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スタートアップ・ベンチャーにおける「選択と集中」と「事業の多角化」

こんにちは!株式会社COMPASS 取締役の常盤です。COMPASSは「新しい学びの環境を創り出す」をミッションに掲げ、小中学生に対してAI型教材Qubena (キュビナ)を提供している会社です。

今日はタイトルの通り「選択と集中」と「事業の多角化」について書きたいと思います。「選択と集中」は、スタートアップやベンチャーなどのリソースが非常に限定的な環境で働いてきた私にとって、とても大事にしてきた価値観の一つです。それが最近になって必ずしも最適解ではないと考えるようになってきたため、その辺りの思考の変化をnoteに残しておこうと思います。


「選択と集中」とは一体何なのか?

一言で表すと中核となる事業に経営資源を集中させて事業価値を高める経営戦略となります。元々はドラッカーによって提唱されたもので、ゼネラル・エレクトリック社のジャック・ウェルチが、市場で1位もしくは2位になれる見込みのある部門以外を全て撤退し、その結果として同社を飛躍的に成長させたことで世界中に広まっていったとのことです。

では、創業間もないスタートアップやベンチャーで「選択と集中」はどのような文脈で登場するのでしょうか。私見では、弱者の取るべき戦略、ランチェスター戦略と同じような意味合いで使われることが多いように思います。

大企業と競合して勝つには局地戦

一般論として、大企業は自身の中核事業にリソースの多くを投下しており、新市場が勃興したとしても、優先度はどうしても低くなってしまいます。一方、新興企業はその新市場に全リソースを集中させることが可能であるため、全体のリソースを比較すると5倍の差があったとしても、新市場の局地戦に限っては戦力で勝ることができます。こうした戦略論から「◯◯の事業に選択と集中をしよう」のようにスタートアップやベンチャーで使われることが多いのではと私は考えています。


スタートアップ・ベンチャーにおける「選択と集中」を実践することの難しさ

ここまで読むと、スタートアップやベンチャーが「選択と集中」を行うことは成功の必須条件であるように感じますが、話はそんなにシンプルではありません。なぜなら全リソースを投下する事業が必ずしも成功するとは限らないからです。

プロダクトA → B → C と方向転換をしていく

「スタートアップは滑走路が残っている間に飛び立たなければいけない」と言われる通り、滑走路(=資金)のある間に勝ち筋のある事業を見極めて一定数の顧客を獲得する必要があります。その為、プロダクトAを試してみてダメであればプロダクトB、それでもダメであればプロダクトCと、方向転換を繰り返すことで、勝ち筋のある事業を探していきます。

確実な答えはやってみないとわかりません。選択と集中をしてもなかなか芽が出ない…、もう少し継続すれば成功するかもしれない…、いっそのこと複数の事業へ同時に取り組んだ方が勝ち筋のある事業を見つけやすいかもしれない…、と様々な仮説が生まれ、リソースをどのように投下するか経営者の手腕が問われます。これがスタートアップの醍醐味であるし、その意思決定によって生まれる社内の混沌さがスタートアップの面白味だと思います。

そして、私はそうした様々な難しさがあったとしても「選択と集中」をするべきだと考えるタイプです。ただでさえ枯渇しやすいスタートアップのリソースを分散させることは悪手であると考え、とにかく局地戦においては他社の戦力を勝る状態で勝負し、それでもダメなら次の局地戦へ切り替える。こうした戦略を重視してきました。また、それによって一定の成果を得られてきたとも感じています。

しかし、最近になってスタートアップやベンチャーであっても「選択と集中」の一辺倒が最適解ではないと考えるようになりました(これは私の経験不足がようやく補われてきたということでもありますが…)。


「事業の多角化」を考え始めるタイミング

前述した「滑走路(=資金)のある間に勝ち筋のある事業を見極めて一定数の顧客を獲得する」というのは下記図の導入期にあたります。そこから勝ち筋のある事業に「選択と集中」をすることによって、成長期に突入し、事業と組織は急速に拡大していきます。

