんなから好かれるタイプらしい。そんな人間この世にいるのかと疑った。そして、「近々同棲も考えている」と言われた。Mは専門卒、T氏も高卒で消防士だった気がした。大学生で怠惰な生活をしている自分とは、時間の進み具合が違うのではないかと思うぐらい、先を行っている気がした。当時20歳のたくや。

このままではやばい、奪回大作戦は絶対に失敗すると思った僕は、何とかする方法はないかと考えに考えた。けど、「分からねぇ」と諦めかけた。そんな時、ふと頭に浮かんだワードがあった。それは「成人式」だ。人生の中で唯一何をしても怒られない20歳最大のイベント日だ。この日なら、T氏もいないし、Mとは地元一緒だから会えるやん。そう思った僕は、成人式に全振りすることを決めた。

成人式で何をするのか、どうすれば良いのか、SとKさんと色々話た。「二次会が終わったら呼び出そう」「二人で会えばどうにでもなる!」的な話をした気がした。ともかく、成人式に向けて、色々対策を練っていた。

そして、成人式当日。

慣れないスーツに結べないネクタイをし、髪型だけいっちょまいにカッコつけ、成人式会場へ向かった。友人と久々の再会にテンションが上がり、しゃべったり写真撮ったりとお祭り状態。そんな中、あたりを見渡すと、Mもいた。

いつぶりの再会だろうか。

たくや、プロポーズ大作戦、始まる。


■うーん、気まずい。

成人式会場に着いた僕は、まずは男友達たちとグダリまくった。タバコ吸いながらとにかくしゃべりまくり、写真を撮り、ジョナサンに行った。そして二次会会場へ向かった。同じ中学校の同級生が集まり、食べては飲む会だった。

ここでは男友達以外にもいろんな子と話をした。普段話さない男の子も、同じクラスだった女の子も、憧れのマドンナ的な子も、お世話になった先生方も。手当たり次第、いろんな人と話をした。

だけど、Mだけは直接話をしなかった。

近くにいるのは分かっていたし、話したい気持ちは山々だけど、なぜか周りの目線が気になってしまった。よくよく考えたら、自分で言うのもあれだが、結構学校では有名なカップルだった。仲良しラブラブ模範カップルが別れた話は、同級生のほとんどが知っていたのだ。だから、目線が怖く、話しかけることはできなかった。

二次会は一度も話をすることもなく、三次会に行った。三次会はクラスごとに飲みに行くことになり、Mとはクラスが違ったから、会うことができなくなってしまった。なお、ここまでの過程は全てSとKさんに報告している。「何やっているんだよ」とSとKさんに突っ込まれる僕。「やばい、このままでは全てが終わってしまう」と焦っていた。

三次会が終わり、夜中になっていたのでそろそろ帰るか的な雰囲気になっていた。そんなところに、他クラスの人たちがいた。そのクラスにはMもいた。なぜか合流し、道端で話をしていた。すぐ近くにMがいるのに話しかけることができない。

うーん、気まずい。

そんな思いがどんどん増していく。他の子も、逆に近づけないよう気を遣ってくれている感を感じた。

そんなこんなで、それぞれ別々の方向へ向かうことになった。

たくや、ピンチ続く。。。


■えっ、そんなことある?

僕たちのクラスも解散し、自宅へ帰ることになった。長いようで短い成人式は終わった。夜中の2時ごろだったと思う。家の近くまで帰ってきた僕は、「本当にこのままで良いのか?」と自問自答し、Mの家の近くまで行った。

Mの家の近くには橋がある。その橋の上で待っていた。いわゆる出待ち的なやつだ。だけど、1月の夜中ということもあり、めちゃくちゃ寒い。それに、朝から活動していたし、酒も入っているから正直眠い。だけど、ここで待っていれば来ると信じて待っていた。

だけど、なかなか来ない。よくよく考えてみたら、Mのクラスが解散したのかも分からない。カラオケとか行ってる可能性だってあった。それが事実だったら、ここで待っているのはただの自殺行為だと思えてきた。待っても待ってもこない、30分ぐらいは待ったかな。

もうこれ以上待っても来ないなと思い、「最後に一本タバコ吸って来なかったら帰ろう」と思い、真冬の夜中2時半にハイライトを一人橋の上で吸っているという何ともシュールな絵を作ってしまった。こんなにもタバコの火が消えてほしくないと思ったことはなかっただろう。だけど、タバコは根っこまで吸ってしまい、それでも来なかった。「帰るか、そうそう思い通りにいかないよな」と思い、帰ろうとしたその時、1件のLINEが来た。Mからだ。心臓が止まりかけた。しかもその内容は「今から会う?」だった。

えっ、そんなことある?

