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"ANDの精神"のための時間軸

「新規事業開発を通じて実現したいのは事業成果か、組織成果か」

ある目的を実現するために、有効なアプローチ(実現手段)を選び、実行していく。という話に違和感を持たれる人は少ないと思いますが、「ある目的」が複数あり、二律背反になっていて話がまとまらない、活動を束ねられない。そんなお話をお伺いすることがあります。

『ビジョナリー・カンパニー』では、複数の目的の達成を同時に狙うことを"ANDの精神"、二律背反のままどちらか片方の達成を狙うことを"ORの精神"と表現しています。ビジョナリー・カンパニーは"ANDの精神"で経営しているというお話です。とは言え、概念としては理解できても、具体的にどのように進めればよいのか腹落ちさせるのは難しいですよね。今回の記事でこのあたりをまとめようと思います。

経営企画部門や新規事業プログラムの事務局として企画/実行をされている方にぜひご覧いただければと思います。

こんなことありませんか?

冒頭に記載した「新規事業開発を通じて実現したいのは事業成果か、組織成果か」。特に新規事業プログラム、社内ベンチャー制度を開始しようとしている事務局の方々が、経営層からよく問われるようです。

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その背景には「二兎を追う者は一兎をも得ず」という想いもあるのかもしれません。

それでは、ということで組織成果(風土醸成や人材育成)を狙うという初期設定をして数年経ったとき、今度は経営層から「そろそろ事業成果を出せないのか」という声が上がる…笑

これは複数の会社さんからお伺いする、よくあるケースです。

ポイントは「時間軸」

この矛盾を解決するために、両方を同時に狙うという向き合い方もありますが、やはり「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということになりかねません。

ここでポイントになるのは「時間軸」だと考えています。「まずはAを狙い、●●の成果を出して、Bの取り組みにつなげ、▲▲の成果を出す」というイメージです。

二律背反は時間軸を入れていないから生まれるのであって、前後/因果関係を考えると二律背反ではなくなることが多くあります。

企業によって状況/目標は変わると思いますが、「新規事業開発を通じて実現したいのは事業成果か、組織成果か」という問いに対しては、「事業成果を生み出すことで、"自分たちにもこんなことができるんだ…!"という勢いをつけ、その取り組みを拡げていくことで組織成果につながる」という考え方もありますし、「まずは多くの人に新規事業に触れてもらい、その活動から人を選抜して集中的に育成し、事業成果を生み出す」という考え方もあります。

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いすれにしても、前後/因果関係を織り込んで取り組みの順序を考えることが重要です。

継続性担保のための「測定と発信」

もうひとつ、先にご紹介した内容について補足しておきます。

それでは、ということで組織成果(風土醸成や人材育成)を狙うという初期設定をして数年経ったとき、今度は経営層から「そろそろ事業成果を出せないのか」という声が上がる…笑

事業成果を狙うのは、中期経営計画との整合を取ることの難しさや、新規事業に付随する不確実性の高さ故の成果コミットの難しさがあります。そのため、これから新規事業開発を始めようという会社さんは「組織成果」を狙うということになりやすいと思います。

そのうち「そろそろ事業成果を出せないのか」という声が上がるのはなぜかというと、組織成果が測定しにくく、数字になっていないため発信ができないという背景があると考えています。

"ANDの精神"を実現していくには、「いつまでに、どのようなスキルを持った人を何人育成する」直結はしないまでも「従業員満足度(の関連指標)をこの水準まで上げる」などのKPI設定と、経営層との事前合意が重要です。

まとめ

どのような成果を狙うにしても新規事業開発は時間のかかる取り組みです。不確実性も高く、センミツと呼ばれるように1,000のうち成功するのは3つほどと言われる世界です。

事業成果も組織成果もどちらも重要ですが、どちらか片方だけを追いかけることで片手落ちになり、「成果が不十分ではないか」という突っ込みが入り、取り組みが途中で止まってしまうことが一番もったいないと考えています。

新規事業開発を通じた成果を効果的に創出し、取り組みが正しく評価されるよう、時間軸も取り入れて"AND"を実現いただければと思います。


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