物静かなやつがサンシャイン池崎化するとチャンスが巡る
魔都・渋谷で「自分流のチャンスの拾い方ある?」という飲み会をしていた。バンドマンもいたり、経営者もいたり、化粧品紹介のインフルエンサーもいたりするキナくさい会合だった。
薫り立つキナくささはともかく、「自分流のチャンスの拾い方ある?」という話題は悪くない。
「チャンスの拾い方」
この聞き馴染みのない文言。しかし千載一遇を呼び込める方法論には大変な価値がある。同じ能力でもチャンスの有無で大きく結果は異なるからだ。
というのも多くのひとは「チャンス」とは偶然や運によるできごととして理解している。その訪れる頻度や発生確率をコントロールできるなんて、発想がそもそもない。
その会合では様々な方法が飛び交った。
「とにかく知らないひとと会う」
「半年に一度は外国へ」
「反対意見のアカウントをフォローする」
「頼まれごとにNoと言わない」
「貯金残高をなるべく少なくする」
変な人間どもが揃っているだけあると思った。そうはいっても彼らも実際、コレらの手法で結果を出してきた猛者たちだ。まぁ実際にそれぞれ効果を感じているのだろう。
しかしよく考えたら『運勢を操作する』って魔術妖術の類いではなく、そもそも誰しもに当てはまることではないだろうか。
ほら、これまでの人生で降って湧いたチャンスを思い返すと、家でひっくり返って寝ているだけでは発生しなかったに決まっているからだ。
「運を自分でコントロールできるなら、なるべくチャンスの多い暮らしを送りたい!」と思うのが普通だ。
いつだってランナーが溜まった状態で勝負したいし、ペナルティエリアの中でボールを受けたいし、配られたカードが役を作ってくれていたほうが嬉しい。
では具体的にどうすればチャンスが到来するのか。
僕が意識的にやっているのが【体調が良い時・悪い時で選択パターンを変える】というものだ。これだけでチャンスの発生確率がupする。
〔やりかた〕
・体調が悪いときは「いつもどおりの選択肢を選ぶ」
・体調が良いときは「なるべくいつもと異なる選択肢を選ぶ」
ただこれだけ。
ノーベル賞行動経済学者ダニエル・カーネマンの本に「デフォルト値から外れた選択は後悔が深くなる」と書かれているのだけれど、僕はこの情報を知ってから行動パターンを変えた。
カーネマンの説く『デフォルト値』というのは信念、価値観、「俺らしさ」やコンフォートゾーンみたいなものに置きかえられる。
つまり「いつもの感じ」から外れると、心にはキツイ重量の筋トレをしているかのごとく精神的負荷がかかるのだ。「いつも通りっぽさからハズれ値を選ぶと後悔するよね!」ということだ。
たとえば、「俺はマクドに入るといつもビッグマックを頼んでいる!」という男がいるとする。こいつがフィレオフィッシュや期間限定バーガーなどを頼むと、後悔が深くなりやすいということだ。
軽いものだと上記のように「いつも食べているものを変える」や「帰り道を変える」ぐらいだけど、重いものだと、人格変化やリスクの量などになる。
たとえば、ふだん物静かだけど、新しい職場ではサンシャイン池崎のようなキャラでふるまう。引っ込み思案だけど、今日はグイグイ手を上げて会議で発言する……違うジャンルで表現する、違う土地に住んでみる、性転換してみるなどが考えられる。
精神的負荷はキツイし、後悔も深くなりやすい。だから体調が悪いときはオススメしない。しかし負荷を受け止められる好調時にはなるべく、ハズレ値、ノイズを挟むほうがいいのだ。
なぜなら「ふだんどおり」の中には大したチャンスは転がっていないからだ。
物静かなふるまいをずーっとやっていても、物静かな男にふさわしいチャンスしか来ない。これはもうすでに幾度か訪れては、彼のもとを通り過ぎた質のものだ。
反対にサンシャイン池崎のようにふるまえば、「サンシャイン池崎にふさわしいチャンス」みたいなものが目の前にやってくる。
このチャンスは『物静かな男』の既存航路では巡り会えないお宝だ。このお宝と出会い、自分がこれまでやってきたことを合わせると何か起きたりする。
近い話がある。僕のお知り合いの漫画家にニコ・ニコルソン先生という方がいる。
知り合って10年経つが、ずっと新作を投下している。そして、それらはいつも新ジャンル。
認知症もの、漫画家もの、1995年オタクカルチャーものなど、引きもすごい。現在、連載中の作品は「短歌もの」なのだが、とにかく新しい切り口でバキバキ新作を書いている。
いろんなジャンルを触るということは、いろんなチャンスに触れていると同義だ。きっと監修や取材など情報のインプットを受け止めるだけのパワーがあるのだ。
僕もなるべくこの「キツイけどハズレ値を選ぶ」をずいぶんと意識してきた。
さっきポストを開けたら文喫のフェアに自著が選ばれるという知らせが届いていた。分岐つは夢だったのでうれしい。招待状が入っていたので、サンシャイン池崎のように挨拶するつもりだ。
こういった紆余曲折がごちゃごちゃに詰め込まれたチャンスを頂いてきたことで、音楽を作って本を書いて、映画にして、会社をやったり、今度は学校の先生をやる……みたいなことが起きてなんとかやってこれた。
自分が何屋なのか、いったい何なのか分からなくなってきたが、表現を仕事にする日々が、選択肢のコントロールで続くのならば、そんなもので、より良いものが残るならば、これに勝る幸せはない。
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