僕は心の底から思った。橋にいるよと連絡し、5分後、Mが現れた。

たくや、1対1で会うところまで遂にきた。


■おもいを伝える時がきた

橋の上で待つこと30分以上、遂にMが現れた。何年ぶりにあっただろうか。M、こんな声だったっけと思った。信じられないぐらい心臓がバクバクしていた。

「なんでこんなところにいるの(笑)」と話しかけてきた。「なんとなく」と少し強がる僕でしたが、理由は一つしかなかった。話をするのは何年ぶりだろうか。対面で会うのは何年ぶりだろうか。お互い久々に会い、少し話をした。成人式や二次会の話、本当にたわいもない話だった気がしたが、正直ほとんど覚えていない。

10分ぐらい話し、家に帰ることになった。実はMの家は橋から1分ぐらいで着いてしまう場所だったのだ。想いを伝えないといけないのに、中々一歩を踏み出すことができなかった。そのまま家の前まで送った。そして、Mは帰って行った。何も伝えることができないまま、人生で一度しかない成人式が終わった。奇しくも、成人式最後に会った人が、Mだったとは思いも寄らない出来事だった。

成人式の次の日、SとKさんに成人式の報告をした。会うところまで行ったのに何もできなかった僕は、自分の情けなさに唖然としていた。そんな僕を見てか、「まだいける、これからだ」と二人は僕の背中を押してくれた。そして僕は、直接二人で会おうと誘うことを決心した。MにLINEした。「話したいことがあるから、会えないかな」と。「話したいことって何?」と聞かれたが、「直接会って話したい」と話し、Mも承諾してくれた。成人式から1週間が経った日だった。

そして、Mと会う当日。実は僕はバイトが入っていたが、店長に事情を話したら「かましてこい、こっちは任せろ」とのこと。普段バカにしていた店長が、カッコよく見えたのは今振り返ってもこの時だけだった。

そして、おもいを伝える時がきた。

橋の近くにN-boxで迎えに行った。時間になり、Mが来た。「車に乗って」と言った。Mは少し拒んだが乗ってくれた。それから、20分ぐらいドライブをした。成人式の話などで誤魔化し、本当の想いを伝えることができないまま、時間が過ぎた。

するとMから「あのさ、話しって何?」と言われた。心臓が弾けそうなぐらいバクバクしていたが、もうこのタイミングしかないと思い、「寄りを戻したいと思っている」と話した。それから僕は、思い出の場所に向かった。昔よく二人で一緒にきた神社近くの公園。夜になると誰もいなくなる静かな公園。そこに行き、お互いに対面で座りあった。そして、勇気を振り絞り「さっきも言ったけど、寄りを戻したいと思っている」と話した。Mの答えは「ごめんなさい」だった。その後も何度か粘ったのは覚えているが、正直何を話したのかほとんど覚えていない。彼女のT氏を想う気持ちの強さに、僕は勝てなかったのだ。

その後、僕はMを自宅まで送った。家に着き、Mから「もう会うこともないかもだけど、ありがとうね」と言われた。泣きそうになった。そして、彼女は自宅へ帰って行った。

SとKさんに報告したら、「よくここまで頑張ったな」と言われた。思い返せば、半年間、この為だけに時間を費やしていた気がしたなと思った。


僕たちが描いたプロポーズ大作戦は、失敗に終わった。


■最後に

この話は、今から5年ぐらい前の話です。こんなくだらない話を最後まで読んで頂き、ありがとうございます。当時の僕は、必死だったのを覚えています。でも、何もせず、怠惰な日々を送るのではなく、ただ真っ直ぐに彼女をことを取り戻すことだけを考えていた日々に、何の後悔もありません。SとKさんを始め、様々な人に助けてももらったこの経験は、僕の財産です。結果は惨敗でしたが、とても貴重な経験をさせて貰えたと思っています。

この一件があり、僕は就活を頑張ろうと思いました。社会人になり、大活躍している姿を見せれたら、いつか振り返ってくれるのではないか、そう思ったからです。社会人となった僕は、嬉しいことより辛いことの方が多かったけど、おかげで少し人間として成長することができたと思っています。だからこそ、僕は今でも彼女に感謝をしています。

僕はこの一件以降、彼女と連絡を取ることもなく、会うこともありませんでした。それぞれが、それぞれの人生を歩んでいるのだと、僕は思っています。

後悔のないよう、彼女には幸せな人生を歩んで欲しいと思っています。僕も、新しい出会いや生きがいを見つけ、後悔のない素敵な人生を歩めるよう、前に進んでいきたいと思っています。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

たくや

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