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スタートアップ、ベンチャーに”専任人事”は必要か?

こんにちは、フリーで人事採用のアドバイザリーを行なっている牧野と申します。

このnoteは「ひとりAdvent Calendar(人事採用編)」と題して行う連載でその一記事目となります。この企画をはじめるに至った背景は以下のnoteを参照ください。

一記事目として書きたいテーマは「スタートアップ、ベンチャーに”人事”は必要か?」です。

なぜこのテーマを取り扱うか

今年の2月まで会社員だった僕は退職してフリーランスとなってからいろんなスタートアップやベンチャーの経営者の方とお話し、チャットのやり取りをすることが増えました。

その中で一番多い問いが「人事の専任は必要か?必要であるならばいつから立てるべきか?」でした。

自分の回答は各社の状況を聞きながら変えていたのでこのnoteでは自分の回答をまとめておこうと思い、取り上げることとします。

そもそもスタートアップ、ベンチャーに”人事”は必要か?

この問いの背景は以下のようなことから湧き出てくるものと予想しています。

  • 売上、利益が必要なのに売上を産むことがない間接人材を増やしていいのか?

  • 社内に人事経験者がいない

  • 人事は自分でもできそう

結論から言うと「人事機能は必要、人事のことを考えて動く人も必要、ただし専任を置くかどうかは会社の状況によって変わる」です。

まず「人事機能は必要」についてですが、ここについては不問でいいかなと思いますが改めて人事という機能は会社にとってどんな機能かをまとめる意味でも記載します。

人事はエンジニアリングや営業、マーケティング、財務などの主要な機能と並ぶ機能です。企業は株主の利益のために存在しており、株主の利益を向上させるためには事業計画を達成し続ける必要があります。そしてこの事業計画を達成し続けるために必要な機能がこれら主要な機能なわけです。(すごい当たり前のことを言っている)

営業やマーケティングが直接的な売上に貢献することはわかりやすいですが、人事は各主要な機能の効果を最大化もしくは毀損しないようにすることが役目になります。

そのためEXITないしは爆発的な成長を目指すスタートアップ、継続的に成長を目指すベンチャーにおいては事業計画の達成のため人事という機能は必要不可欠なものになります。

反面人事という機能を持たないときを考えると人事という機能がなくても事業計画を達成することはできるが、達成し続けることが難しいもしくは非効率と考えるとわかりやすいでしょうか。

事業計画を一年達成しても社員が大量に離職したり、スキルアップを図れないためにストレッチした計画を達成できなかったりと人事機能がないことで事業計画を達成し続けることが難しくなることは想像に易いですよね。

では専任の人事担当は必要なのか?

次に「人事のことを考えて動く人も必要」についてです。

人事という機能が事業計画を達成し続けるためには必要と書きましたので、人事という機能を動かすためには人的リソースは必ず必要になります。

  • 事業計画を達成するためにどんな組織、どんな人を採用すべきか

  • どのように採用するか

  • どのように育成するか

  • どのように評価するか

  • どのように新陳代謝を促すか

こういった人事の基本的機能を実行に移すために人的リソースが必要になります。

では専任が必要なのでしょうか。それが最後にまとめる「ただし専任を置くかどうかは会社の状況によって変わる」の部分になります。

専任を置くかどうかの判断軸は以下になると思います。

①メインのプロダクト、サービスがPMF(Product Market Fit)している
②EXITへのロードマップないしは向こう3-5年の事業計画を立てられている
③年間の新規採用目標数が24名を超えている
④社員のスキルアップが前提の事業計画になっている

まず①について。これが全てだと思います。そもそもPMFから程遠い状態で②ができないので③④も判断できず人事機能としてどんな戦略を持つべきかも判断できません。PMFするまでは代表を人事機能の中心とし、リファラル採用や簡易的な役割等級制度による評価を行うことが基本となります。

とても大事なこととして人事の機能の多くは非可逆的なものが多いです。簡単に言えば「一度決めたら後から変更することが難しい」のです。

例えば採用がわかり易いです。日本においては解雇規制があるために組織のリストラクチャリングは容易ではありません。評価についてもそうです。PMF前に決めた評価制度はピポットした後にも有効かはわかりません。そしてミッションビジョンバリューについても同じです。特にスタートアップやベンチャーには目の前の給与ではなくミッションビジョンに共感して入社するケースも多くあると思いますが、ピポットした後も同じミッションを企業が持ち続けるかは不明です。

そのためまずはPMF→人事戦略の策定→専任人事をアサインするかどうかの決定という流れになります。

もちろんPMF前から人事戦略を策定するケースも多いと思いますが、直近の僕の考えは上記のようなものです。反対にPMF→人事戦略の策定の部分で専任が欲しいという場合もあると思いますがこれは社内で賄うのがいいと思っています。(まだ専任は置かない)

人事というポジションは一般的なメンバークラスからは「特別なポジション」というイメージがあると思います。その特別なポジションにはメンバーから信用がある人、もしくは経営者がメンバーに自信を持っておすすめできる人を置く必要があります。

そのためPMF→人事戦略の策定の部分(もっといえば人事戦略についてもスモールスタートで色々検証した方がいいので人事戦略の策定→検証のフェーズかも)では社内でPMFを検証するに貢献してきたエース人材を中心に行うのが良いかと思います。(もちろん経営者はコミットする必要がある)

ただその人材も兼業で行う場合リソースが足りないのである程度の形になるまでは外部のリソースを使うのもありです。

そして「③年間の新規採用目標数が24名を超えている」についてですが、これは体感になってしまうのですが月3名以上の採用目標数を持っている場合兼業人事だけだとリソース的に実現が難しいと考えます。専任がいても採用の他に人事の他領域を持っている場合はぎりぎりの数字かなと。

また「④社員のスキルアップが前提の事業計画になっている」は特にSaaSなど従業員を多く雇用し、社内の標準化されたマニュアルやツールを使いながら育成し、●●ヶ月で一人前になることを想定した企業が当てはまります。(反対にECやメディア、テック系サービスなどのように雇用する人数が少ない場合は少数精鋭の組織になりやすいのでスキルアップが前提ではなく広告費やテクノロジーの変化によって売上が左右される)

④については専任人事というよりはHRBPのような事業部付人事を擁立し、現場に近いメンバー(元現場メンバーが最適)を立てることが多いと思います。

というわけで1記事目のnoteを書いてみました。基本的には1時間の一筆書きで書いていこうと思っていたのですが、早速1.5時間程度使ってしまいました。

毎日は難しいと思うのですが、年末までにあと9記事頑張ってみようと思うので続きを読みたい方はぜひnoteもしくはXのフォローをよろしくお願いいたします。



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