きょうの難経 五十五難 2021/12/23

腹部の「積」と「聚」についての難です。

五十五難曰
病有積 有聚 何以別之
(病に積あり、聚あり、何を以てこれを別つや)


積者 陰氣也
(積は陰気なり)
聚者 陽氣也
(聚は陽気なり)
故陰沈而伏 陽浮而動
(故に陰は沈みて伏し、陽は浮かびて動く)
氣之所積名曰積
(気の積む所、名づけて積といい)
氣之所聚名曰聚
(気の聚る所、名づけて聚という)
故積者 五藏所生
(故に積は五臓の生むところ)
聚者 六府所成也
(聚は六府の成す所なり)
積者 陰氣也 其始發有常處
(積は陰気なり その始めて発するに常の処あり)
其痛不離其部 上下有所終始
(其の痛み其の部を離れず、上下に終始する所あり)
左右有所窮處
(左右に窮まる処あり)
聚者 陽氣也
(聚は陽気なり)
其始發無根本 上下無所留止
(その始めて発するに根本なし 上下留止する所なし)
其痛無常處 謂之聚
(その痛みに常の処なし これを聚という)
故以是別知積聚也
(故にこれを以て積・聚を別ち知るなり)

関東鍼灸ではおなじみの「積(しゃく)・聚(じゅ)」ですが、漢方では「せきじゅ」と読むことが多いようです。
「積」の字は、とげの出た枝を描いた象形文字で、「刺」の原字。末端がぎざぎざした作物をぞんざいに重ねる意味があるそうです。
「聚」の字は、上半分の「取」が敵の耳をとって集め持つさまで、下半分と合わせて多くの人がひと所にあつまることを示しているそうです。

積聚は「痞・塊・癥・瘕」と呼ばれることもあるようですが、ここでは、以下のように陰陽で分類されています。

陽 ー 聚 ー 浮動 ー 六府 ー 常の処なし
陰 ー 積 ー 沈伏 ー 五蔵 ー 常の処あり

この五十五難の定義を踏まえて、次の五十六難で、五臓に対応する腹部の「積」について述べられます。

ちなみに、『金匱要略』にも積聚について述べた「五臟風寒積聚病脈證并治」がありますので、一部引用してみます。

問曰
病者積 有聚 有䅽氣 何謂也
師曰
積者藏病也 終不移
聚者府病也 發作有時 展轉痛移 為可治
䅽氣者 脅下痛 按之則愈 復發為䅽氣
諸積大法 脈來細而附骨者 乃積也
寸口積在胸中 微出寸口 積在喉中
關上積在臍傍 上關上 積在心下 微下關 積在少腹
尺中 積在氣衝 脈出左 積在左 脈出右 積在右 脈兩出 積在中央 各以其部處之

『金匱要略』での積聚は、『難経』の記述とはまた異なった観点で、特に脈との関連を強調しているところが興味深いです。
漢方と鍼灸で見解が分かれやすいポイントのひとつかもしれません。

次回はこの続きで五十六難に入ります。
最後までお読み頂きありがとうございました。


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