プロダクト・ライフサイクル

この成長期、そして成熟期がいつまで続くかは市場によって異なるので一概には言えるものではありません。ただ、必ず言えるのは、いずれは飽和期に移り、衰退期を迎えるということです。

2022年2月にFacebookのユーザー数が初めて減少に転じたと報じられました。これは17年もの間ずっと成長を続けてきたFacebookにとって初めてのことだそうです。あれだけユーザーにかつては支持されていたサービスであっても、最近ではログインするユーザーは40代以上ばかりと言われ、すっかり衰退期に入っています。

スタートアップ・ベンチャーが提供するサービスも残念ながら最終的には同じ結末を辿ります。ここで大事なことは完全に衰退しきってしまう前に、新たな事業を立ち上げ、次なる成長戦略へ転換をしていくことです。これは全く別の市場へ参入することもあれば、隣接事業を行うことで参入障壁と競争優位性を高めてマーケットシェアを守り切る戦略も考えられます。いずれにせよ、単一事業にずっと「選択と集中」では長期的な発展が見込めなくなるということです。

新たな成長戦略へ方向転換


既存事業と新規事業をどのように両立させるか?

新規事業をゼロから立ち上げることは非常に難易度が高いことです。しばらくは既存事業の利益を新規事業の投資に回していく構造になることが予想されます。その結果、上手くいかずに撤退する事業の方が多くなるでしょう。

既存事業は過去〜現在の会社の中核事業です。その利益が新規事業に投資されていくこと(そして結果として失敗が続くこと)、人員が既存事業から新規事業へ再配置されていくこと、などを面白くないと感じる人もいるかもしれません。また、それまで散々と「選択と集中」をしてきたので、方針の転換に混乱をする人もいるかもしれません。

こうした既存事業と新規事業を両立させるための組織の舵取りもまた経営者の手腕が問われるところだと思います。その方法論については以下の本が詳しいので、興味のある人はぜひ一読いただければと思いますが、

ピープル&カルチャーユニット管掌する取締役として一つ意識していることをここで紹介させてください。それは会社組織をプロダクトではなく、Misson・Vision・Valueを中心とした企業文化によって結束された集団にすることです。

COMPASSのMissionは「新しい学びの環境を創り出す」です。このMissionを実現する為に、知識・技能を効率的に習得することが重要と考え、その手段としてQubenaというプロダクトを提供しています。

COMPASSのMission

今日現在、大変ありがたいことにQubenaは市場で一定の評価を得ることができているのですが(もちろんまだまだ改善の余地があるのは承知しています)、子供達を取り巻く外部環境は時代の移り変わりとともに変化します。いずれはQubenaが不要になる時代もやってくるかもしれません。

もし私たちがプロダクトを中心に結束された集団であれば、その外部環境の変化についていけず、時の流れとともに衰退してしまうことでしょう。しかし、「新しい学びの環境を創り出す」というMissionを持った組織だとそうはならないはずです。常に最適な学びの環境が何かを考え、それに適切な手段を提供する事業を行っていくのが自然な活動だからです。

正直に言うと、弊社の多くのメンバーはQubenaに強い愛着を持っているため、この辺りのバランスは難しいところではあるのですが、Misson・Vision・Valueを中心とした企業文化を形成していくことは、事業の多角化をするために既存事業と新規事業を両立させるための必要条件の一つであると考えています。

現在の私たちは成長期のフェーズに位置していると考えていますが、最終的に衰退期まで迎えないよう、先手先手で新たな成長戦略を描くために様々な準備を始めています。


終わりに

以上、「スタートアップ・ベンチャーにおける『選択と集中』と『事業の多角化』」でした。これまでのnoteはCOMPASSの取り組みを紹介するものが中心でしたが、今回は趣向を変えて、自分が現在進行系で考えていることを紹介させてもらいました。

最近は会社が新たなフェーズに突入してきている感じがあり、以前とは違ったワクワクがあります。もしCOMPASSで働くことにご興味があれば採用サイトをご確認頂けると嬉しいです!!

COMPASSのことをもっと知りたいという人は公式noteをぜひご覧ください!


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