APACNを支配するFNC戦術とRID、MMの選択 Apex机上の卓論#4
エリアを確保し、"何もせずに"勝つFNC
プロリーグ開幕が迫り、各チームも挑むであろう形をそろそろ見せねばならぬ頃。挑むであろう形というのはつまりにして、現在ヒューズにより支配されている新たなるメタゲームへどう向き合うか。ミラー構成により力勝負を挑むのか、それのアンチピックたる構成を見出すのか。対抗手段を考えるには、まずFNCの基本戦術を書きなぐる必要がある。
スクリムで圧倒的な成績を残しているRCW、FNC。特にFNCがよく見せている終盤の基本戦術を確認する。スクリムのワンシーンだ。
FNCのスクリム配信をご覧になっているファンの方々であれば、何度も目にしたであろうこの光景。
satuki「なあんもしてねえ!タコボコ!」
YukaF「俺なんもしてないんだけれど~笑」
Lykq「何もせずに勝ったわ!」
聞いて彼らが何もしていないと素直に受け取ってしまうのは危険だ。マジで危険だ。彼らはしっかりと各々のスキルを万全に使い組み立てることによって”何もしていない”のではなく、”敵に何もさせない”ことで勝利をつかみ取っている。これはヒューズ採用時にDZが見せる戦術でもあり、彼らはNAにおいても同じように勝利をつかみ取るだけの力を持っていることの証明。SP1にて見せた成績が決してフロックではなく、間違いなくSP2にて優勝候補となる所以でもある。むしろDZはこの状況下において制圧しきれず敵に何かをされて全滅するシーンもあるので、リージョンの違いはあれどFNCは更に優れているのかもしれない。Zer0が結構ウロチョロする。
そういえばFalcons Esportsになったんだった……FAEか?FAL?HalがTSMから移籍した際に零していた「TSMにはSweetを引き抜く金がない」という言葉にあったように、やはりスペシャル3を揃えるのにはそれなりな金が必要らしい。Redbullのうわさもあったが、サッカーと同じくオイルマネーの波は強烈だ。
話はそれたが、この流れと狙いを図解する。
あくまで簡易な盤上の理想論。机上の空論ならぬ机上の卓論たる我がNoteにふさわしい図解だ。しかし見事にこなしているのがFNC。ヒューズの有利を更に有利へ押し上げることができるという特性と、エリアを確保していくというFNCの特異戦術が見事にかみ合っている。何もしないで勝つという終盤の完成だ。当然これをそのままコピーすることで真っすぐぶつかり合い、IGLやスキルの部分で上回ることを目指してもいいだろう。そのような試みへ挑戦するチームも存在している。その挑戦は当然応援したいが、どうしても机上おじさんからすると構成で上回る方向へ気が向いてしまう。Apexはレジェンドを用いるヒーローシューターだ。メタゲームというLoL(MoBA)やMtG(TCG)で用いられている用語が使われている以上、その部分で対抗することも立派な正解である。IGLという部分はお勉強範囲外で実際のプレイ経験と異なる研究が必要だろうし、スキルなんてものは所詮長くやっていただけのおじさんにはないというのもある。
天敵たるワットソン、全ては王者の思うがままに
ヒューズ第一人者であるShomaru7大先生をして「天敵」と言わしめるワットソンは確実にその対抗策だろう。自チームが拮抗か、やや劣っている状況でありパイロンが有効な位置で生き続けているなら圧倒的なアドバンテージとなる。仮にパイロンを壊されたとしてもやや劣っている程度で持ちこたえられる。自チームのエリアを保ち続けることができれば、終盤の展開は異なるものとなりヒューズチームに動きを強いることができる。当然自らが動いてもいいだろう。逆にいえば特に有利ではないポジションへなんとか陣取る状況ではこのような試みはうまくいかないことが多い。パイロンがありやっとやや劣勢のチームが、パイロンを破壊され一気に瓦解していくシーンは多くみられてきた風物詩だ。つまりそもそもとして敵チームより優位なポジションをあらかじめ確保できるスキルが前提である。RIDは最近のスクリムでsakuがワットソンにてアンカーを務める形へ変更している。おじさん的に至極納得な構成だ。日本有数のIGLである彼ならその前提を満たすことができる。HAOもこの構成を続けており、好成績を残している。
