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月の舟(The boat of the moon)

会社で絵本をつくっていたら、見つけた言葉です。
月を船に見立てるってとても新鮮でダイナミックな印象を受けました。

この言葉は、万葉集の第7巻の「天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ」(柿本人麻呂)という歌に出てきます。
夜空に雲が波のようにたなびき、その中を舟のような三日月が漕いでいき、林立する星たちの中に消えてゆく。
万葉集は、貴族から庶民まで多くの歌を納めていますが、その中でもロマンティックな性格がひときわ目をひく、と言われています。

アイルランド出身の日本文学学者のピーター・マクミランさんが、次のように英訳しています。
Cloud waves rise in the sea of heaven.
The moon is a boat that rows till it hides in a forest of stars.

英語にすることでさらに情景が目に浮かんできやすくなるような気がします。「月の船」以外にも、「天の海」をsea of heavenとしているところも面白いですね。直訳すると「天国の海」や「天空の海」ですかね。sea of skyとしないところがネイティブの感覚が感じられます。
実はこの「月の船」は七夕物語とも関係しています。天の川の西にある織姫星と東には彦星(牽牛)が位置しているが、七月七日に月が天の川を西から東に横断するため、織姫が月の船に乗って牽牛に会いに行く、と想像されました。この七夕伝説は、中国では織姫はカササギの群れに乗って彦星に会いに行くとされているそうで、「月の船」という表現は、もしかしたら日本固有ものかもしれませんね。

今まで万葉集と言えば、
代表的な歌人の山上憶良が歌った「貧窮問答歌」は覚えていました。中学の国語の教科書にでてきましたね。
山上憶良は、柿本人麻呂のこの歌を見て、俺には歌えないと嘆いたとか(笑)。庶民の心を代弁する彼の「貧窮問答歌」とは随分イメージがちがいますね。
「憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむそ」
この歌も下記の本に英訳が出てそうですね。今度買ってみたいですね。


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