もうお分かりだろう。王者REJECT WINNITYはSP1この構成で優勝を掴んだ。ヒューズ中心のメタゲームに備える経験値があらかじめ備わっており、ヒューズ構成で同じく圧倒する彼らを真似しようとされても困らないという恐ろしい状況だ。全てRCWの手のひらで踊らされているようなメタゲームに感じてしまう。フラットな3on3においてただのバニラでしかないワットソンを使用するにあたって生じる問題もファイトスタイルとそれを生かす配置、そして圧倒的なスキルによって解決済なのはSP1で見た通りである。エリアだけではなく、メタゲームもコントロールしている。
MMが見せた選択と可能性、カムバックホライゾン
ヒューズが高所や有利ポジションを前提としたレジェンドであるというのは、何度も繰り返した通りだ。相手を狭いポジションに押し込めなければナックルクラスターは有効に使えず、ウルトのスキャンも(少々反則気味ではあるが)同様である。シアのようなかつてのスキャンキャラクター程の必須レジェンドとはいえない。
つまりは有利を崩してしまえば、ヒューズは脆いのだ。その有利をどう崩すか、MMがスクリムで見せた構成がホライゾン採用という可能性だ。
長く勝ち切れず苦しんでいたようにみえたMMは、ホライゾン採用によって一気にチャンピオンを勝ち取った。最終円でのファイトは相手に高所を取られている不利状況から始まっておりカタリストでは難しいファイトとなっただろう。
ソロアンカーであるヒューズの抑える有利ポジションへ突撃することができるホライゾンは、今のメタゲームを前提からひっくり返す可能性を持っている。正直これをテーマに……ヒューズを倒すためのホライゾン採用といったテーマで書こうと思っていたのが今回の記事なのだがMMの選手たちによって先んじられてしまった。これは胸が躍る展開だ。やはり競技シーンはこうでないと!
SP1の旧KNが貫き、アグレッシブなファイトで勝ち上がった構成だ。ホライゾンは終わったと言われて久しいが長く可能性は持ち続けていた。TSMもSP1にて試していた。うまくいったと言えなかったのは、ソロアンカーが制圧能力と遅滞に優れるコースティックが主だったからだ。相手がヒューズやカタリストであるならば通用する。3人が前へ出て行うファイトならカーテンを上手く使えなければバニラなカタリストよりよっぽど優れている。自チームの確保エリアがないという問題も、勝ってしまえばそこが奪えるから問題ない。回遊魚のようにファイトを求めて泳ぎ回るならそれすらも必要ないだろう。
ホライゾン構成をこのまま続けるかというと、やはりリスクの部分でつり合いが取れず難しいかもしれない。Mia.Kもメルトステラも、シュアな判断を大事にするイメージがある。ハンマードリルの小さなささやきから始まったこの構成はオジサン的に現在のメタゲーム環境で正解へ最も近いアイディアだ。少なくなった期間のスクリムに注目したい。個人的にはGHSにて4rufaをフラッガーとするならばアンカーであるPinkyにぜひホライゾンを採用した形を待ち望んでいたりする。
2トップの足をすくう弱者の剣となれるか
このようなことを書きなぐっていると、FNCやRCWはあくまで対世界用の基本をこなしながら行っている印象だ。構成でブレることもなく、派手なファイトも少ない。堅実にポイントを積み重ねている。つまりのところ現在のメタゲームにおいて彼らが困っている部分がないという証左だろう。スクリムの成績のまま彼らは上位突破を果たすだろう。
一時はライフラインへと可能性を見出したチームもあったが、現在は減少傾向。君たちはAuroraじゃないがどこまで効いたのかはわからない。ライフラインを投入するためにはロール配置やチームスタイルを全体的に見直す必要があり、適合できるのはCRやE36といった一握りのチームだけだろうというのは想像がついた部分でもある。
ホライゾンへとフォーカスがあたり各チームが投入すればそれはメタゲームに混乱をもたらし、2トップの足元を崩せる可能性も生まれることだろう。特にソロアンカーでカタリスト(残念ながら多い)を採用しているチームはイージーに正解を掴んだと思えるかもしれない。順位ポイントや移動のためにカタリストを採用するのが正解だとはとても思えない。それではご機嫌次第で狩り取られる獲物のままだ。トランジョンに優れたホライゾンで積極的に立ち向かえば、のど元に届くスキルと情熱を持った選手が揃っているこのAPACN。このままRCWとFNCに思うがままやられるのは、あまりにも惜しい。